算数の勉強法

開成算数でみる偏差値の上げ方と合否の分岐点

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“ざわついた”18年の開成算数
・受験関係者が酷評「簡単にもほどがある」
・易しすぎる問題に込められたメッセージ
・合否を分けたケアレスミス
・算数小僧、一流と二流の差
・過去問対策より大切な「その時」の対処法

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★“ざわついた”18年の開成算数
 85点満点で合格者平均が73.9点、全体平均でも62点。

 これが2018年の開成の算数の入試結果です。100点満点に換算すると、86.9点に72.9点と高得点です。合格者平均、受験者平均とも2020年入試までの10年間で一番高い年です。

 さすが開成受験生、算数が得意な子が多いのね、と思った親御さんもいるかもしれませんが、この年の算数の問題については、塾関係者を中心に“かなりざわつき”ました。

開成中学・高校は現在新校舎建設中

受験関係者が酷評「簡単にもほどがある」
 「こんな問題ばかり出して、開成に入るために難しい問題を解くのに歯を食いしばってきた子どもたちの努力を踏みにじっている」(大手進学塾講師)「中堅校を受ける子でも解ける。算数が苦手な子もできたのでは」(進学塾教室長)「簡単にもほどがある。これでは差がつかない」(受験雑誌)など、酷評する関係者が相次ぎました。

 冒頭から「倍数算」「場合の数」「流水算」「平面図形の相似、面積比」など、塾のテキストの基本問題によくある典型題が7問。続く大問2「円弧と周期性」の問題、大問3「数の性質」も標準的。開成対策でみっちり鍛えられた受験生同士のガチンコ勝負が見られず、肩透かしを食らった、という思いが関係者の多くにあったのが酷評の原因でした。

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ガチ勝負にならなかった?

★易しすぎる問題に込められたメッセージとは
 算数が得意ないわゆる“算数小僧”と呼ばれる受験生は「算数で引き離す」というのが、開成入試で描く合格へのシナリオです。

 ところが、18年は問題が易しすぎたことは間違いありません。算数が比較的苦手(開成なのでかなり苦手、のレベルの子は稀)な受験生との差がつかず、算数で逃げ切りを図れなかった、というのが恨み節の背景にあるようです。

 確かに難しい問題が出題されれば、算数小僧は優位に立ちます。1問の配点が5点とか7点とか高い算数では、ライバルを引き離すチャンスになります。開成の先生は算数小僧にアドバンテージを与えないように作問したのでしょうか。

 私はこの年の算数の問題を作問した先生の意図が分かる気がします。それは「やたら難しい問題を解くのが算数ではなく、基本的な問題を早く正確に解くのが基本。そういう基本がしっかりできている子に開成で数学を学んでもらいたい」というメッセージが込められているのではないでしょうか。

難しい問題より基本を正確に

★合否を分けたケアレスミス
 易しすぎる、といっても、みんな満点というわけではなく(続出はしたかもしれませんが)、合格者と受験者の平均点は10点以上の差がついています。これは例年の差と比べても、大きく縮まったわ難しいけではありませんでした。

 問題が易しく、どの受験生も最後まで問題に取り組めたのならば、ここでものを言うのは「正確さ」です。つまり、ケアレスミスをした受験生と間違いなく計算した受験生との差がこの点数に表れましたし、合否を分けたと思います。

後でミスに気が付いても遅い

算数小僧、一流と二流の差
 算数が大好きで、処理能力が早く、難しい問題が解ける子は算数小僧かもしれませんが、これだけでは二流です。一流の算数小僧は、これに正確さが加わります。ケアレスミスをしないというのが、正真正銘の算数小僧なのです。開成を受けるレベルの子でもケアレスミスはしますし、それが“命取り”になるのです。

 ケアレスミス撲滅。これが合格への一番の近道であり、出題された問題を正確に、確実に正解と結びつけることが、偏差値をアップ、維持するための一番の正攻法なのです。

ここでは開成の入試問題を取り上げましたが、「ケアレスミスしない」という鉄則は、どの中学校を受験しても一番必要な受験技術です。スピードを最重要視し、演習の数だけはこなしてきたことを自負するような勉強の方向性が「いつまでたっても偏差値が…」とか自称「まさかの不合格」という結果につながるのです。

合否の分岐点はケアレスミスの差

過去問対策より合格に近づく「その時」の対処法
 よく逆転合格のキモは過去問を徹底的に分析し、やり込むこと、という“必勝法”を合格体験記だけでなく、中学受験専門家の方からの口からも耳にします。それも一理あります。ただ、入試本番に“変化球”を投げられたときに「直球(=過去問の傾向通りの問題)しか打てません」では困ります。

 「いつもと傾向が違う」。本番で問題冊子を開いた時に、動揺するか、それならそれで、と切り替えて目の前の問題に全力投球できるか。過去問で「的を絞る」のも受験の大切な戦略ですが、ケアレスミスをなくすだけで、偏差値も上がるし、合格だって手繰り寄せられるのです。

 次回は国語の漢字からみた偏差値の上げ方について触れます。(受験デザイナー 池ノ内潤

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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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