不合格体験記

【不合格に不思議なし】「詰め」を誤った全落ちの悲劇

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志望校別特訓、参加しますかそれとも…
・早稲田熱望

なぜ?6年生の9月に退塾
・まさかの0勝5敗
・志望校別特訓の肝「気づき」と「詰め」
・モチベーション維持に力発揮の「連帯感」
・早くから考えたい受験の「着地」方法

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志望校別特訓、参加しますかそれとも…
夏期講習が終わると、6年生にとってはいよいよ終盤戦。大手進学塾では主に日曜日を使って志望校別特訓が9月から本格化します。サピックスでは「SS(サンデーサピックス)」、早稲田アカデミーでは「NN(何が何でも)」というアレです。

 通称「日特」。要不要論いろいろな意見があります。中には入試までの追い込みは、子どもにフィットしたプランを独自にやりたいと思っている親御さんは多いはずです。親御さんが日特を見切って上手くいこともあれば、そうでない時も…。あなたは残り4〜5カ月、どういうかじ取りをしますか。

9月以降の勉強は悩む

★早稲田熱望
 ショウタ君は早稲田中学が第1志望。3年生の時から、同中学・高校の文化祭「興風祭」へ毎年通い、「ここに入りたい!」という気持ちを年々高めていきました。

 新4年生の2月から地元の大手進学塾で勉強、早くから行きたい学校が定まっていたことで、周りの子に比べ学習に取り組む「熱」が違いました。早くから目指す学校が決まることのメリットがここにあります。

 5年生秋の模試で早稲田の合格可能性の判定は80%。6年生になっても4、6月の模試では安定した成績で「ワセダ入学」の夢は膨らむばかり。迎えた夏期講習でも大好きな算数を中心にレベルを上げて、親御さんも合格を半ば確信していました。

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早稲田高校は早大へ約半数が進学

なぜ?6年生の9月に退塾
 9月。最後の詰めをすべく早稲田の冠が付いた日特が始まります。しかし、ショウタ君は日特に申し込まず、それどころか通っていた塾をやめてしまいました

 塾側の引き留めにもかかわらず、退塾を推し進めたのは親御さんでした。「9月からの塾は演習問題中心になる。それなら家でもできる。日特も過去問を使っての授業。家で過去問に取り組めばよい。親がある程度見てあげることもできるし。それに受験まであと50万円かけるのは…合格した後もいろいろお金がかかるし」

受験終盤戦はお金もかかる

まさかの0勝5敗
 結論から言いますと、ショウタ君は早稲田中学に合格しませんでした。2月1日の第1回、3日の第2回とも合格者を掲示したボードに受験番号はありませんでした。

 「お試し受験」だった1月の千葉県の中学も落とし、早稲田が2回とも不合格だった後に急きょ出願した2校も撃沈。周囲から合格確実と思われていたにもかかわらず、全敗という悲しい結末を迎えてしまいました。

まさかの全敗

志望校別特訓の肝「気づき」と「詰め」
 敗因は何だったのでしょうか。鍵は日特=志望校別特訓にあったと言えます。

 親御さんが指摘する通り、志望校別特訓はその学校の過去問を中心に授業が進められます。塾によっては新作問題として、予想問題をつくり、それが看板になっているところもありますが、主流は過去の出題から傾向やその問題の出題意図を探り、合格に近づくという趣旨で授業が展開されます。

 これを十数回の授業で繰り返すことによって、受験生は目指す中学校がどのような問題を出題し、それにどう回答していくかの対策を先生と共に練り込んでいきます。そこでの「気づき」が学力の上に肉付けされて、最後の「詰め」になるのです。

 過去問自体は家庭でもできます。親御さんの中には採点だけでなく、解説ができるケースも一定数いらっしゃることでしょう。しかし、親子だと子どもはアドバイスを素直に聞き入れません。ショウタ君の家庭でも「うるさいなぁ。分かってるよ!」という言葉の下、決して家庭学習は予想通りには進まなかったようです。

志望校別での「気づき」は強力な武器に

モチベーション維持に効力発揮の「連帯感」
 もう1つはライバルであり戦友である「クラスメイト」の存在です。

 志望校別特訓のクラスは1回ごとに前回の授業内での演習の総合得点順に座る席が決まる、というルールの塾が多いです。「最後まで2列目をキープすれば合格率100%」とか、「総合成績より算数のできる順に合格する」とかの“伝説”で騒ぎながら、生徒たちは切磋琢磨して力を付けていきます。

 同じ目標を目指すことで、競争相手というよりは仲間意識の方が強くなるようです。演習問題の出来不出来で刺激し合うことはもとより、難しい問題に対して知恵を出し合って考えたり、教え合ったり、短い昼食時間におやつを交換し合ったりするなどの交流を通して「一緒に合格しよう」という連帯感が生まれ、それが良いモチベーションにつながるという側面もあり、これが不思議な効果を発揮します。

 勉強って、独りでもできますが、「独りではない」ということも大きな力へと変わるのです。ショウタ君は退塾後、模試の合格判定の良さから勉強のペースはダウンし、過去問も点数を気にするばかりで、悪い時は「なかったこと」にしたり、「これはケアレスミスだから本当はっている」など、復習すべきところをスルーしがちになりました。

 過去問からの「気づき」も少なく、刺激し互いを高め合う「仲間の存在」も遠く、「詰め」も甘ければ、維持していた成績など簡単に落ちます

同じ目標への連帯感は力を発揮する

早くから考えておきたい受験の「着地」方法
 志望校特訓は合格を保証するものでもなければ、ましてや受講すれば成績が飛躍的に上がり、合格圏に突入する“特効薬”ではありません。学校名の付かない「難関校対策」などの講座は、その効力が問われる授業内容かもしれません。

 過去問対策、最後の詰め…。通常3年間の受験勉強の集大成といえる最後の秋から冬への時期は、志望校特訓でなくても、その子に合った道を選択する必要があります。お金が思った以上にかかる場合もありますが、“補給”が続かなくて敗れるのはとても切ないことです。

最後の着地をどうするか、早いうちから親御さんは考えておきたいものです。

※この内容は事実をもとに、個人が特定されないように名前や情報を一部変えています。

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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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池ノ内 潤

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