中学受験 カンニングについて考える
◆受験の窓口 今回のメニュー
・禁じ手「カンニング」に手を出す子
・原因はプレッシャー なぜカンニングをするのか
・宿題、過去問…気が付かない親御さんの特徴
・なぜ塾でカンニングを注意しないのか
・入試でカンニングをするとどうなるか
・追い詰めることの悲劇

★禁じ手「カンニング」に手を出す子
中学受験をする子どもは、成績の良い悪いにかかわらず、それぞれプレッシャーを感じています。みんな口には出しませんが「お父さんやお母さんを喜ばせたい」と思っているのです。そのけなげな気持ちが、精神的な重圧になるのですから皮肉なものです。
子どもたちが「やってはならない」と分かっていても、やってしまうのが「カンニング」です。もちろんやらない子が大多数です。でも、“追い込まれている子”はこの禁じ手の誘惑に勝てず…という場面がたびたびあります。

★原因はプレッシャー なぜカンニングをするのか
カンニングは塾の小テストや模試で見られます。テスト監督をしていても分かりますし、解答用紙を見ればもっとよく分かります。隣同士で間違えている問題が一緒。中には誤字脱字まで一緒。やっぱり子どもですよね。
塾のクラスのアップダウン、個人成績、偏差値…生徒は少なからずプレッシャーを感じながら受験勉強をしています。親御さんから「今度のテストでクラスが下がったら…」「偏差値が上がらなかったら…」という言葉がズシンと心にのしかかるのです。
何とかしなきゃいけない、でも自力では何ともできない、どうしよう…となると、1点でも2点でも点数を取ろうとして、横の人の解答用紙をチラッと…ということにつながることがあります。それがしばらくバレずにいると(注意されないでいると)、行為はエスカレートし、ついには自分で考えようとせず、「分からなければ見ればいい」との感覚になるのです。

★宿題、過去問…気が付かない親御さんの特徴
宿題や過去問でも、カンニングをする子はいます。これも見る側からすると、バレバレです。
いくら気をきかせたつもりでも模範解答を写せば、うまく“加工”することはできません。記述問題や算数の途中式など、間違え方が不自然なものになりがちで、記号問題でも「ここが正解するのに、なんで関連する次の問題が間違うのか」と違和感が残るのです。逆に加工がバレないようにできるくらいだったら、正解かそれに近いものを自力で導き出せます。
子どもの様子を観察している親御さんは、子どもがカンニングしているかどうかはすぐ分かります。ところが、勉強は塾にお任せ、という家庭では気が付かないこともよくあります。「過去問はできているのに、入試で落ちた」という現象も、親御さんの知らないところでの“行為”に行き着くのかもしれません。

★なぜ塾でカンニングを注意しないのか
カンニングへの対応は、塾の中で統一していません。厳しく注意をする先生や塾もあれば、見て見ぬふりというか、放置している塾も散見されます。
子どものことを思えば、注意するのが普通だと思うのですが、カンニングの事実を指摘しても、「うちの子そんなことをするわけがない」と反発してくる親御さんもいます。また、クラスのみんながいる前で“さらし者”にするのもこのご時世でははばかられることです。呼び出しをしても、噂は立つものです。
あまりにも気を遣い過ぎのように思えますが、「テスト中に横に立って圧力をかける」程度対策しかしていない塾も実際には多いようです。

★入試でカンニングをするとどうなるか
“困ったらカンニング”のクセがつくと、入試でもっと困ったことになります。実際の入学試験でカンニングなど、不正行為があった場合、発覚した時点で試験が打ち切られることはまずありません。しかし、「チェック」はされます。
詳しくは書けませんが、ある中学校では監督の先生と、補助員の学生が試験中に“不審な行為”を確認すると、採点の対象から外されるそうです。つまり、すべて0点なので合格はできません。

★追い詰めることの悲劇
よく「まさかの不合格」という、毎年どこかで起こる不思議な現象がありますが、原因の一つにこのようなケースで…ということもなきにしもあらず、なのではないでしょうか。
中学受験で成功を収めることは大きな目的ですが、そのために12歳の子どもを「追い詰めてしまう」のは悲劇でしかありません。「楽しく」などとキレイごとは言いませんが、必要以上のプレッシャーをかけてまで受験勉強をする必要はないと思います。(受験デザイナー 池ノ内潤)