国語の勉強法

出題される国語説明文のテーマはこれ!

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読解素材文で人気の植物学者
コロナ禍をどうとらえるかの視点
国語で「みそ汁」の作り方を問う
増える「あなたはどう思うのか」
「平棚観察」で情報をつかむ

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★読解素材文で人気の植物学者
 稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)。中学受験の世界でここ数年、この植物学者の名前を見ないことはありません。しかも理科ではなく、国語です。稲垣氏の著作は国語の説明的文章(説明文、論説文)読解問題で好んで起用される素材です。

 21年度は20年6月に発表された「はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の研究」(ちくまプリマ―新書)が桜蔭、筑波大附属、鷗友学園女子、明大中野など10校近くで出題。19年に発売された「生き物の死にざま はかない命の物語」(草思社)も巣鴨などで使われました。断トツの人気です。

 自称“みちくさ研究家”、図鑑通りには生えない「雑草」に心惹かれるという大学教授の著書は人間以外の生物の興味あふれる話をしていながら、実は人間についての深い洞察を加えながら文章が進んでいきます。「『らしさ』という呪縛を解いたときに、初めて自分の『らしさ』が見えるのです」(「はずれ者が進化をつくる」より)という言葉に代表されるように、物事や事象に貼られたレッテルを次々はがして、初めて見つかる本来の姿を気づかせてくれる優しい文は、中学入試の読解素材文を超えて受験で気持ちの余裕がなくなりつつある親御さんにも読んでもらいたい一冊です。今後も中学受験での「稲垣人気」はしばらく続きそうです。

ゾウなどさまざまな動物を例に出し「個性とは」を論じる

コロナ禍をどうとらえるかの視点
 小説などの文学的文章より、説明的文章の方がいち早く時代を反映します。21年度入試でいえば、やはりコロナ禍です。コロナ禍そのものをどうこう論じるのではなく、それにかかわる人間について、生き方についての文章が中学受験の読解素材文として散見されました。早稲田では20年7月に出された「コロナ後の世界を生きる 私たちの提言」(村上陽一郎編、岩波新書)に収録で、テレビの情報番組のコメンテーターとしても知られるロバート・キャンベルが著した『「ウィズ」から捉える世界』が読解の素材文として登場しました。

 コロナ禍という人類共通の苦しみが終息した後、「私たちは何を残せるでしょうか」と問いかけ、「その人に合った適切なソーシャル・ディスタンスを保持しつつ、他者の喜びや痛みをフェイクではなく確かな事実として理解するような連帯感に溢れた社会、そういう未来を是非迎えたいものです」と締めくくっています。“順当”な結論であり、多くの受験生が受け入れやすかったと思います。

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 一方、海城で出題された、若松英輔の「弱さのちから」(亜紀書房)は、コロナ禍で「頑張る」ことだけが大切なのではないという論を展開します。ドイツのメルケル首相のコロナ禍でのテレビ演説を引用、自分の「不安」「弱さ」を明らかにすることで「連帯というものが生まれてくる」としています。「私たちは、自分の弱さを抱きしめられたときに、他の人にも弱さもまた、拒むのではなく、抱きしめるに値するものであることに気がつくのだと思うのです」という言葉は、「苦しい」→「頑張れ」という単純な図式では読み取れない、コロナ禍での別の考え方を受験生が受け入れられるか、別の価値観も共感できるかという柔軟性を見るうえで素晴らしい素材文の選択だったと言えます。

「弱さ」から生まれる連帯もある

国語で「みそ汁」の作り方を問う
 コロナ禍に関連して日常生活の“常識”を問う、これが国語の問題か?と疑いたくなるような“変化球”も21年度入試には登場しました。横浜雙葉で出題された「豆腐とわかめのみそ汁」問題です。みそ汁をつくり、相手に勧める言葉遣いを問うだけでなく、作る手順を4つの選択肢を並び替えて完成させるという家庭科のような出題もありました。

 小問での“変化球”ならうろたえることもありませんが、入試本番で大問ごと“変化球”だと、パニック状態に陥る受験生もいるはずです。市川の国語の大問3は大問2の文章の傍線部の解答を大問1の文章の中の内容から答えるというもの。つまり問いの対象になっている素材文と、解答を導き出す素材文がそれぞれ違うのです。その1問だけで大問3が構成されているという新型の問題には驚かされました。

豆腐とわかめの味噌汁も国語の問題に

★増える「あなたはどう思うのか」
 記述問題の増加傾向は今後も続くと思いますが、最近では与えられた素材文を客観的に読んで解答するというものから、「あなたはどう思うのか」「あなたの場合はどうなのか」と尋ねてくる「作文型記述」問題がより目立っています。

 慶應義塾湘南藤沢では東日本大震災と同じ規模災害が生じ、長期の避難生活をする場合「十歳の子ども達に体験、または経験してほしいとあなたが考えていることは何ですか。また、あなたが具体的にどのような工夫をすることで、それは実現できるでしょうか。百四十字以内で書きなさい」という出題がありました。

 そう言われても…という感じです。実際に震災を経験していない、震災があったことさえも記憶に残っていない12歳の子どもが想像を巡らせるだけでは、なかなか発想できない問題です。これが正解、というものはなく、着眼点や制限字数内でまとまった1つの主張ができるかどうかを採点の対象にしているのです。

経験していないとなかなか想像できないと思うが…

「平棚観察」で情報をつかむ
 他にも図表を分析して答える、社会や理科のような問題も数多く出題されました。22年度もこの傾向は続き、さらに進化した新作問題も登場もするでしょう。

 素材文になりそうなものを熟読して入試に備える、なんてことをしても数が膨大過ぎて無意味になるので子どもはする必要もありませんが、親御さんが新刊本の並ぶ書店の「平棚観察」をやるのは大いに結構。折に触れ、子どもたちに「今年はこういう本が出版されているよ」と伝えるのも情報として大切なことです。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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