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他人事ではない難関校の算数
開成の合否を分けたのは「丁寧さ」
聖光学院の“超大作”で測る学びの素養
・算数長文問題を出題するもう1つの理由
・過去問と同時に長文問題を積極的に

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★他人事ではない難関校の算数
中学受験は算数で決まる、というのがこの世界の“常識”です。国語と並んで算数の配点は理社より高いことが多く、1問当たりの配点も高く、1つできないと5点、6点と簡単に差が付きます。「算数1科入試」で入学を許可してしまう中学も増えつつあります。その算数の入試問題、難関校を中心に“長文読解”をしないと解答に至らないタイプがトレンドです。

「難関校の話でしょ?」と我関せずの親御さんもいらっしゃるかと思いますが、難関校で出題された問題は上位校かさらに工夫を凝らしてアレンジし、数年後は中堅校、一般校でも「定番」化します。“他人事”ではないのです。

★開成の合否を分けたのは「丁寧さ」
東京の男子最難関私立・開成の21年度算数は大問3問構成でした。最初の暦や規則性などの「小問集合」、次の立体図形の問題は最後の(3)を除いて比較的簡単に解けたと思われますが、最後の大問3がトレンドの「長文読解」。テーマは「数の操作」で、ルールの説明だけで1ページ、問いは計5問、それぞれ3行ずつで半ページを使うという“大作”でした。四谷大塚の入試報告会資料「教科内容の分析 算数」では「ここの出来が合否を決定的に分けたと思われる」と断言しているほど、キーになった問題です。

 本来なら全文掲載をしたいところですが、ここでは問題の解説が主目的ではなく、そちらは赤本や塾の特訓授業に譲ります。お伝えしたいのは、この種の問題は粘り強く、丁寧にルールをたどり、理屈が分かってしまえば驚くほどすんなりと正解に至るということです。

 問題文のボリュームにたじろいだり、長すぎてルールが追えず、題意が読み取れないというのが解き切れない典型的なパターンでしょう。開成が欲している生徒は「物事の本質をとらえ、きちんと筋道をたどり、粘り強くものを考えられる男子」というのが、この出題でよくわかります。

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開成の中学校舎

聖光学院の“超大作”で測る学びの素養
 神奈川私立男子校の最難関、聖光学院は開成の倍にあたる3ページにわたる“超大作”でした。平面図形に条件整理を入れた問題ですが、丁寧に読み進めていくと、実は全て相似と規則性の問題だと分かります。ルールを理解し、自分で必要な補助線を書き入れるなど自ら「解き進めていく力」=思考力があれば、 “超大作”のわりには難易度的には難しくありません。

 丁寧さと思考力は車の両輪のようなもので、丁寧だからこそ、どう解き進めていくのが良いのかを気が付くことができるのです。国語の読解問題同様、ある程度のスピードは必要ですが、丁寧に展開を追っていくのが正解への最短距離なのです。

 算数にしては長すぎる問題文のルールを1つずつ頭に入れながら、やるべき作業を怠らず取り組む。一見回り道のようですが、実は一番正解に近いということに気が付いているかどうか、そういう考え方ができる素養があるかどうか、中高一貫校での学びの基本姿勢をこの1問で測っているのです。

算数長文問題を出題するもう1つの理由
 別の側面から、算数の長文出題が増えている理由を考えてみると、難関校では塾のテキストに出るような典型問題では受験生の差が付きにくくなっているという現実があります。そのため点数差がつきやすいように長文問題が出題されるのです。いわば入試の合否を決める分水嶺になっているのが、算数長文問題です。

 大手進学塾では常にテキストを改訂しています。特にあらかじめ冊子で閉じた本タイプではなく、授業当日に教材を配布するプリント型の塾は改訂が比較的楽なので、入試が終わると新年度用のテキストに良問、新傾向の問題をテキストに反映させます。こうやって受験生は年々実力を付け、難しいとされていた問題も標準的になり、数年後には中堅校でも出題される、基本の典型題となって多くの受験生が解けるようになるのです。

算数長文問題で合否の差が付く

★過去問と同時に長文問題を積極的に
 算数長文問題の出題は、思考力を問う問題が増える傾向と相まって今後も増えると予測できます。近い将来、難関校だけでなく、広く浸透していくでしょう。

 対策として、正確な計算力、理解力、再現する力、規則を見つける力を養うことが大切です。特に6年生後半の過去問対策の時期になったら、受験校の過去問以外でも操作の問題や、規則性の長文問題を探して積極的に練習することがポイント。子どもだけでは算数小僧以外まず進んでやろうとしません。だって、面倒ですから。親御さんも算数長文問題を意識し、塾の先生にも相談して、課題を出してもらったり、「中学への算数」(東京書籍)などをペラペラめくり、類題を探しては時間を作ってトライしてください。絶対どこかの入試で「やっててよかった」となります。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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