中学受験質問箱

【中学受験質問箱】テキストの解答を丸写しする我が子に困っています


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塾が丸写しを叱責しない理由
・塾の興味は難関校の合格実績
親のひと言が丸写し、カンニングの原因
・間違い、できないことはチャンス!
・親御さんも一緒に脳ミソに汗をかく意味

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 【質問】小6の男子母親です。息子がどうも塾の宿題や解き直しをやる際にテキストの解答をほぼ「丸写し」しているようなのです。解答の冊子は私が持っているのですが、友達のをコピーして自分で持っているようです。子どものノートを見た時に、塾でやったところは、途中までで問題を解ききっていないのに、宿題の個所は問題を一生懸命解いたという跡がなく、どれも綺麗に書いてあって〇を付けた後が並んでいます。一度「答え写しているだけで自分で解いていないんじゃない?」と問いただしたことがありますが「そんなことしてない。疑っているのか!」と烈火のごとく反撃してきました。でも、成績は5年の夏以降から下がる一方で、特に算数や理科が秋に偏差値50を割って以来、40半ばぐらいまで落ち込み、上がる気配がありません。「テストになると、応用問題が出てテキストだけやっていてもできない」と主張しますが、実際にはできている子いるわけだし、この先心配です。

親御さんの悩みは尽きない

塾が丸写しを叱責しない理由
 塾の宿題の答えを丸写し――。中学受験では珍しいことではありません。極端な話、“みんなやっています”。成績の良い生徒でも、宿題に追われてやってしまうことがあるといいます。ましてや苦手科目や偏差値が50に満たない子は、宿題の多くがちんぷんかんぷんなことが多いので、結局“誘惑”に勝てません。ご質問のように、算数が一番多く、国語の記述問題も模範解答とほぼ一緒、なんていうケースは「あるある」です。

 塾側もそれは百もお見通し。だからといって咎めることはあまりありません。小テストなり月例テストなりの結果、答案の内容をみれば本当の実力を簡単に把握することができます。丸写しを強く叱ると、最近の生徒は塾を辞めてしまうことも多々あります。そうなると塾にとって定期的にお金を落としていってくれる大切な“お客さん”を失うことになります。「営利団体」である進学塾が“得意客”を失うようなことは進んでするわけがありません。

珍しくない丸写し

★塾の興味は難関校の合格実績
 “出資元”である親御さんからの要請で注意することはあっても、人前で叱責したり、恥をかかせてお灸をすえるなどの“劇薬”は滅多なことがない限り使用しません。ひどいところになると、小テストでのカンニングも見て見ぬふりです。

 正直なところ、大手進学塾にとって興味があるのは、合格実績を知らせるチラシで赤の大文字になる学校に合格する子、その次がそれよりひと回り小さい字の学校に合格する子です。つまり、最難関・難関クラスの学校に合格する子です。同じ月謝を払っているのに…と怒り心頭の親御さんもいるかもしれませんが、それが冷厳なる事実です。テキストの解答を丸写ししているような、難関校に届かないレベルの子への興味は「最後まで通塾し、きっちりお金を支払ってくれるかどうか」だけです。

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 一方で営利団体である進学塾が、自らの利益増進になる「難関校の合格実績」にかかわる子には“投資”します。トップ講師が担当になり、志望校対策に別のテキストを使い、質問にも粘り強く付き合ってくれるのはそのためです。

興味があるのは難関校合格実績

★親のひと言が丸写し、カンニングの原因
 それでも我が子の「解答丸写し」は親御さんにとっては大問題です。やめさせる方策を講じなければなりません。その前に親御さんに胸に手を当てて考えてほしいことがあります。それは「テストの結果やできないことで怒ったり、小言をいうことはありませんか」ということです。

 子どもがなぜ解答を丸写しするかと言えば、問題に向き合うのが面倒くさい(これは別の問題なのでまたの機会に)のと、間違えていること、できないことで親にガミガミ言われるのが嫌、というのが大きな理由です。これは小テストでカンニングを日常的にやる子どもにも共通の心理です。テストの答案を見た時、成績表の偏差値を見た時「どうしてできないの」「この成績は何なの」とか思わず言っていませんか。そう言いたくなる親御さんの気持ちは痛いほどよくわかります。

 しかし、子どもにとっては今やっている勉強内容が分からないのですから、自力でどうにかしようとしてもどうにもならないから、親御さんの叱責を避けるために丸写し、カンニングに走るのです。

「ガミガミ」が丸写し、カンニングにつながる一因

間違い、できないことはチャンス!
 解決策としては「どうしてできないの」「この成績は何!」など、子どもを追い詰める言葉この言葉を発しないことから始めます。代わりに言う言葉は「こことここはよくできているね。頑張ったね。間違ったこと、できないことは悪いことじゃない。やるべきことが見つかったということ。チャンスなんだよ。さあ、一緒に考えよう」

 テスト直しや宿題の取り組みを見直すことも大切ですが、一番やってほしいのは丸写し、カンニングをするに至った道のりをさかのぼって、その出発点から地道にやり直すことです。「時間がない」「そんなことをしていたら受験に間に合わない」という声も聞こえてきそうですが、その回りくどいことをすることが、できるようになるための近道です。

 基礎、基本を徹底した子は、受験勉強が佳境に入る6年生後半、志望校の過去問に取り組む頃には最強です。中学入試の問題は大雑把に言うと、基礎、基本問題をベースに基本と基本が組み合わさって別の形をした応用問題から成り立っているからです。

ピンチはチャンス できなかったところから突破口が開く

親御さんも一緒に脳ミソに汗をかく意味
 親御さんも一緒に戦ってあげてください。子どもを通塾させ、教材を与えているだけでは大抵の子はできるようになりません。親御さんも脳ミソに汗をかいて、一緒に受験勉強に取り組んでみてください。子どもが何につまずき、何が分かっているのかを知ること。それだけでも子どもを取り巻く「勉強状況」は変わってきます。

 そして丸写しもカンニングもせず、正々堂々と受験勉強に立ち向かえるようになったら、そっと手を放して応援団に回ってあげてください。10代前半の子どもにとって親御さんの支えほど心強いものはありませんから。(受験デザイナー・池ノ内潤)


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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Published by
池ノ内 潤

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