親御さんの役割

中受は父親の“経済力”と母親の“狂気”


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開始から3年以上「二月の勝者」
終わってみて分かる言葉の意味
ざっと400万円は必要!?
・中受は「戦争」と同じ「補給」が鍵
・「狂気」と言われるくらいやらないと
・「デキる」お母さんはこうする
中受は家族の「総合力」が問われる

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開始から3年以上「二月の勝者」

 中学受験をする親御さんの間でよくみられている、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)連載の「二月の勝者―絶対合格の教室―」の11巻が4月12日に発売されました。2018年の連載開始以来、3年たっていますが、ストーリーはまだ11月。だれが二月の勝者になるのかが分かるのは、まだまだ先になりそうです。

 中学受験塾「桜花ゼミナール」吉祥寺校を舞台にした、塾講師とそれぞれの生徒、家庭とのかかわりを描いた漫画ですが、塾関係者らも「かなりリアル。この業界で働いていたのでは」とうならせるほど。高瀬志帆さんが繰り出すストーリーと描写は多くの参考文献と綿密な取材に支えられ、累計100万部を突破する人気となっています。

終わってみて分かる言葉の意味

 「中学受験は“課金ゲーム”です」「塾講師は“教育者”ではなく“サービス業”ですよ」「“説得”というものは相手に聞く準備がなければただの“説教”です」など、数々の中学受験にまつわる“名言”も散りばめられていますが、その第1巻の冒頭部分で衝撃的な言葉があります。

 「君達が合格できたのは、父親の“経済力”。そして母親の“狂気”」

 露骨ではありますが、中学受験をリアルに言い当てた言葉です。この言葉、「受験の最中はなかなか気が付かないのですが、終わってみるとよく分かる」と終了組の親御さんの多くが実感を込めて納得しています。

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ざっと400万円は必要!?

 中学受験には驚くほどお金がかかります。「経済力」は長丁場の受験を戦っていく上でどうしても必要不可欠な要素です。大手進学塾へ通塾すれば、4年生からの3年間で安く見積もっても200万円強、高いと300万円まではいかないまでも270~280万円程度は必要になります。家庭教師や個別指導などが加われば、さらに負担になります。

 入試も受験料、合格した場合、進学の権利を確保しておくための一時金(入学金の一部)、進学する学校が決まれば入学金と施設費、学校によっては寄付金もお願いされます。受験校数にもよりますが、このあたりをざっと見積もってもすぐに動かせるお金が100万円以上ないと安心できません。細かく説明会に行った際の交通費や過去問の購入代などまで合わせると、400万円は入学までにかかるかもしれません。

中受は「戦争」と同じ「補給」が鍵

 年収1000万円弱の世帯が中学受験のボリュームゾーンといわれます。1人なら私立中高一貫校、なとかなるでしょう。しかし、もう1人となると結構苦しくなります。「僕は、私は行きたくない」と下の子が(上の子かもしれませが)言わない限り、きょうだいで差別するわけにもいかず、もう一人も参戦となります。

 中学受験において父親は「ATM」「キャッシュディスペンサー」などと揶揄されますが、たとえは悪いですが戦争と同じで「兵站(たん)・補給力」=「経済力」が受験でものを言うことは確かです。

「狂気」と言われるくらいやらないと

 生徒本人のやる気は言うまでもありませんが、中学受験はある程度お金をかければ何とかなるというものではなく、家族の精神的サポート、できればテキストや宿題管理も含めた学習面での母親を中心とした「援護射撃」は必須です。きっちりやろうとすると「どうしてここまで…」と、我に返って自問自答してしまうくらい大変です。それが一生懸命すぎて傍から見れば「狂気」とさえ映るのでしょう。

 しかし、難関校、中堅校問わず中学受験で結果を出す子どものお母さんは「頭はクールに、気持ちは熱く」という方が多いのも事実です。子どものテストや普段の勉強状態を冷静に分析し、素早く手を打ちます。

「デキる」お母さんは こうする

 「デキる」お母さんは塾を最大限に利用し、時にはオリジナル教材を作成して子どもに合ったやり方を模索し成績アップのアシストをします。同時に学校説明会に足しげく通い、ちまたの噂話などに左右されない独自の情報収集活動をします。まさに八面六臂の行動力です。

 志望校選びから塾選び、何をどう勉強するかをほとんど自己判断する(友人、先輩の影響を受けながら)大学受験と、中学受験が決定的に違うのは、親御さん、特に母親の関わり方です。それを「狂気」と表現しているのです。「狂気」は言い過ぎかもしれませんが、小学生でもトップ層ばかりが参戦する中学受験は、それぐらいの覚悟がないと戦えないのです。

中受で問われる家族の「総合力」

 家族の形はそれぞれなので「経済力」を担うのが、父親ではなく、母親かもしれませんし、両親、あるいは祖父母を含めた一族かもしれません。「狂気」で合格に導くのも母親の役目ではなく、過去に「下剋上受験」で話題になった、父親が先頭に立ってやる場合もあるでしょう。

 いずれにしても中学受験というのは家族を巻き込むということです。そこが大学受験とは大きく違います。学習面に関して中学受験は、子どもの学力とともに家族の「総合力」が問われます。(受験デザイナー・池ノ内潤)


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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