個別指導塾は“切り札”になるのか。
◆中学受験の窓口 きょうのメニュー
・「百花繚乱」の個別指導塾
・個別塾と中学受験との「相性」
・個別指導「よくある光景」
・特殊な中受を指導するのが厳しい先生
・大手塾準拠の個別は「あり」たが…

★「百花繚乱」の個別指導塾
学習環境、塾界隈の世界で、親世代との大きな違いは「個別指導」を売りにしている塾が多いことです。「マンツーマン指導」「個人にカスタマイズ」「好きな時間を選んで」など、宣伝のチラシやホームページには魅力的な言葉が並び、成績がアップした事例が数多く紹介されています。
「明光義塾」や「家庭教師のトライ」など大手進学塾との関係はなしに展開しているところが有名です。一方で「ユリウス」「プリバート」「個太郎塾」など、それぞれ日能研、サピックス、市進学院など中学受験塾(市進は大学受験まで)の“付属”的な存在の個別指導塾もあり、「百花繚乱」の雰囲気です。

★個別塾と中学受験との「相性」
親御さんの頭の中に「個別指導塾」の利用がよぎるのは、子どもの「成績不振」「苦手科目克服」「勉強の習慣づけ」などが主だったところではないでしょうか。集団塾ではどうしても全体のペースがあるため、個人に合わせてというのはなかなか難しいところ。そこで遅れを取り戻すために、と個別の“投入”を決意する傾向にあると思います。
しかし、親御さんの思惑通りいくかどうかは疑問なところが多々あります。正直大手塾付属以外の個別塾と中学受験との「相性」はそれほどいい、とは言えません。「指導体制」「先生」の2つの点で考えてみます。

★個別指導「よくある光景」
マンツーマンを標榜する個別塾ですが、基本は「先生1人に対して生徒2人」のユニットです。もちろん、1対1を希望すれば組んでくれますが、料金がアップするだけでなく、塾側がそれを嫌ってきます。先生の数が限られているからです(大量採用すれば人件費がかさみます)。1度に2人、塾によっては3人、4人のところもあるといいます。
1度に2人、それもやっていることは個別なのでバラバラ。下手をすると、中学受験生と高校受験生の組み合わせもあり、先生が中学生を見ている間に、小学生には問題を解かせ、また逆のパターンと、1時間半の指導時間のうち、単純計算で45分しか面倒を見てもらっていないというケースは「よくある光景」です。

★特殊な中受を指導するのが厳しい先生
「先生」も中学受験についてよく知っている、というわけではありません。むしろ、そういう先生に当たる方が「まれ」です。大学生のアルバイト先生は、高校受験は経験しているけれど、というケースがほとんどです。高校受験と個別指導塾の相性が比較的良いのはそのためで、年の近いお兄さん、お姉さんに親近感を持ち、経験に基づいた教え方に共感するからです。
中学受験は特殊な世界です。特に算数などは、中学の数学を易しくしたものではなく、別世界の教科と考えた方がいいでしょう。東大や早慶に通っている大学生でも中受は経験していないと、教えるのが難しいというのが実態です。教室長にしても中学受験に精通している方はこれまた「まれ」で、親御さんと話をしてもかみ合わないこともしばしばです。
時間的拘束や時給が決して高くないというのもネックで先生の出入りが激しいのもこの業界の特徴です。予告なしに塾に行ったら先生が代わった、などという例もあり、責任という点でも不安があります。

★大手塾準拠の個別は「あり」たが…
大手塾に準拠した付属の個別は、塾のテキストの補習という形で進みますので、選択肢としては「あり」です。ただ、大半が大学生のアルバイトで“当たりはずれ”が大きいようです。
教育産業はかつてと違い、東大在学などの一部の家庭教師を除いて「おいしいアルバイト」ではなく、人材確保は難しくなっています。拘束時間や教えるまでの予習が必要なこともあり、時給に見合わないからです。
親御さんが教えられないから…と安易に頼ると、大切な軍資金を無駄に使ってしまう可能性も否定できません。生徒の質問をしっかり受け付けてくれる塾、信頼できる先生を見つけることが、資金的にも時間的にも無駄の少ない中学受験につながります。(受験デザイナー・池ノ内潤)