◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・ 幅広い層に人気の宮崎日大
・ 会場の近さと検定料の安さは魅力
・ 合格者数、最低点は非公表も…
・ 中堅、一般校の併願として人気
・実は国公立大に強い宮崎日大
1月入試、いわゆる「前受け」受験は、志望校、持ち偏差値によってそれぞれ選択する学校が違ってきます。都内や神奈川県在住で埼玉や千葉の学校でなく、地方の「東京会場入試」の中学校を前受けとして選ぶ場合、幅広い層に人気なのが九州の宮崎日大中学です。
1963年(昭和38年)に高校が開校し、中学は86年(同61年)にスタート。高校は県内最大規模の生徒数約1500人が学び、進学だけでなく、情報ビジネス学科 や芸術学科なども設置。甲子園出場経験のある野球部やサッカー、バレーボール、柔道などの強豪校としても知られています。
21年度こそ新型コロナウイルスの影響で受験者数を減らしたものの、年々増加傾向で2012年は129人でしたが、昨年は1579人と10倍以上の受験生を集めました。人気の1つが東京と神奈川に3会場設けていることにあります。
22年度入試は1月16日、東京は千代田区の日本大学経済学部と世田谷区の同大学商学部の校舎で、神奈川は横浜市港北区の慶大日吉キャンパスで行われます。合格しても通学する可能性の低い中学を、朝早く起きて満員電車に乗り、時間をかけて受けに行くのに抵抗を感じる親御さんには「近所」でできる「練習試合」はとても都合が良いといえます。
さらに「検定料」(受験料)は1万3000円と、相場の半額というのも大きいでしょう。併願校受験などで入試を受けるだけで平均で10万円以上かかる中で、この“格安検定料”はありがたい限りです。
過去問が市販されていないので、受験前に問題に触れるには四谷大塚の「過去問データベース」から入手するなど手段は限られます。解答用紙は付いていますが、解答がないため、塾の先生に見てもらうなどひと手間かかりますが、入学しないにしても受ける学校は過去問に一度はあたるというのが「鉄則」。「なんとかなる」と楽観視しないで、石橋をたたいて渡ってほしいと思います。
簡単に出題内容をみてみると、算数は整数、小数、分数の計算問題に速さや時計算、平均算などの一行問題は必須。円の面積、食塩水の問題は頻出です。理科は4分野から1題ずつの構成。生物の分類、天体、水溶液、てこやてんびんなどがよく出ています。社会は地理と歴史。地理は日本地図と雨温図の問題、歴史は年表と写真・絵画作品が定番です。国語は過去に詩の問題が出ていますが、読解は素材文の長さは短いのですが、記述問題が多く、50分で解き切るにはスピード勝負になりそうです。
ただ多くが基本問題なので「見たことがない」と驚くことはないと思います。塾のテキストにある典型題が随所に見られ、着実に1問ずつ攻略していけば恐れることはないでしょう。合格者数、合格最低点が公表されていませんが、合格発表とともに提示される個人の得点から判断すると、国語と算数の2科入試で5割、4科なら4割強の得点が合格ライン。選抜コースの合格は7割の得点が必要でしょう。
宮崎日大を「前受け」として選択する受験生は中堅、一般校を中心に本当に多いです。栄光ゼミナールが公表している「中学入試併願校・併願入試データ」の2021年度入試版によると、東京では実践女子学園、香蘭女学校、昭和女子大附属昭和、目黒日大、宝仙学園理数インター、田園調布学園、ドルトン東京学園、日大三などが、神奈川では神奈川学園、関東学院、桐光学園、法政二などを第1志望としている受験生が、併願受験しているというデータが追跡調査で集まっています。
得点の公表はされていませんが「合格しやすい」ということもあり、前述の会場の近さ、検定料の安さと相まって「入口」の第1戦目としては「妥当」と判断する親御さんが多くても不思議ではありません。
ちなみに東京会場の入試で宮崎日大に入学する子はしばらく1人で推移していましたが、2017年から3年続けて3人が入学。昨年も2人と複数が続いています。日大の準附属校で日本大学への推薦入学は昨年度147人。実は国公立大受験に強く、地元宮崎大には21人、宮崎公立大には7人合格。九州大、熊本大にも各3人、東大にも1人合格しています。その他、大阪、広島、千葉、筑波、東京芸大となかなかの実績です。
東京から進学すれば寮生活となり、親御さんの経済的負担もかかりますが、中高6年間、親元から通うよりしっかり自立した生活態度を身に着け、その成長ぶりは頼もしいでしょう。宮崎日大に限らず、寮生活の中学高校時代というのも「あり」かもしれません。