◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・「質問難民」は少なくない
・親御さんがひと肌脱ぐ
・親と先生の連携は「生命線」
・「質問した」の満足感に浸るな
「分からないことがあったら、先生に質問してきなさい」――親御さんは子どもに向かって「簡単に」こう言います。
しかし、塾によって「簡単に」質問できない雰囲気と環境にあることは、意外と知られていません。
大手進学塾の中には、質問できる時間を決めて、それ以外は原則受け付けないというところもあります。しかも1回につき質問できるのは1つだけと制限している場合も珍しくありません。
膨大な数の生徒を抱えている教室では、きめ細かく質問に対応したいという気持ちはあったとしても物理的に難しいという事情があります。
大手塾でも教室の規模が小さい所は、手厚く面倒を見てくれる場合もあるので、大手は質問しづらい、と一概には言えませんが、それでも「質問難民」の子はかなりいます。
質問をする、ということ自体に「ハードルの高さ」を感じている子もいて、そのタイプはさまざまです。
例えば「恥ずかしくて先生に質問できない」といったタイプ。成績自体はそう悪くないのですが、周囲の目(同じクラスの子)を気にして、目立つことはしたくない…と二の足を踏んでしてしまう、自意識過剰なタイプです。
あるいは「どう言って質問したらいいか分からない」、つまり先生に「自分の分からない」をどう説明していいか、うまく伝えられるか自信がないといった、タイプの子もいます。
内心は先生に質問して、自分の抱えている問題をクリアにしたいと強く思っています。それでもどうしても一歩が踏み出せないのです。こういう時こそ、親御さんの出番です。
親御さんが教えるのも手ですが、ここは先生との「橋渡し」が一番の得策。電話なり、メールなり、先生との連絡ツールで、「質問の予約」を取ります。授業前、授業後、あるいは別日…先生の都合を聞いて時間を取ってもらい、子どもが質問に行くための「きっかけ作り」をします。
「そこまでやる必要が…」と思うかもしれませんが、一部の子を除いて先生への質問はやはり「ハードルが高い」ものです。志望校合格への分岐点になるかもしれません。ひと肌脱いであげましょう。
親御さんがわざわざ先生と「接触」することで、先生の方もあらためて「その子」に伝わるように、と意識して教えてくれます。これだけでも「橋渡し」をした甲斐があります。
教え方の方向を変えれば理解できる、通常授業のスピードでは「取りこぼし」があるものの、噛んで含んで教えれば分かる、そもそも質問している問題以前のことが分かっていない…マンツーマンで接したことで先生が薄々感じていたことがはっきりします。これを機に、その子へのアプローチの仕方が変わるケースもよくあります。
親御さんにも子どもの現状が先生を通して伝わることで、子どもが勉強していることが具体的に見えてきます。そうなるとただ「勉強しなさい」と言わなくなり、その子に応じた「声がけ」もできるようになります。
通塾しているだけで、あとは「丸投げ」では伸びるはずのものも伸びません。親御さんと先生の連携は、通塾の「生命線」です。
気を付けたいのは「質問に行った」という行為だけで満足してしまうことです。
質問に出向いて、ひと通り解説や説明を聞いただけでうなずき、「分かったふり」をして終わりにしてしまう生徒はとても多いです。先生の「口調」や「雰囲気」で、もう一度聞いてみようという気持ちが萎えてしまうのかもしれません。
あるいは、その時は「分かった」のだけれど、実際に自分でアウトプット(自力で解答を導く)となると、まだまだ、という場合もあります。
子どもが「分かったふり」で帰ってこないようにするためには、親御さんが質問に行く前に1つレクチャーすると良いかもしれません。
「分からなかったら、分からない、というのは恥ずかしくないよ。何度でも聞いていいんだよ。分かったふりをして帰ってくるのは、教えてくれた先生に失礼になるよ」などと、ひと言付け加えて送り出しましょう。この言葉だけでも、子どもは「先生、もう一度」と言える勇気になります。
元来塾の先生は「教え魔」の人ばかりです。一度質問に来た子には、その子が理解、解答を再現できるようになるまで手を変え品を変えて教えてくれます。その過程で先生の方が思いがけない「つまずき」に気が付いてくれて「こうすれば…」と新たな提案をしてくれる場合もあります。
塾は、親子ともども一歩踏み込んだ者勝ちです。高い受講料は質問代込みと思ってください。有効活用しましょう。