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女子大に行かなくなった女子大付属の生徒


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「上」に行かない2つの理由
文系は「法商」理系は「医歯薬」
女子大系列校進学の3つの理由
・「校内の雰囲気」で左右する進学

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「上」に行かない2つの理由

共立女子15%、大妻1.6%、白百合は卒業生164人中1人――。これは22年度の女子大系列の中高一貫校から併設の女子大へ進学した割合、人数です。

「20年くらい前は大半が上の女子大に進みましたが、今は他大学進学が当たり前。一般受験組もいますが、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(指定校推薦)で進学する子が増えました」と、多くの女子大系列中高一貫校の先生が口をそろえて言います。

理由としては、どんな時代になっても将来自立して生きていける「スキル」を身につける、というのが一番大きなもの挙げられます。女子大に多い文学部や家政系学部では難しい、という見方を女子生徒はしている傾向にあります。

もう1つ、中高一貫校が推し進める積極的な理系教育の影響もあります。理系大学との「高大連携」プログラムや多種多様な理科実験の増加などで、女子大には学部がない、理系学部がある大学に興味を抱き、その流れで進学、というケースもあります。

女子大の文学部英文科や国文科、家政学部系へ当たり前のように進んでいた親御さん世代とは様相が一変しています。女子大系列中高一貫校では併設大学は、全落ちした時の「保険」的存在にもなっていないのが現状です。

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文系は「法商」理系は「医歯薬」

女子大付属、中高一貫校だけでなく公立も含めた女子高生の進路のトレンドになっているのが、文系は「法・商学部系」、理系は「医歯薬農系」です。

経済学部と並んで法学部や商学部、経営学部は大半が男子学生、というイメージでしたが、学生の比率は大きく変化しつつあります。

大学側の資料によると、22年度の青山学院大と立教大の法学部の女子学生の割合は、共に約49%で男女比はほぼ1:1です。中央大商学部の女子学生の割合は34.8%、法政大経営学部は同36.1%と、3人に1人を超え、4割に迫っています。

21世紀になって相次いで新設されている「政策」系の学部は学校によっては女子が男子より多い、ほぼ同数というところも珍しくありません。青山学院大総合文化政策学部(2008年創設)は約7割、明治大情報コミュニケーション学部(2004年創設)は、約45%が女子学生です。

薬学部はもともと女子が多かったのですが、医学部に進むケースも目立ちます。22年度入試で桜蔭の東大理Ⅲ(医学部)の合格者がトップになったことが話題になりましたが、最近は浪人してでも国公立の医学部に進む女子も少なくありません。女子の場合は私大医学部に進むことも多く、慶應の医学部では27%が女子です。

農業に興味を持つ女子も多く、その流れは中学受験にも表れています。東京都世田谷区にある、中高一貫校の東京農大第一は、女子の方が入学者が多い年も珍しくありません。大学でも明治大農学部も48%が女子学生。食品やバイオテクノロジー、農業ビジネスに携わる女子は年々増え、化粧品の研究も農学部の「守備範囲」です。

女子大系列校進学の3つの理由

併設大学にあまり進まない女子校は中1の段階から受験を意識した話を学校から聞かされます。各大学の職員が赴き、校内で説明会が中3のあたりから積極的に行われます。学校の方向性が他大学進学なのです。

高校に進むと概ね2年生から文系理系、国公立・難関私立などのクラス分けが行われます。夏休みなどの校内講習は当たり前、外部の予備校・塾が補習のアシストをしている学校もあります。

外部受験をするのに、初めから中高一貫進学校の共学や女子校、総合大学の附属ではなく、女子大の系列校への進学を選択する理由は主に3つあります。

まずは「伝統と信頼」です。多くの女子大系列の中高一貫校の創立は明治や戦前の昭和です。そのため校則などが「厳しい」というイメージがありますが、かえってそれが親御さんの目線でいえば「信頼して預けられる」となります。

勉強についても、どちらかというと「管理型」。課題提出にもうるさく、小テスト、定期テストともに点数が悪ければ早速補習です。生徒にとってはうんざりですが、親の立場からすると「任せて安心」となります。高大連携も盛んで、将来をカが得るうえでも有益と親御さんは判断します。

次に母親が「OG」という場合もあります。中高時代、いろいろ文句も言ってきたし、窮屈だったけど、振り返ってみると、懐かしさも手伝って「いい時代だった」「あそこで学べて良かった」、ならば我が子も…となります。親子二代、三代というケースは女子大系列校では珍しくはありません。

3つ目は、実はこれが一番多くて現実的かもしれませんが、単純に「中学受験で第1志望校に合格できなかった」からです。

もちろん女子大の系列校を第1志望で受験する子もいますが、中学受験では共学校、女子校の進学校の方が人気があります。総合大学の附属校は女子大系と比べ難易度が高い場合が多く、第1志望校との併願はしんどい生徒がかなりいます。

日程的、偏差値的に見て「押さえ」になる傾向にあるのが女子大系の中高一貫校。入試の結果で進学することになったのが女子大系だったということです。

「校内の雰囲気」で左右する進学

一方で併設の女子大へ、かなりの割合で卒業生を送り出している女子校もあります。

川崎市の日本女子大附属は22年度374人中277人が日本女子大へ進学、割合にして74%に上ります。女子美術大付属も学校の特殊性から75%がそのまま大学へと行きます。

同じ系列校でも大妻女子大へほとんど進まない大妻高校に対し、埼玉の大妻嵐山は22年度は約47%が大津女子大へ、東京都八王子市の共立女子第二も短大を含め44%が共立女子大進学でした。

大学進学は心理的に「校内の雰囲気」に左右されるケースがほとんどです。

開成が東大合格者が多いのも学校の指導ではなく、先輩たちが「とりあえず東大」という「雰囲気」なので、受験者数も多く合格者も多いというだけです。早稲田実業も入学時から「早大進学」を前提としている「雰囲気」なので、東大に合格できるポテンシャルがある子も多いのにあえて外部受験はせず、早稲田に進む子が多いのです。

中学受験の段階で大学進学まで見据えるのは難しいのですが、そのあたりの「学校内部の雰囲気」も考慮に入れながら、親御さんは「もし入学した場合どうするか」と、ちょっと想像したうえで受験校を選択するというのも大切です。


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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