◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・中学受験は「キツい」はホント?
・トライする機会すらない高校受験
・尋ねたい「中高一貫部」の実績
・勝負は大学進学 まだ手はある
小学校3,4年生のうちから週に2,3回夜遅くまで塾に通わせ「勉強させる」中学受験に対して批判的な声は絶えません。中学受験は「親のエゴ」「小学生にはキツい」と言ってはばからない人たちも少なくありません。
確かに子供にその気がないのに「強いている」のなら、そうかもしれません。親の希望に沿わないと「見捨てられる」「相手にしてもらえない」という強迫観念を抱きながら通塾して苦しんでいる子も結構な数に上ります。
しかし、「かなりの費用がかかる」ことを除けば、中学受験の「システム」は高校受験のそれよりはるかに制約がなく、誰でも憧れの中学の試験に挑戦できます。第1志望が残念でも、第2、第3志望など自分たちで選んだ中学に進めるという「希望」があります。
それ以外にも志望校合格に向けて、「前受け」という願ってもない「実戦練習」を経験できます。いよいよ「大一番」という入試を前に、「実戦」を済ませておけば、極度の緊張から力が出せなかった、という悲劇を回避できる可能性も高くなります。
中学受験は緻密な「戦略」も必要ですが、進路を幅広く選択できる絶好の「チャンス」ともいえます。
中学受験は出願だけでも平均7校(同一校の複数回出願も1校ずつカウント)、実際に受験した回数は5回程度になります。高校受験は公立をけるにしても、私立を受けるにしても4校も5校も受験できません。それぞれ成績=内申書の得点によって、受験できる学校が事実上「制限」されるのが高校受験。行きたい学校があっても試験を受けることさえできません。
中学受験は小学6年生でさえあれば誰でも、どの学校でも受験可能ですが、高校で私立へ進もうとすると細かく内申点の基準が定められてしまいます。例えば「5段階評価で国数英の主要3教科で12点(オール4)以上、5教科で20点 (オール4) 以上」や「英数4以上、実技4教科15点(4が3つ、3は1つ)」などです。
これに出席の状況、部活動を退部せずにやり通した、英検や漢検などの取得級、委員会や顕著な実績があった課外活動で「加点」されるなど、学校にとって「模範的な生徒」は有利になります。
勉強ができても反抗的だったり、先生の「印象」が悪いと実力と成績の間に「乖離」があることもしばしば。実技教科が苦手な子は、総じて不利になりがちです。内申点が基準に達していないと、出願できず、国数英の実力があっても、入試で「逆転」できません。
出願できれば合格がほぼ保証されているとも言えますが、最後まであきらめずに勉強して追い上げた子が、偏差値や模試の判定を覆して「合格」するというシーンがまず見られません。語弊はありますが「夢のない受験」です。
中学受験も小学校からの調査書を提出させる学校もありますが、多くが「その子の在学証明のようなもの。合否にほとんど関係ない」というスタンス。大半が「入学試験での一発勝負」。厳しいといえば厳しいのですが、同一問題で競うわけですから、とても「公平」なシステムです。
最近は高校入試を廃止し、中学入試のみだけで中高の6年間を「完走」する、「純粋な」中高一貫校が増えていますが、高校入試を実施ている学校も数多く残ります。入学後は中学入学組と混ぜてクラス編成をする「混合型」と中学入学組とは混じらない「一貫型」に分類されます。
混合にするのは「6年間の半ばの地点で、緊張感なくマンネリ化しないように刺激を与える」という考えが多く、一環で通すのは「進路を含めて中学から独自の教育を進めており、交わると互いに混乱する」という考え方があります。
純粋な「一貫部」の方が優遇されているように見えますが、一部の私立は中学入試より高校入試の方が「高い偏差値」の子が入学してきます。難関校、上位校なら英語と数学で「できない」という子はほとんどいません。
それが3年後の大学入試でどうなるかというと、学校によっては中高一貫生の大学合格実績より、高校入学組のそれの方が良い結果になっていることがよく起こります。
混合クラスにしてしまうと、ほぼ「見分け」がつかなくなりますが、もし「高入組」と「一貫組」が分かれているようなら、親御さんは一貫組の大学合格実績を把握しておきます。進学面から考えて、中学で入学させて「効果」が期待できるのかどうかの指標になります。
これは学校説明会などで尋ねたい質問の1つです。別々に実績を公表しているところなら、実績の実態はともかく「信頼」できます。回答が曖昧な場合は、もう一度その学校を中学受験の対象にするかどうか、検討し直すのも選択肢にします。
中学受験にせよ、高校受験にせよ、志望校へ入学できなくても「終わり」ではありません。受験での「ゴール」は大学受験です(人生のゴールではありません)。
大学進学で納得のいく結果を出せれば「勝ち」です。難関校に行けなかったからといって、国公立や早慶、医学部、あるいは希望の大学に入れないわけではありません。逆に難関校に入学したからといって、偏差値的に見て「いい大学」に入れる保証は何もありません。
6年間あるいは3年間で大きく変わる子はたくさんいます。「化ける」とか「覚醒」といわれますが、人はそれぞれ成長段階が違います。6年間のどこかで「勉強する」ことの必要性に気づき、目覚めた子は別人のように頑張ります。最近は少なくなりましたが、中学、高校受験でうまくゆかず「悔しさ」を糧にして登っていくガッツのある子もいます。
目覚めて独自路線で走り切る子もいますが、多くの私立は目覚めた子を「アシスト」してくれる環境にあります。一般受験では補習や対策講座をするだけでなく徹底的に質問や苦手に付き合ってくれます。推薦でも論文指導や面接対策などを熱心に面倒見てくれたり、その子を合格させるために「プロジェクトチーム」まで出来上がる学校もあります。
中学受験で自分なりのデザインを描いて魅力的な数校にトライするか、高校受験まで待つか。いずれにしても私立は「頑張っている子」に手厚いです。