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塾が見た志望校選び 親御さんのホンネ


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塾長・教室長が感じた「ホンネ」
一番気にする「大学合格実績」
通学の便は勉強に影響する
・持ち偏差値は受験の「お守り」

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塾長・教室長が感じた「ホンネ」

夏休みあたりから過去問に取り組む関係上、志望校・受験校について考える時期に差し掛かってきました。

親御さんに聞くと、学校選びは「校風」や「子どもの希望」を重視する、としていますが、「ホンネ」はどうなのでしょうか。

昨秋に発売された週刊誌「サンデー毎日」(22年10月9日号)には、同誌と大学通信が首都圏にある学習塾の塾長・教室長を対象にした、中学受験に関するアンケート(有効回答数266)の結果が掲載されています。

その中の「保護者は志望校を選ぶ何を重視しているか」という質問の回答(複数回答可)の順位を見ていくと、塾の先生が感じた親御さんの「ホンネ」が垣間見えます

一番気にする「大学合格実績」

回答で一番割合が高かったのが「大学合格(進学)実績」で、85.3%。2番目の項目より20ポイント以上高い、ダントツの1位でした。

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よく中堅校(四谷大塚のAライン偏差値54~45)、一般校(同44以下)は「東大合格者が出ると、翌年の入試の志願者が増える」と中学受験の世界では「法則」のように言われますが、まさに「合格実績」を親御さんが重視している典型例です。

「合格実績」はリアルな数字で表示されるので、親御さんにとっては、学校を比べるのにとても「分かりやすい物差し」なのです。その数字の素晴らしさに「ウチの子も…」となります。

しかし、「大学合格実績」は中高一貫校の学力レベルを知る「参考」にはなりますが、あくまで「参考」です。

特に「合格実績」はのべ人数でカウントされるため、1人で3つの学部に合格すると「3人」と数えられます。「慶應20人」の合格者の内訳は、5人が4学部ずつ合格した、というのが「実態」という場合もあります。

学校選びで進学を重視するならば、「合格者数」ではなく「実進学者数」(合格者が実際どこの大学に何人進学したか)に注目します。最近は説明会資料で公表している一貫校も増えています。

逆にその辺を「曖昧」にしている学校は、合格実績を「話半分」にして参考程度としてみるほうが、入学後に「話が違う」となりません。

大学附属・系属校の場合は、毎年の推薦合格の割合や学部定員、推薦基準を調べます

学校によっては外部受験の方が多いところもあります。そういう学校は進学校と同じ観点で「実進学者数」に注目します。

通学の便は勉強に影響する

回答で2番目に多かったのが「通学の交通の便」で65.0%でした。

コロナ禍での入試となった20年、21年は「行きたい中学」以上に「通える中学」を前提にした学校選びをした受験生も多く、今まで以上に「通学の交通の便」がクローズアップされました。塾の先生もそれを感じての回答だったようです。

6年間の年月、毎日のように通う学校への所要時間、アクセス、最寄駅から徒歩なのかスクールバスなのかは、入試前に考えている以上に「重要な問題」です。

なぜなら6年間の年月の中で、勉強にも影響してくるからです。親御さんが重要視するのも納得です。

満員電車の長距離、長時間移動は子どもの体力と気力を確実に奪います。

遠い分、朝早起きして座って行ければ良いのですが、そうでないと学校に着いてもぐったり。1時間目から疲れて、眠気と相まって授業どころではありません。

帰りも部活で遅くなれば、帰宅してもぐったり。箸を持ったままこっくりこっくりの食事、風呂で爆睡と、自宅学習もままならない状態になります。

交通の便の悪さ、長時間移動だけで志望校をあきらめる必要は全くありませんが、もし入学後、あまりにも負担になるのなら、「引っ越し」という選択も考えられます。実際に入学後、転居する家庭は意外と多いです。

最寄駅から歩く距離も、スクールバスも慣れれば…と簡単に考えていると、後々「ネック」になりがちです。

天気のいい日、悪い日、暑い日、寒い日…季節、気候を想定して学校選びのチェック項目に加えます。できれば、そういう日に親御さんが通学路を「実地体験」するのがおすすめです。

持ち偏差値は受験の「お守り」

回答で3番目に多かったのが「偏差値」で59.4%でした。

現実的な問題です。偏差値を気にしない受験は実際問題として考えにくく、偏差値は志望校、受験校決定を事実上支配します

親御さんもそのあたりは熟知しています。無理かもしれないけどこの中学に入学することが夢だったのでここしか考えられない、という「特攻」系の受験は年々減少傾向で、子どもの偏差値に応じて「安全な」受験日程を組み立てる流れが最近のトレンドです。

「偏差値」があまりにも志望校とかけ離れて、目標が遠い場合は「覚悟」が必要になります。ただ、第1志望の旗は「簡単に下ろさない」ことが大切です。

第1志望は「この学校を目指して頑張ってきた」という、子どもにとっての「象徴」です。象徴を簡単に消してしまうと、子どものモチベーションは一気に下がり、持ち偏差値の割には…という受験結果になりがちです。

「偏差値はあてにならない」という言葉もよく聞きます。特に中学受験では、高校、大学受験よりも合否双方で「まさか」が起こりやすいです。それでも多くは「偏差値どおり」の結果で落ち着きます。

合格の「まさか」は、偏差値が最後に出るテストから入試まで「実力アップ」あるいは「実力定着」した結果です。

不合格の「まさか」は「細部の詰めの甘さ」と気持ちの動揺など「ちょっとしたズレ」という不運の要素もあります。

そういう不運を招かないためにも偏差値は1ポイントでも高くして、入試に臨む必要があります。偏差値の高いポイントは「お守り」として機能するからです。

「あれだけの偏差値を取ったのだから大丈夫」という自信という「お守り」です。合格祈願のお守りよりもよく効くかもしれません。

「大学合格(進学)実績」「通学の交通の便」「偏差値」 ――交通の便以外は子ども次第なので、多くの親御さんの悩みとため息は尽きないのです。


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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