親御さんの役割

中学受験 直前期「危険な親」と塾の「甘い言葉」


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12月に「ランクUP」する親
受験校変更のウラに親の「見栄

塾が受験校変更を勧めるワケ
・合格で「おしまい」ではない

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12月に「ランクUP」する親

志望校の最終決定時期になりました。親子で悩みに悩み「この日程で」と覚悟を決める家庭もあれば、「決められません。先生の方で…」と塾に決定を委ねる家庭もあります。

いずれにしても次の5項目をベースに受験プランを組み立てます。
①胸に抱いてきた第1志望は余ほどのことがない限り徹底しない
②第2志望以下は持ち偏差値+3から-10ポイントの間で「合格したら進学する」中学を3校程度選ぶ
③基本的に東京、神奈川の学校に進学する場合、埼玉、千葉の前受け校を2,3校程度受験する
④埼玉、千葉が進学の基本線なら、1月上旬の地方の中学の首都圏会場入試を前受けにする
⑤2月の入試でまさかの不合格が続いた場合、2月4日以降に受験する可能性の学校の目星をつけておく

学校説明会や文化祭、オープンスクールを経て、志望校、受験校は固まってい場合が大多数ですが、中には模試の成績次第で驚くくらい受験校をガラリと変更する親御さんがいます。

子どもの成績が上り調子の親御さんの中には12月に入って「強気」に、攻めの姿勢に転じる場合があります。具体的に言うと「1ポイントでも高い偏差値の学校」狙いの受験プランです。

あり得ない、と思うかもしれませんが、現実に受験直前になって成績が上がってくると受験校のランクアップを申し出る親御さんは割と多いです。今まで「ここが第1志望、あそこが第2志望」と決めていたのもどこへやら、その親御さんの口から初めて聞くような校名が出てきます。

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受験校変更のウラに親の「見栄」

このタイプの親御さんの特徴は「偏差値の高い学校=良い学校」という分かりやすい図式が頭の中にあります。

中学受験について、偏差値よりも各中学の「校風」が我が子に合うかどうかを第一に考えて学校選びを進めてきた親御さんは、足繫く学校説明会に参加し、教職員に質問し、外部に開放されている学校行事に参加するなどして、様々な角度から「研究」を重ねて受験校を吟味します。

一方で偏差値や大学合格実績、「塾いらず、面倒見の良さ」など数字や「宣伝文句」を中心に学校を見てきた親御さんは、学校研究自体は浅い傾向で、分かりやすく言えば中身より「偏差値の高さ」「知名度」「人気」で子どもの志望校を選ぶ方向性にあります。

子どもが考える志望校とのギャップがあるのもこのタイプの親御さん。双方の折り合いをつけるのが難しく、受験校決定までには時間がかかることもあります。

偏差値や知名度で受験校を選びがちな親御さんは、その気持ちの奥底に周囲に対する「見栄」の存在があることも否定できません。

幼稚な気もしますが、中学受験の盛んな地域では、子どもがどこの中学へ行ったかを競うような風潮のがあるところも散見されます。御三家や難関校へ子どもが通学している親御さんは「デキる親」で、偏差値がそれほど高くない学校へ通学している子の親御さんは「負け組」のように見られていると感じてしまうようです。

そんなことは全くないのですが、母親同士の「競い心(きそいごころ)」を捨てきれない人も少なくありません。我が子を1ランクでも偏差値が高い学校へという「見栄の張り合い」は、言葉に出さずとも心のどこかにあって、それを気にするあまり受験校選びが、主役である子どもの気持ちが「置いてけぼり」になってしまうのです。

塾が受験校変更を勧めるワケ

しかし、直前期に来ての志望校・受験校の強気な方向転換は、親御さんの独断んであることは少なく、必ずと言っていいほど「後押し」があります。

親御さんが「少しでも偏差値の高い学校へ」と前のめりになる背景には、通っている進学塾が「あおっている」ケースも少なくありません

「●●くんの成績が上がってきているので、この勢いかあれば開成だって夢じゃないです」「現状では女子学院はやや厳しいですが、成績が伸びてきているのでトライする価値は十分あります」

塾側との受験校決定面談の中で、御三家や難関校受験を勧められることがあります。親御さんとしては考えてもみなかった名門校の名前が塾の先生から飛び出し、しかも「合格も夢ではない」などと言われると、つい「その気」になってしまいます。

志望校も志望動機もしっかり決まっていて、良よく練られた受験プランを立てている家庭にはこの手の提案はしてきません。学校見学や研究もそれほどしておらず、中学受験について「勉強不足」の偏差値や合格判定、点数のみを気にしている親御さんに塾側はアプローチしてきます。塾側の「提案」に乗ってきやすいからです。

塾としては、生徒が受験で「全滅」さえしなければOKと考えており、「安全校」が確保されているのなら、少しでも可能性のある生徒に「背伸び」の受験を勧めることがしばしばあります。言葉は悪いのですが、極端な話「ダメでもともと、合格ならラッキー」くらいにしか考えていない塾も少なくありません。

答えは簡単、塾は「御三家や難関人気校の合格実績が欲しい」からです。

2月に新規入塾生募集の広告を出す際に赤く大きな文字で表示される学校の合格者数で入塾希望は大きく変わります。加えて校舎別に合格実績を出す塾では、御三家や人気校の合格実績は各教室のアピール材料になり、地域の他のライバル塾と天秤にかけられた場合、選んでもらえる確率が高くなります。それほど「合格実績」の数字には威力があります。

塾の内部事情として、御三家や有名校の各教室に課せられた「ノルマ」があるけケースもあります。それが御三家●人合格を出すとか、人気有名校●人合格の場合だったり、新規入塾者数のノルマだったり、タイプはさまざまです。

このノルマが先生の給与を決める査定にかかわったり、昇格や異動の対象の資料になったりと塾講師の「生活」に影響を与えます。塾が難関校の受験トライを応援するのは、生徒のためと同時に塾の「目標達成」のためという側面も多分にあるのです。

合格で「おしまい」ではない

入試の得点と入学後の成績は「ほとんど関係ない」というのが多くの中学校の共通の答えです。ですが、持ち偏差値として余裕で合格した生徒と、ギリギリ合格、一度もその学校の80%偏差値に達しないで合格した生徒の入学後の学力差ははっきりとあるようです。

入学後に英語や算数とは違う数学によって、学力の差を縮める生徒もいますが、ギリギリ合格の生徒が入学に浮かれて中学1,2年を過ごすと、学校内での成績が中下位をさまようことが多いようです。

特に難関校では一度成績が落ち込んだ子の「下剋上」は早急に手を打たない限り、そのまま低迷=深海魚になるケースは珍しくないです。

「入学後に頑張ればなんとかなる」と考える親御さんもいると思いますが、難関校に合格した子の中でかき分けて這い上がろうとするのは結構大変です。実力がある子同士の学力の差は、そう簡単にはひっくり返りません。中学受験で偏差値を上げるよりキツいかもしれません。

入学後のことを考えると、奇跡の逆転合格は喜んでばかりはいられません。

偏差値が1ポイントでも高いところへ、と願う親御さんの気持ちもわかりますが、中学受験は「合格しておしまい」という映画のハッピーエンドとは違い、そこからが「本番」。子どもの「ストーリー」は続くということを親御さんはしっかり考えなければなりません。


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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