◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・開成、灘を大きく上回る37.6%
・なぜ聖光学院は伸びたのか
・評価すべき栄光学園の「安定感」
・創立者の影響?浅野文Ⅱ合格多数
3月10日の東大合格発表で開成の43年連続合格者日本一以上に「衝撃」だったのが、神奈川・聖光学院が初めて合格者100人(現役86人)に到達したことです。
18年連続して東大合格者全国ベスト10入りしており、19年に93人、22年に91人の合格者を輩出しており「大台突破」間近とみられていましたが「ついに」といった感じでした。
神奈川県の高校で東大合格者100人超は1970年以降で見ると、90年代に3回記録した桐蔭学園以来2校目の快挙です。
3桁合格者もすごいのですが、もう1つ驚嘆すべきは、卒業生数に対する現役の合格率です。229人卒業で86人が東大現役合格で、その割合は37.6%に達しました。
まだ合格者数を発表していない筑波大附属駒場(筑駒)の割合次第ですが、16日時点で開成の29.1%、灘(兵庫)の32.6%を大きく上回っています。
東大合格者数は翌年の中学入試の動向に大きく影響します。聖光学院の2月2日の1回目入試で実質倍率は24年で3.1倍でしたが、25年度は3倍台半ばくらいまで上昇する可能性があります。
1954年(昭和29年)創立以来、進学校として知られていた私立でしたが、男子校にしては厳しめの校則もあって人気はいまひとつ。自由な雰囲気の栄光学園に東大合格実績も後塵を拝していました。
OBである現校長の工藤誠一氏(卒業は明治大学)が現職に就任した04年当時、東大合格者は26人。移転話などもありながら、フットワークの軽い工藤校長が先頭に立って生徒と教職員の垣根を取り払う学校改革やカリキュラム再編を進めた結果、進学実績は急上昇しました。
10年後の2014年には倍増以上の57人が東大に合格。19年には93人に達し、24年現在4年連続して東大合格者数ベスト5入りを果たしており、今年は開成に次ぐ2位。筑駒の結果が出てもベスト3入りは確実視されています。
入学後の「塾いらず」を「宣伝」する中高一貫校は数えきれないほどありますが、聖光学院は本当に塾いらずの学校として有名です。学習が「校内完結」できます。
学校独自のテキスト、ブリントを授業で使い、内容も秀逸。予備校の講師が参考にしたくてあの手この手で取り寄せようとするくらいです。
放課後の学校内での質問、自習も21時近くまで自由にできる環境にあります。職員室も入りやすく、先生もとことん生徒に付き合います。
生徒間も互いをライバルというより「同志」とみており。受験は「団体戦」といった雰囲気。分からないところを教え合い、高め合います。
もともとレベルの高い子が入学してきますが、さらに磨きがかかるのが聖光の凄いところ。開成の連続1位を阻止する可能性を多分秘めた24年度の「大台突破」です。
神奈川で聖光学院とともに「二光」とよばれる栄光学園の24年度東大合格者数は47人(うち現役37人)で前年比1人増でした。
かつては聖光学院よりも東大合格者数が多く、コンスタントに70人前後の合格者を出していましたが、2012年を最後に数の上では聖光学院を上回った年はありません。
だからといってレベルが下がったというわけではありません。東大合格者数で例年50人前後合格者を出す高校の中で、卒業生が200人以下の学校は、筑駒と栄光学園の2校のみです。
コンスタントに50人前後の合格者を出している「安定感」はむしろ十分評価に値します。
東京ドーム2.4個分あるという敷地面積からして、入学定員を増やすことは十分可能です。そうすれば東大合格者数も…という皮算用は成り立ちますが、もともと勉強だけでなく、生活全般も細やかに見るためにはと、少人数でスタートした学校。そのスタイルを崩さないのが栄光の良さでもあります。
栄光、聖光ともカトリック系、長い坂道を歩いて学校へたどり着くという共通点があるのも面白いところです。登校時の遅刻には特に厳しい栄光ですが、カトリックの割には自由な学校生活が送れるのも聖光学院と似ています。
聖光、栄光とともに「神奈川男子御三家」に数えられるのが横浜市鶴見区にある浅野です。24年度の東大合格者数は45人(うち現役37人)、前年比で2人増でした。
「セメント王」と呼ばれ、京浜工業地帯の礎を築いた実業家、学校の創立者でもある浅野総一郎氏の教えにならってというわけではないと思いますが、将来経済学部系に進む可能性が高い文科Ⅱ類の合格者が17人と多いのが特徴の1つ。開成、聖光学院の「3桁合格」校2校の16人を上回っています。
2021年に48人合格で、栄光学園を上回ったのが話題になりましたが、以後も40人前後で安定しています。学校としては50人の大台が目標ですが、時間の問題という雰囲気があり、近いうちに手が届きそうです。
入試日程が聖光、栄光の翌日の2月3日とあって、両校の受験生が集結する傾向にありますが、最近は東京からの受験、入学も増えており「人気校」という立ち位置になっています。
数年前まで 聖光、栄光 が残念だった場合の進学先、という感覚がぬぐえなかったのですが、浅野は入学すると「生徒、保護者ともファンになる」といいます。
兄弟がいる場合は弟は迷わず浅野へ、というケースも多く、口コミなどの評判を聞いて志願する家庭も年々増えています。