◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・｢化粧｣をする親御さんの体験記
・｢隠し味｣公開はレアケース
・｢不合格体験記｣は示唆に富むが…
・受験は｢オリジナルストーリー｣
各塾発表の合格実績もまとまり、大手進学塾を中心に「入試報告会」も盛んに開催されています。
その際に冊子として配布されたり、ホームページ上に掲載されるのが「合格体験記」です。
今年度の「二月の勝者」を中心に、合格までの道のりをつづった各家庭の中学受験の「オリジナルストーリー」がいくつも掲載されます。
合格体験記は子どもが書いたものと、親御さんのそれとセットで掲載されていたり、別の冊子になっているものなどがあります。
親御さんによるものは、塾への感謝の気持ち、親としての思い、親から見た幼くも精いっぱい頑張った我が子の奮闘ぶりを中心に回想しています。
一方、子どもの方はというと、時々本音が垣間見えて、親御さんのやや「お化粧」した文章より、臨場感が伝わってきます。
結構本音で書いている親御さんもいますが、 「お化粧」の濃さが目立つ内容の１つに「塾以外での勉強をどう進めていたか」という部分があります。
結論から言うと、塾へのささやかな恩返しで書く合格体験記では、あからさまに「合格の舞台裏」を見せないものです。
難関校に合格した家庭の体験記を読むと「勉強は塾にお任せして、親は健康と睡眠に気を配りました」「塾の先生とテキストを全面的に信頼して、親は勉強に口出ししませんでした」というような言葉が割と多く見られます。
難関校に合格した子の中には、本当に「勉強は塾にお任せ」「塾の教材一本で進めた」という子も一定数います。
一方で家では腕に覚えのある保護者の「親塾」のサポートがあったり、家庭教師、個別指導塾、別の進学塾などのアシストを受けたりする子は結構存在します。
中堅校、一般校でも状況は同じ。もしかしたら、難関校を目指す子より、ボリュームゾーンの中堅・一般校志望の子たちの方が手厚くフォローされて合格に至っているケースが少なくありません。
その合格の「隠し味」を合格体験記で公開するのは「レアケース」です。
合格をつかみ取るまでの「道のり」を各家庭とも、他人にはあまり明かしたくない「事情」をいくつか抱えています。
合格、そして入学まで「紆余曲折」、「いろいろある」のです。
すべての合格体験記に「裏がある」というわけではありませが、「包み隠さず」という体験記はそう多くはないです。
何か勉強の手掛かりにしたい、志望校合格に参考になることはないかと、あらゆる塾の体験記をむさぼるように読む親御さんは多いです。
しかし、合格体験記は参考になるとはいえ、自分たちにはピタリとあてはまるわけではありません。
勉強環境も違えば、現状の成績や勉強の進み具合、子どもの性格も違うからです。
逆に上位志望校の不合格、受験失敗には「共通点」が多いのが特徴です。
野球の監督たちがよく使う言葉「勝ちに不思議あり 負けに不思議なし」（江戸時代の九州・平戸藩第９代藩主、松浦清の言葉）の通り、合格には「よく分からないけど合格」というのはありますが、不合格には当事者が気付かなくてもちゃんと理由があるものです。
その観点から、なぜ落ちたのかを赤裸々に描いた「不合格体験記」の方が失敗した要素が共通しているものが多く、示唆に富んでいるのではないかと個人的には思います。
そうは思いますが、華やかな合格体験記には載らない、おびただしい数の不合格、夢破れた多くの受験生という「現実」が、「公式」に出てくることはまずありません。
「合格体験記」は塾生を集める、その気にさせるための強力な「宣材」(宣伝材料)です。
最悪全落ちした子もいる、実際には第1志望に3割弱しか合格しない、偏差値は届いていたはずなのに落ちたなどの「事実」よりも未来に明るい希望を持てる「いい話」でないと集客はできません。
どこまでいっても受験は各家庭、受験生の「オリジナルストーリー」。2つとして同じものはありません。
読み物として、参考程度の付き合い方なら構いませんが、度を越して気持ちを左右されないことが大切です。