◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・開成は「みんな東大」ではない
・模試より正確な開成の「物差し」
・馬力あり 短期間で結果を出す
・卒業後「行方不明」も…
3月10日に25年度の東大一般入試の合格発表がありました。
まだ、集計が出ていない学校もありますが、注目の「高校別合格者ランキング」では、東京の開成高校が149人合格(現役107人、既卒42人)で1981年(昭和56年)から44年連続トップの座を守りました。
昨年も149人ですから「横ばい」(現役は昨年の方が10人多い)で、安定した強さを発揮したといえます。
開成の卒業生は約400人で、卒業生に対する東大の現役合格率は25年度27%超でした。
「みんな東大」のイメージがありますが、実はそうでもありません。
例年4割を超える筑波大付属駒場、24年度100人に続き25年度も95人合格の聖光学院(神奈川)の約37%よりも割合としては低くなっています。
開成は文系、理系のクラス分けもなく、学校も先生も「東大を目指せ!」とは一切言いません。
もちろん「先輩たちの姿」に影響を受けますが、基本的にはそれぞれの意志で進路選択をしており、実際東大に合格しそうなでも国公立大医学部に進んだり、京大や東工大へという子もいます。
東大を受験するか、他大学へ、あるいは他の国公立医学部受験にするか、開成生の判断基準の「物差し」が高校3年で年4回行われる「実力テスト」(通称・実テ)です。
国数英の主要科目に文系も理科を、理系も社会を受け、文系、理系が入り混じって順位が付きます。
総合点の上位100人を「百傑」と呼び、逆に下位100人を「裏百」と呼ぶなど、開成内部ではかなり注目の勉強イベントです。
なぜ注目を集めるかというと、この成績で「東大合格」を占えるからです。
開成生の実テの存在感は「駿台や河合塾の東大模試の判定よりも東大の合否判定が当たる」という言葉で分かります。
実テでAとかBとか、東大の合格可能性判定が出るわけではないのですが「百傑の常連なら東大は鉄板」「文系は百傑以内、理系は少々はみ出しても受かる」「裏百でも時々奇跡が起こる」など、さまざまな伝説があり、これが概ね的中するといいます。
東大の合格者数から見ると「開成=猛勉強」のイメージを抱くかもしれませんが、多くの生徒が「そろそろ…」と重い腰を上げるのは、高校3年の6月くらいからです。
開成の高3生は1年かけて準備する5月の「運動会」終わると、それぞれが「今後」について真剣に考え始めます。
それまで「鉄緑会」などに通っていても、ただ行っているだけだったのが、授業態度が変わってくる「シフトチェンジ」もよく見られます。
開成だけではありませんが、中高一貫校の難関校に籍を置く子、特に男子は定期試験を短期集中で乗り切る「馬力」と「集中力」のある子がかなりいます。
いわゆる「一夜漬け」で高2までの5年間をこの調子でやってきた子です。
善し悪しは別として、普段は部活や課外活動で忙しく、コンスタントに勉強している子が少ないのが男子難関校の「あるある」です。
「勉強馬力」「集中力」があるからこそ、夏からの半年という短期間で東大をはじめとする志望校の入試で「勝負になる」学力が身につきます。
開成出身者の中には秋の東大模試でA判定は少数派。B、C判定という合否どちらに転んでもという生徒が多いです。
それを合格に持って行く姿はまさに「勉強馬力」を感じます。
開成既卒組の東大合格者は毎年40人前後です。
浪人して捲土重来を期した男子だけでなく、早慶などに進学しつつ再受験を決意した「仮面浪人」もちらほらいます。
実際、何人くらいが東大を再チャレンジしているかは分かりませんが、高校時代に「裏百」だった子でも合格する子は結構います。
本来は「勉強馬力」のある子が、エンジンを「整備」して挑めば合格は可能です。
一方で同学年の子でも「あいつ、どうした?」状態の子もいて、進路も含め「行方不明」が開成でも毎年数十人います。
浪人して大学に合格しながら、学校に報告しないこともあります。
何も卑下することはないのですが、「開成」という看板があるがゆえに、合格、進学する学校を報告するのはちよっと…となってしまうのかもしれません。
中学受験で「成功」しても、そのまま順調というわけではありません。
逆もしかりで、中学入学でリスタートです。
次のステージはまた1から。
長い6年間の道のりの「歩き方」で出口は大きく変わってきます。