◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・苦手克服の独自メニューは無理!?
・弱点・課題を絞り込む方針で
・｢積み残し｣なしで進むメリット
・短期間の詰め込みでは…
中学受験に挑む小学6年生にとって、小学校生活最後の夏休みは、勝負どころといっても過言ではありません。
親御さんの中には「この夏こそ、苦手を克服させたい」「得点力を一気に引き上げたい」と、塾の勉強とは別に「独自メニュー」を計画しているケースも見られます。
しかし、ここで冷静に考えておきたいのが「本当にそのメニューをこなせる余裕があるのか？」という現実です。
進学塾に通っている場合、すでに夏期講習や特訓授業でスケジュールは「満タン」のはずです。
塾から夏のカリキュラムが配布された段階で、「あれ、こんなに詰まってるの？」「うちで考えていた追加の勉強なんて、とても無理だ」と気づいた親御さんも多いのではないでしょうか。
帰宅後には宿題や復習も待っています。
塾によっては合宿や志望校別対策講座が組まれることもあり、実質的に「自由に使える時間」は「すき間時間を見つけて」というのが実際のところです。
6年生の夏休みは「独自プログラムで追い込む」余地が実は極めて少ないのです。
6年生の親御さんには「そんなことを今さら言われても…」と困惑するかもしれませんが、4年生、5年生の親御さんに知っておいてほしいのは「6年の夏に“あれもこれも”は、まずできない」という事実です。
6年の夏を迎えるまでに、ある程度の苦手分野を整理・克服しておくことが極めて重要です。
そのうえで「あとひと押しで得点力につながる」と判断できる弱点・課題を1つか2つに絞り込んで、そこを集中的に攻略するのが6年夏の賢い利用法といえます。
「あれもこれも」と多方面に手を出すと、結局どれ1つとして満足に克服したものがなく、自らの計画で「自爆」することになります。
加えて親御さんが心しておきたいのが、「独自に立てた弱点克服プランは、子ども一人では完遂できない」ということです。
計画を立てることはできても、実行し、振り返り、軌道修正するには、大人の視点とサポートが必要不可欠です。
それだけの時間と伴走する労力が親御さんにも求められます。
家庭教師、個別指導にお願いするという手もありますが、それなりの軍資金とこちらも膨大な時間が必要となります。
4、5年生は「6年の夏に苦手克服は難しい」ということを頭に置いて、少しでも余裕のあるこの夏に弱点補強を進める勉強を、と思います。
中学受験における「必勝パターン」があるとすれば、その1つが「先行逃げ切り型」です。
先取学習のことではありません。
4年生や5年生の段階で「分からない」「苦手」という芽を見つけたら、そのままにせず、すぐに手を打ちます。
そうやって「積み残し」がない、少ないまま進み、新しい単元を吸収するスペースをいつでも空けておきます。
この姿勢が、後々の大きな差につながります。
6年生の夏は「すべてをこなす夏」ではありません。
もう一度基礎、基本を確認し、ほころびがあるところは繕い、秋以降の過去問を含めた「志望校に特化した学習」への助走期間と位置づけます。
たまに塾のキャッチコピーで「夏で一発逆転！」などという文句を見かけます。
しかし、現実の中学受験はそんなに甘くはありません。
一夜漬けや短期間の詰め込みで、なんとかなるほど中学受験は簡単なものではありません。
だからこそ、4・5年生のうちに苦手を極力少なくし、学習の土台を整えておくことが、最も着実な「合格戦略」になります。
「あれもこれも」は、本当に何も得られぬまま、心身だけが疲弊します。
6年の夏は「やることを絞る勇気」こそが、合格への鍵になるのです。