不合格体験記

【不合格体験記】過去問 カンニングだった

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麻布、海城不合格「やっぱりな」 
ユウヤくんがカンニングに走った理由 
恐ろしい「4文字の誘惑」 
“ミスキャスト”だった家庭教師 
・姉は言った「絶対に言っちゃダメだよ」
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★麻布、海城不合格「やっぱりな」 
 「やっぱりな」。合格発表を確認したユウヤくんは驚きもせず、結果が分かっていたかのごとく、入試結果を誰よりも冷静に受け止めていました。第1志望の麻布は不合格。2月3日の海城の第2回入試も合格点には達しませんでした。 

 「どうして?信じられない。あんなに過去問やって合格点を越えていたじゃない。どうして…」。動揺が激しいお母さんは善後策を考える精神的余裕はなく、急に泣き出したり、黙りこくったり…。時には大声を出して「アンタが入試を舐めているからこういうことになるの!」とユウヤくんをなじり、しばらくすると「きっと採点ミスよ。あれだけ過去問できていたのに落ちるわけがない。ユウヤは落とされたのよ。採点者がユウヤの解答を気に入らなかったのよ」と独り言を言う始末。収拾がつきませんでした。
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★ユウヤくんがカンニングに走った理由 
 一番悔しがるはずのユウヤくんは、情緒不安定の母親に申し訳ないという気持ちもありましたが、こうなることは覚悟していました。「過去問の解答、やる前にざっと見て大体を頭に入れていました。カンニングです。僕の実力だと、国語とかのあんな難しい記述問題できません。でも、できないとお母さんの機嫌が悪いし、これをやったらいいのかしら、あれをやったらとうるさかった。それが嫌だった」。 

 月日が経って「あの頃」を振り返るユウヤくんは、他人事のように話してくれました。お年玉を使って、麻布と海城の赤本を自ら購入。 家庭の予定表に書いてある「25日、麻布18年過去問」とかのスケジュールに合わせて“予習”。暗記までしてしまうとバレるので、目を通して「だいたいこんな感じ」という解答を書いて帳尻を合わせていた、といいます。 

 4年生で入塾し成績はトップクラス。親御さんの期待は高まりました。麻布の文化祭へ遊びに行き、自由な雰囲気が気に入ったユウヤくんは「この中学入りたい」とお母さんに訴えました。兄夫婦の子どもが神奈川の難関私立に合格した矢先、“対抗心”もあったことで「麻布なら…」とお母さんも乗り気になり、以来麻布合格が親子の目標となりました。 

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 しかし、成績は5年生後半から下降線。それでもお母さんは「麻布合格」の目標を下ろしません。「ユウヤはできる子。中学受験は過去問対策さえしっかりすれば大丈夫、って合格体験記にも書いてある。勝負は過去問対策よ」というのがお母さんの持論でした。 
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★恐ろしい「4文字の誘惑」 
 ユウヤくんの過去問解答カンニングが容易になってしまったのには2つの要因がありました。1つは通っていた大手進学塾を夏休み後に退塾してしまったこと。塾の保護者面接で「麻布、海城を狙うのは現状しんどい。志望校特訓に通っても厳しい。チャレンジは良いが、もう少しハードルを下げた方がいい」という塾側の反応にお母さんは「それを何とかしてくれるのが塾でしょ」と反発。たまたま手にした家庭教師センターの「過去問対策を完璧にし難関校逆転合格」の文言に魅力を感じ、週2回の契約で依頼しました。 

 日程的にも金銭的にも余裕がなくなることから、夏期講習前にお母さんが「家庭教師一本」に舵を切りました。普段からユウヤくんのことを把握している塾と決別したことはかなりの痛手でした。過去問の出来と普段の実力の乖離に気が付き、出来のいい過去問に「もしかしてカンニング?」と塾の先生だったら容易に見抜いたと考えられます。「逆転合格」の「4文字の誘惑」は恐ろしいです。 

★ “ミスキャスト”だった家庭教師 
 加えてこの家庭教師が“ミスキャスト”でした。「プロの家庭教師」と名乗る社会人でしたが、大学は慶應卒も中学受験経験はなし。過去問もあらかじめユウヤくんが解いたものを模範解答を見ながら解説していくというスタイルで、事実上、有効な対策の時間にはなっていませんでした。 

 中学受験生をこれまで数人見てきた経験はあったようですが、麻生や海城のようなレベルではなく、厳しい受験ではなかったようです。麻布模試の結果が悪くても「模試は模試ですから。過去問をしっかりやれば大丈夫」という言葉に、初の中学受験を経験するお母さんも納得してしまいました。 

 通塾し、丁寧な学習を積み重ね、客観的なデータで受験戦略を組み立てていれば、最後の瞬間まで実力が伸びるとされる中学受験では「逆転合格」も可能だったかもしれません。家庭教師が短期間で有効な対策をしていれば、いい勝負になったかもはれません。しかし、「過去問対策さえしっかりすれば」という中学受験界で根強く信奉されている「金科玉条」に親御さんが固執するあまり、冷静な判断ができなかったのは致命的でした。 

★姉は言った「絶対に言っちゃダメだよ」 
 ユウやくん現在、都内の中高一貫校へ通っています。麻布、海城と連敗後、「保険」で出願していた中学校に合格。精神的に参っていた母親と九州に単身赴任で戻ってこられなかった父親に代わり、大学生の姉が当日の付き添いと入学手続きを父親の指示を仰ぎながら母親代行を務めました。 

 ユウヤくん、カンニングしていたことはお母さんに話したの?「とてもじゃないけど言えません。お父さんにも言っていません。お姉ちゃんにだけ言いました。“絶対に言っちゃダメだよ”と姉は言い、それからその話はしていません」。お母さんは時々思い出したように「どうして落ちたのかな…」と口に出しますが、ユウヤくんは何も答えずにいるといいます。 

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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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池ノ内 潤

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