中学受験 合格体験記はこう読む(2)

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・親御さんの“お化粧”
・途中参戦組は“種明かし”をしない
・「すべて包み隠さず」の体験記は希少
・合格より示唆に富む「不合格」体験記
・合格、不合格体験記どちらも「参考文献」

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★親御さんの“お化粧”
 合格体験記は子どもが書いたものと、親御さんのそれとセットで掲載されていたり、別の冊子になっているものなどがあります。親御さんによるものは、塾への感謝の気持ち、親としての思い、親から見た幼くも精いっぱい頑張った我が子の奮闘ぶりを中心につづっています。一方、子どもの方はというと、時々本音が垣間見えて、親御さんのやや“お化粧”した文章より、臨場感が伝わってきます。

 結構本音で書いている親御さんもいますが、 “お化粧”の濃さが目立つ内容の1つに、塾以外での勉強をどう進めていたかというところに表れます。本当はここが知りたいところですが、どこまで書いてくれているか、想像を膨らませながら読みます。

親御さんの合格体験記は「お化粧」する

★途中参戦組は“種明かし”をしない
 「5年生夏休みからの通塾で●●中学に合格」「6年の1年間だけで勝負した」などの手記も目に入ります。いわゆる途中参戦組です。素晴らしいです。コツコツとやってきた子より、搭載している勉強のエンジンが違い、アクセルを踏み込むと加速がもの凄いのかもしれません。しかし、これもあまり真に受けない方が…と思います。

 通塾は5年夏や6年からかもしれませんが、その前に通信教育をやっていたり、「親塾」によってベースが敷かれている場合が多いです。合格体験記を書く親御さんはそこまで“種明かし”をするほど“正直者”ではありません。

 踏み込んで尋ねてみれば答えてくれるかもしれませんが、それだけお金をかけて、そこまでして、と思われるのがちょっと…という心理が働くのでしょう(少し自意識過剰な気もしますが…)。赤裸々に舞台裏を口にしない傾向が合格体験記にはあります。

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合格の“舞台裏”はなかなか明かされない

★「すべて包み隠さず」の体験記は希少
 難関校に合格した多くの家庭が家では手厚い「親塾」のサポートがあったり、プロ家庭教師のアシストを受けたりするのもレアケースではありません。中堅校、一般校でも状況は同じで、何かしらのフォローがあって合格に至っているケースはしばしばみられます。

 それを合格体験記に書く人はまれです。合格をつかみ取るまでは各家庭とも、他人にはあまり明かしたくないこともいくつかあるものです。合格、そして入学までの紆余曲折、いろいろあるのです。すべての受験生がそうだというわけではありませが、「すべて包み隠さず」という体験記はそう多くはないでしょう。

全て包み隠さずは希少

★「合格」より「不合格」体験記の方が示唆に富む
 合格体験記を読んでいると、十人十色のストーリーがあってどれも興味深いものばかりです。何か勉強の手掛かりにしたい、志望校合格に参考になることはないかと、あらゆる塾の体験記をむさぼるように読む親御さんは相当数います。しかし、その体験は参考になるとはいえ、自分たちにはピタリとあてはまるわけではありません。勉強環境も違えば、現状での進捗度も子どもの性格も違います。

 野球の監督たちがよく使う言葉に「勝ちに不思議あり 負けに不思議なし」(正確には江戸時代の九州・平戸藩第9代藩主、松浦清の言葉)の通り、合格には「よく分からないけど合格」というのはありますが、不合格には当事者が気付かなくてもちゃんと理由があるものです。その観点から個人的には「不合格体験記」の方が失敗した要素が共通しているものが多く、示唆に富んでいると感じています。そんなものを出す進学塾があるとは思えませんが、これこそ受験を控える家庭が心に留めておく受験心得かもしれません。

不合格から学べることは成功よりもある

★合格、不合格体験記どちらも「参考文献」
 テレビの「しくじり先生」ではありませんが、人は失敗からの方が学ぶことは多いものです。ネットの掲示板サイトなどにある、不合格の告白は玉石混交で、どこまで本当なのか、話を盛っているのか、判断がつかないものもありますが、他山の石として合格体験記以上に参考になるのではないかと思います。

 ただ、それに引っ張られないように。合格体験記と同様、少し距離を置いて参考文献として冷静に眺めてください。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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