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・「こんな学校、クズだ」 と思う親
・十分上位 偏差値54は上位35%
・開成入試にみる基本問題の大切さ
入試での「難問」の取り扱い方
・父の「成功体験」は中受をミスリードする

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「こんな学校、クズだ」 と思う親

 11月13日放映の日本テレビ系ドラマ「二月の勝者―絶対合格の教室―」の第5話は、開成合格を目指す、桜花ゼミナールΩクラスのトップ島津順(ジャニーズJr.の羽村仁成)の一家をめぐる話でした。

 順の勉強を独自の方法で徹底管理、自分が作成したオリジナル教材を優先してやらせようとする「パパ」(金子貴俊)。息子に与えた偏差値「54」の学校の算数の入試問題で半分も正解しなかったことにぶち切れた挙句、問題集を屑籠に捨ててこう言い放ちました。「こんな学校、クズだ」

 開成合格に執念を燃やす父親の目は殺気立ち、おびえる息子と母親(遠藤久美子)。パパの怒鳴り声、物音ひとつで肩をすくめる2人の姿は、ドラマと分かっていても痛々しいものでした。

十分上位 偏差値54は上位35%

 どの塾の偏差値か、首都圏模試の偏差値帯なのかによっても違いますが、偏差値「54」の中学校は決して「クズ」などではありません。クズどころか、中学受験では多くの受験生が集まる「人気校」の名前が各偏差値ランキングには並びます。

 中学受験でも偏差値54は上位35%の位置。おそらく高校受験ができる学校なら、偏差値65~70レベルの学校になります。

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 しかし、開成合格を目指す島津パパ、順から見れば、「(中学受験の)偏差値60以下の学校なんて、学校じゃねぇよ。そんなとこ目指してるなんて、マジごみだし」という感覚。ドラマでなくても偏差値で学校の「価値」を決めつけ、自分の成績より偏差値にして10も下の学校を志望校にしている子を露骨に馬鹿にする親や子どもは実際に存在します。

 そういう受験生、親は勉強をしていても難問ばかりに取り組み、基礎問題など見向きもせず、ひたすら応用問題や正答率にして20%を切るような問題ばかりに注目する傾向にあります。それこそ偏差値54の学校の問題は「できて当たり前」というスタンスです。島津パパが基礎的な内容を繰り返してやる桜花の授業を批判したのも、その考え方から来ていると思われます。

開成入試にみる基本問題の大切さ

 そのスタンスが度を超すと入試本番で「こんなはずでは」の不幸を招きます。算数に自信のある子によくみられるのですが、難しい問題に取り組むことは真剣なのに、基本問題や易しい問題を雑に扱うのです。そんな「クズ」のような問題という扱いです。

 しかし、実際に難関校に合格している子は難問ができた、というより「落としてはならない基本問題」の正解を丁寧に積み重ねた子なのです。

 2018年、開成で出題された算数の問題は「開成にしてはあまりにも易しすぎる」と中学受験の世界で騒然とした入試問題でした。

 基本中の基本、中堅校レベルの子でも多くが正解できるような問題で「これでは差が付かない。みんな満点だ。何でこんな問題を出したんだ。開成合格に向かって努力して難しい問題に取り組んできた生徒の気持ちを踏みにじるものだ」と激怒する塾講師もいたくらい、衝撃の易しさでした。

 しかし、結果は85点満点で合格者平均73.9点。受験者平均が62.0ですから約12点差がつきました。開成受験生の算数のレベルで考えれば、全員満点、あるいはかなりの高得点で差が付かないのではと懸念されましたが、実際には受験生全体で、平均4,5問間違っていますし、例年と大きく変わりない点差がついたのです。

 開成受験生で算数ができない子はほぼいません。結果から見て「基本問題をどれだけ落としたか」という差で算数は勝負が決まったのです。

入試での「難問」の取り扱い方

 中学受験でも大学受験でも、難関校の入試問題は難しくて、中堅校一般校は易しいというイメージが一般的にはあるかと思います。

 正確には難関校の問題はよく練られた、解法暗記ではできない「本当に理解てしているかどうか」「原理原則を踏まえているか」という「良問」であって「難問」ではありません。むしろ中堅校の方が「これは難しい」という問題が混じっていたりします。問題の難易度は学校の偏差値だけで判断できないのです。

 算数や理科で合格者平均点が満点の半分程度や5割を切るような問題はよく出す中学校は、そこに惑わされず基本問題だけをきっちり正解することだけに集中した方が得策です。

 一方、難関校で合格者平均が高い場合は、リズムよく解くとともに、1つ1つ的確に正解を積み重ねるという「地に足の着いた」姿勢が肝要です。

 決して難問を強引に解こうとしてハマらないように。難問に正解しても基本問題でも配点は大きく変わりません。リズムを崩さぬよう、解法が短時間で浮かばなければ迷わず「後回し」です。

父の「成功体験」は中受をミスリードする

 父親が中学受験を仕切ると中学受験はあまりいい結果とならない確率が高くなります。父親の受験での成功体験がベースにあるからです。それは主に大学受験の成功体験です。周囲のサポートが必要な12歳の中学受験と自分の考え、判断で進める大学受験とは根本的に違うものです。

 加えて親子であっても勉強のスタイル、理解の仕方などは違います。「父親の勉強法のコピー」では子どもには響かないことも多いのです。

 父親が参戦する場合は、あくまでも塾のカリキュラム、テキストに沿ってというのが大前提。むしろ、子どもだけでは消化しきれない膨大な量と濃い内容を「使い倒す」ためにどうしたらいいかと客観的に分析、「抜け」がないようにサポートするくらいのスタンスで取り組んだ方が良い結果になると思います。

 その過程で自分の体験で使えるものがあれば、子どもに合わせてカスタマイズしながら部分的に採り入れれば良いのです。中学受験は親の受験ともいわれますが、正確にはどうナビゲートできるか、ということになります。(受験デザイナー・池ノ内潤)


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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Published by
池ノ内 潤

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