「二月の勝者」に学ぶ中学受験

「二月の勝者」にみる第1志望に合格する子


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12月で垣間見える第1志望合格
アドレナリン全開 入試はゲーム
そのまま走れ!起爆剤炸裂少年
「もがく」子は入試で結果を出す
・「どうしても」の子は入試で強い

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12月で垣間見える第1志望合格

 12月11日放映の日本テレビ系ドラマ「二月の勝者―絶対合格の教室―」では、桜花ゼミナール吉祥寺校の先生が一堂に集まり、6年生の受験校を選定する会議の場面がありました。

 これまでドラマの各回でエピソードが採り上げられたあの顔、この顔がどういう中学を志望し、成績は現状どうなのかなど、架空の話ではあるものの「身内の気分」で心配したり、ホッとしたりしながら会議のなり行きを見ていた視聴者も多いと思います。

 校長の黒木先生からのコメントは生徒それぞれに的を射た、端的なものでした。すでにA判定の子もチャレンジの子も、そして合格可能性20%以下のE判定の子もいましたが、入試本番で第1志望勝ち取ってくる子はどんな子なのでしょうか。ケースはそれぞれですが、12月の段階である程度買垣間見えるものはあります

アドレナリン全開 入試はゲーム

 女子トップ独走で桜蔭志望の前田花恋さん。途中転塾をめぐる騒動はありましたが、順調に進んで桜蔭もA判定。まさに「女王様」の貫禄で、黒木先生は前受けの埼玉、千葉の2校を含め「トップ総取り」の目標を掲げました

 こういうタイプの子、本当に「全勝」します。入試に対して多少の緊張はあるものの、本質的にはゲーム感覚で勉強をしています。前受け段階で埼玉の栄東や幕張メッセで行われる市川の入試で、大量の受験生を見て緊張のあまり体調を悪くする子がいたり、ガチガチになってしまう子は成績の良い子でもいる一方で、花恋さんのような子は「面白くなってきた」という感覚です。

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 入試問題の冊子が開かれる瞬間の「バサバサッ」という音、解答用紙に名前を書き込む鉛筆の音を聞いただけで、戦闘ホルモンのアドレナリンが体内を駆け巡り、入試問題を次から次へとやっつけていきます。入試で落ちるはずがありません。

 前受け校も全力でぶつかります。入試結果で高得点を挙げ、「特待生合格」もよくあります。本命校の合格発表まで押えの学校に入学一時金を支払わずに済みます。親孝行この上ない受験生です。

そのまま走れ!起爆剤炸裂少年

 「鉄ちゃん」の加藤匠くんは中受撤退も考えた3月から1年足らずで偏差値40から58まで「爆上げ」に成功しました。中学受験に意味を見出せなかった子が、「鉄道研究会」という彼にとっての中学校へ進む意味、居場所を見つけたことで、納得して勉強をするようになった結果です。

 6年生からの総合偏差値18ポイントアップは奇跡に近いです。もともとポテンシャルがあった上に、「鉄道」という起爆剤が炸裂した破壊力はすさまじかったということです。

 黒木先生はさらに「上方修正」を提案、海堂中学受験を宣言します。加藤くんの心に火を付けたのは、海堂中の鉄研が製作した鉄道模型だったからです。いいエピソードです。

 その子にとっての「起爆剤」が何かを親御さんが、塾の先生が見つけてあげることが受験の流れを変えます。伸び盛りでなおも勢いがある子、あとはそのまま駆け抜けるだけ。多少の凹みがあっても傾向的には上昇しているのですから、そこで迷わず進めば第1志望、イケます。

「もがく」子は入試で結果を出す

 第1話で登場したサッカー少年の三浦佑星くん。6年生から受験参戦で偏差値55。立派です。よく頑張りました。黒木先生の見立て通り「何かに頑張った経験がある子は受験で強い」というのもうなずける伸びです。

 佑星くん、入学当初の試験でなかなか正解に至らないものの、問題用紙にあれこれ試した跡、つまり「もがいた跡」がぴっちりと書いてありました。

 決して「切れる」タイプではなく、勉強に関しては「ドンくさい」のですが、「もがける子」は徐々にですが成績を上げ、入試当日にその集大成とばかり、素晴らしい結果を出すことがあります。

 多くの子どもは自分の解答に自信がない場合「何も書かない」というケースがよくあります。国語の記述しかり、算数の途中式しかりです。けれどもがき続ける子は、やがてどうすれば正解に至るのかの「感覚」を、無数の×や悔しい思いから体得していきます。

 「水滴石を穿つ」といいますが、受験の基本はこれです。入試直前に追い上げだ、逆転だ、というのではなく、地道に積み上げてきた子が必ず報われます。古い言葉ですが「お天道様は見ていてくれる」のです。

「どうしても」の子は入試で強い

 最後に島津順くん。「どうしても負けられない」理由がある子は何となく勉強してきた子や親が言うからという子より本当に「しぶとく強い」です。

 多くの子は中学受験にかかるだけの大金を親御さんが工面してくれて、勉強のことや友人関係での悩みはあっても「どうしても第1志望に受からなければならない」という切羽詰まった状況で苦しむことはあまりありません。この「どうしても」があるかないかで、受験結果は本当に違います。

 島津くんは、母親に横暴な態度をとる父親をどうしても謝らせるために、そして何よりどうしても開成で勉強したいために「合格しなければならない」と心に決めています。島津くんほどではないにしても「どうしてもこの学校の文化祭に参加したい」「どうしてもあの部活に入りたい」「どうしてもあの制服が着たい」という強い思いは、最後のひと押し、実力にして3割増くらいの力になります。

 よく受験生には「あまりプレッシャーをかけず、気楽に受験してもらいたい」という親御さんがいます。しかし、少しプレッシャーがあるくらいの方が集中力が研ぎ澄まされて結果はいいものです。「至れに尽くせり」はいいことばかりではないのです。


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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池ノ内 潤

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