中学校別対策

東大合格から考える中学で「深海魚」を避ける道


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東大うつ 東大プア 東大いじめ
高大連携,キャリア教育が「売り」
・褒めてもらえるから…それだけ

・大切な「なぜ、何をしたいのか」

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東大うつ 東大プア 東大いじめ

「東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話」(飛鳥新社、20年9月発行)という書籍があります。 

タイトルも強烈ですが、帯もなかなか刺激的な言葉が並びます。「東大うつ 東大プア 東大いじめ」「学歴は幸福の魔法にはならない?」――。

御三家、難関校を目指す中学受験生の親御さんが見たら、仰天するでしょう。著者は池田渓氏。東大農学部卒業で、同大博士課程を中退したライターです。 

「商売」なので極端な一面を切り取った内容の多くを占める、というのは分かりつつも、読み進めていくと「不都合な話」は中学受験にも通じるところがあると考えざるを得ませんでした。 

高大連携、キャリア教育が「売り」

「お前、東大だろ?そんなこともできないのか」

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このセリフはあらゆる場面で東大生が浴びせられる決まり文句だといいます。

勉強の面で言われるのは分かりますが、力仕事だったり、飲食店のアルバイトだったり、東大という学歴には全くと言っていいほど関係ない場所でも「東大」は引っ張り出されるといいます。そういう意味では「生きにくい」というのはよく分かります。 

得意の勉強、学問で身を立てるという道を探ってもなかなか険しいようです。

「高学歴ワーキングプア」という言葉が浸透してから久しいですが、本書にも東大の大学院でも同じような構図が見られ、学問で「身を立てる」「食っていく」には、かなりの覚悟が必要、と思わずにいられません。 

東大に入ること自体、大学受験では突き抜けた存在ですが、突き抜けた人ばかりが集まる東大でさらに突き抜けないと学問の道は開けない――。

開けないどころか、下手をしたらテキトーに過ごしてテキトーに生きている人と収入という面では大差なく、毎日お金を勘定しながら生活しなければならない、場合によっては自ら命を…というところまで追い込まれることもあるといいます。

自分の未来を切り開くために一生懸命勉強することも大切ですが、「それだけ」では難しい局面も多く、実社会で生きていくには…ということも中学受験の段階から少し考えつつ、学校選びをするのも「あり」です。

その「答え」の一つとして、私立中高一貫校が高大連携やキャリア教育に力を入れています。現実的な背景として、それが公立中高との大きな「差別化」、学校としての「売り」につながるからです。

大学進学時点での学部学科選びの「ミスマッチ」を少しでも避ける、その先にある「働く」というところを意識して学んでいくことを中高6年間を通してできる、というのは親御さんには魅力的です。

ただ、親御さんは中学受験に魅力を感じていても、当の子どもの意思がどれだけ反映しているか、というのは親御さんが見つめなければならないポイントです。

中学受験自体、子ども自身が納得しているのか、親御さんに言われるままの受験なのかを見極めるのは大切で、受験へと強制的に引っ張ることで、子どもによっては中学受験が「あだ」になってしまうこともあります

褒めてもらえるから…それだけ

「俺の“やりたいこと”は東大を受験して合格することだけだったのかな。そういう意味ではとっくに夢はかなっていて、後の人生はただ消化試合をやっているだけなのかもしれないね」 

本に登場する、中高一貫校から東大文I(法学部)に合格、卒業後メガバンクに就職した男性の言葉です。

彼は別に入りたくもない銀行に入行したものの、うつ病を患ってしまいます。著者の池田氏にLINEで「死にたい」と午前3時に訴える日々が続いたと言います。 

「親や教師に言われるままに勉強してきたけど、褒めてもらえるから点をとり続けていただけ。行き着いた場所が東大で、合格点をとれたから東大生になれた。だけどその過程で自分の夢なんて一切考えてこなかった」

男性は中学受験から大学受験をこう振り返りました。「中学受験の意味」を考えさせられる経験談です。

大切な「なぜ、何をしたいのか」

「東大合格」という4文字だけが目標、というのは、中学受験に当てはめれば「開成合格」や「桜蔭合格」の結果だけが欲しかったというのと同じ。受験という「ゲーム」の中で、勝つことだけが目的で後は特に考えていない、ということです。 

難関中学入学後、「消化試合」となってしまう子も見かけます。本のタイトル通り「入らなきゃよかった」の毎日になってしまうのです。

勉強も部活も、あらゆることに興味がわかないいわゆる「深海魚」と呼ばれる存在です。東大に入って、開成に入って、桜蔭に入って「何をしたいのか」「なぜこの学校なのか」があるかないかで「深海魚」にはなりませんし、「その後」歩く道は全く違います

時には中学受験をする意味、について親子で話し合ってみるのもかなり有意義です。

どうして中学受験をするのか、真剣に見つめ直すと、進む道がはっきりして勉強にエンジンがかかるかもしれませんし、エンジンがかからなかった理由もはっきりする可能性もあります。

秋以降の受験勉強の方向性が明確になることで「今やるべきこと」は変わってきます。


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池ノ内 潤

 「その子基準」で、勉強法、成績アップ、スケジュール立案、受験校・併願校選びなど、受験のあらゆる相談に乗る「受験デザイナー」。  昭和四十年代の夏、神奈川県生まれ。教師を志し、偏差値40程度の県立高校から独自の勉強法を駆使し、同校で初めて早稲田大学に合格。  進学塾講師、家庭教師で中学~大学受験に関わる。就職後もスポーツや執筆活動を通じ、教育や受験に携わる。    子ども2人の中学受験をサポート。1人は大手進学塾最下位クラスから転塾を経て、首都圏1都3県の偏差値トップ私立全てに合格し、第1志望に進学。  もう1人は偏差値30台から「親塾」でベースを固め、6年から入塾。3校に合格して大学付属中学へ進学した。

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