◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・すべてに当てはまらない転塾効果
・授業時間以上に必要な時間
・こうやって「課金沼」にハマる
・可能性を高める「条件付き投資」
勉強は毎日続けているのに、思うように成績が伸びない。
親御さんの頭に「転塾」の2文字がよぎるのがそんな時です。
塾と子どもの「相性」は確かにありますし、とても重要です。
「できる子はどこでも伸びる」「伸びない子は誰が教えても伸びない」といった声もありますが、実際には塾を変えることで子どもの成績や学習姿勢が変わることもしばしばあります。
しかし、塾を変えただけで誰でも効果が出るかどうかといえば、それは違います。
子ども自身が「この学校に絶対合格したい」という強い気持ち、少しでも前の自分よりできるようになりたいと本気で思わない限り、どんな塾へ行っても成績は変わりません。
「塾が悪い」「先生が合わない」など外に原因を求め続けると、次から次へと教育産業を物色し始め、出口の見えない「課金沼」にハマります。
A塾では伸びず、B塾へ。B塾の宿題量が多いため家庭教師を。C塾で今度は志望校対策講座にも通わせて……。
気づけばスケジュールは授業だらけ。お金も飛ぶようになくなっていく。でも成績は変わらない。むしろ、下降線をたどっているような気がする。
冷静な時には「そんな人いるの?」と笑止千万といったところですが、実際中学受験の現場で毎年見られる光景です。
成績アップと上がった成績を維持していくのに必要なのは、どこの塾へ通って、いくら課金しているかではありません。
①子ども自身の姿勢②家庭学習で復習と定着のサイクルが構築されているか③親御さんがわが子の「現状」を把握しているか、の3つが成績の「決め手」になります。
つまり「教えてもらう時間を増やす」ことだけで成績は伸びません。
本当に必要なのは「教わったことを整理し、実際に自力で解けるようにして、それを定着させる時間」です。
授業を詰め込みすぎてこの「復習・定着の時間」をとれないことが成績伸び悩みの元凶です。
目安にして教えてもらう時間が1としたら、復習と定着に少なくとも2倍は必要です。
この時間は6年生になると、成績優秀な子ほど短くなります。
4、5年生での復習・定着にかけてきた時間の貯金で、6年では家庭で確認程度で済むからです。
「地道に積み重ねてきた子」は中学受験で最強です。
授業のコマ数だけが増えて、成績が思ったほど上がらない「課金沼」の怖さは「感覚が鈍くなっていくこと」です。
現金払いをしていれば「こんなに使っている」という感覚はまだありますが、引き落としやカード払いが当たり前の昨今では、「大金を使っている」という感覚が薄れがちです。
使っているという感覚はあっても「ここまでやったんだから後には引けない」「次こそは成果が出るはず」と、今度は引くに引けない状態になって行きます。
そこに「短期間で逆転合格!」「直前でも間に合う!」という甘い言葉が追い打ちをかけ、「課金沼」の深みにハマってはしまうのです。
中学受験には、少なからず「お金」がかかります。それ自体は否定できません。
しかし「相場の範囲」というものがあります。
多少の凸凹はありますが、一般家庭で小学4年生から通塾して、季節講習や志望校別などフル参加したとしても3年で300万以内には収まると思われます。
「お金で成績は買える」のではなく、「成績を上げるきっかけは買える」に過ぎません。
その「きっかけ」をどう活かすか。最終的に成果を引き出せるかは、子どもの頑張りと、親のかかわり方次第です。
課金=成績アップ、課金=合格、ではなく、課金=可能性を高めるための「条件付き投資」ということを、冷静に理解しておく必要があります。