偏差値の高い学校はなぜ受験に強いのか?
◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・東大に合格してもらわない困る
・宿題多量、連日小テストの自称「進学校」
・「面倒見のいい学校」とは
・「面倒見のよくない」開成
・6年という長いスパンを有効に
★東大に合格してもらわない困る
中高一貫校の大学の合格実績は、翌年の入試の志願者数に大きな影響を与えます。中でも東京大学の合格者数は威力絶大で、ホームページやパンフレットの進路実績一覧に「東大1人」とあるだけで、志願者は確実に増えます。
それだけに毎年東大へコンスタントに数十人合格者を出す学校以外の中高一貫校は、入学した生徒の中に“金の卵”がいれば、6年間手塩にかけて育てます。この“金の卵”がいわゆる「特進クラス」などとよばれるところに入れられる生徒です。先生も学校がベストと思われる布陣を敷き、補習を行い、学費免除などをして学校挙げてのバックアップするのですから、学校側の本音を言えば「東大に合格してもらわない困る」ということになるのです。
★宿題多量、連日小テストの自称「進学校」
「特進クラス」や「アドバンスコース」など名称はそれぞれですが、一般の生徒と線引きをしたクラス編成をする学校は、「進学校」と呼ばれます。進学校の明確な定義はなく、どこまでをそう呼んでいいのかは人それぞれです。その中で東大合格者が毎年10人以下とか、ときどき出るくらいの学校は、自称「進学校」というカテゴリーでしょう。
特徴としては授業進度が早く、宿題の量が多く、連日の小テストなど“勉強漬け”にします。中には手帳に綿密な学習計画を立てさせ、常にそのチェックを学校側が行い、定期テストでは成績順の張り出しなどをして、生徒たちの競争心をあおり、切磋琢磨して進学実績を高めようとします。
★「面倒見のいい学校」とは
「面倒見のいい学校です」。私立中高一貫校に「どのような学校ですか?」という質問を先生方に投げかけると、多くはこう返ってきます。ぱっと花が咲いたように明るい表情となる親御さん。「それなら、預けてみようかしら…」。「面倒見がいい」、という学校側からのひと言は、受験生を持つ親御さんにとって、“殺し文句”のです。
大金を払って私学へ行かせるのに、ウチの子が目をかけてもらえなかったり、放っておかれるなんあり得ない。ごもっともです。ごもっともなのですが、学校の意味する「面倒見がいい」と親御さんが思い描いている「面倒見がいい」には、ズレがあることがしばしばです。
手取り足取りの学習指導を期待する親御さんに対し、先にも書いたように自称「進学校」は大量の宿題を出し、英単語、漢字、数学…日替わり定食のように毎朝小テストを行うことを目をかけている=面倒見がいいとしているところが多いです。他教科の提出課題も多く、補習授業もちょくちょく。食べきれないほどの特盛です。語弊はあるかもしれませんが、分かりやすく言うと、先取り学習を売りにし、早く大学受験の演習に入ることを目標に、生徒たちがついてこようとこまいが、学校としてはお膳立てはしましたよ、後はあなた方で何とかしてください、というスタンスです。
★「面倒見のよくない」開成
東大、京大をはじめ、国公立大医学部に進学し、早慶に合格はするものの1~2割程度しか進学しないような真正「進学校」は、そういう観点から言うと「面倒見の良くない」学校です。例えば、東大合格者40年連続日本一の開成(東京)。特進クラスもなければ、特待生はいません。高校3年生になっても文系、理系にも分かれません。理解の早い子が多いので授業の進み具合もそれに準じていますが、学校で東大合格のための対策授業や補習などは皆無です。
彼らの手本は先輩です。いつ頃から勉強を始め、どれぐらいの成績だと東大現役、あるいは早慶止まりなのかを肌感覚で知ります。開成には実力テストという勉強イベントがありますが、この順位は大手予備校の模試や東大模試などよりも“合格不合格が占える”という“言い伝え”があります。結果次第で“火が付く”生徒も多いといいます。真正の「進学校」は面倒見が良くないからこそ、自ら進んで学ぶからこそ結果が出やすいのです。
★6年という長いスパンを有効に
面倒見がいい、というのは高校生ぐらいになると却って「うざったい」ものです。先生にとやかく言われなくても勉強をやる子は勝手に始めますし、試行錯誤しながらも自分なりの“メソッド”見つけます。やらない子はいくら炊き付けてもらないし、手も付けていないのにどんどん「おかわり」がくる食事のように、嫌気だけが増していきます。
面倒見が良いということはありがたいことです。しかし、適量を超えて消化不良を起こす子が続出するほどの宿題やテストに意味があるのかどうかは疑問です。もう少し6年という長いスパンを使って熟成するように生徒を育てていってほしいというのが願いです。(受験デザイナー・池ノ内潤)