中学受験の志望校「社会的イメージ」重視の背景

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このへんより下に行くなら…
「授業内容よりブランド」の親
子どもより実は親の「立場」重視
・ブランド親と丸投げ親の共通項

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このへんより下に行くなら…

中学受験を描いた長期連載漫画「二月の勝者―絶対合格の教室―」の単行本19巻に「全落ち」している女の子と母親の姿が描かれています。

もうどうしていいのか分からなくなっている小6女子とこの期に及んでまだ「現実」を受け入れたくない母親。その母親が塾側との緊急面談でこんなことを口にします。

「正直、偏差値で言うとこのへんより下、とかの学校に行くくらいなら、地元の公立中に行ったほうがマシだと思っているの」

偏差値40台半ばくらいの私立中高一貫校なんて「恥ずかしくて」行けない。だったら公立中学に行って、高校受験で偏差値の高い有名校を狙う作戦に切り替えた方がこの先希望がもてる――。母親の言葉を解釈するとこんな感じになります。

娘が1つも合格校がなく、泣いてばかりの毎日なのに、この母親は…と半ば呆れかえっている読者も多いかもしれません。しかし、このお母さんの言葉、かなり「リアル」で、親御さんの「ホンネ」を代弁しています。

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「授業内容よりブランド」の親

中学受験をする同じママ友の前や塾の先生に対して「大っぴらに」は言わないものの、世間様に名前も知られていない、偏差値の低い学校なんてちょっと…と思っている親御さんは、思っている以上に多いです。

週刊誌「サンデー毎日」と大学通信が行った、首都圏の271の学習塾塾長・教室長に聞いた「保護者は志望校を選ぶ際に何を重視しているのか?」という問いに対し、最重要視しているものを3つ挙げてもらった結果、「社会的イメージ・ブランド力」は29.5%に達しました。

これは「授業の進め方や教え方」(19.9%)、カリキュラム(17.7%)などよりも高い結果でした。

あくまでも塾の先生から見た感覚という前提条件ですが、やや乱暴な言い方をすれば「6年間でどんな授業や体験をするかよりも、知名度が高い人気校へ進んでもらいたい」と思っている親御さんが一定数いる、とさえ言えます。

中学受験に否定的な層の中には「中学受験なんて親の見栄」という見方をする人もいますが、ブランド品を買うような感覚で子どもの受験を考えているようなら、そう見られても仕方のない側面はあります。

子どもより実は親の「立場」重視

イメージ先行、社会的知名度、ブランド重視の志望校選択の理由は主に3つ考えられます。

どれも原点は「中学受験になぜトライするか」というスタートの時点での発想に「答え」があります。

まずは親御さん自身の「アイデンティティ」(他者から認められたいという感覚)欲があります。

無縁な人もいますが、一部の母親の世界では「マウントの取り合い」のような現象があります。平たく言えば「私の方があのママより優れているかどうか」というもので、「子どもがどこの学校に通っているか」はそのマウント合戦の中でも一、二を争う注目度の高い項目です。

御三家や偏差値の高い進学校、「お嬢さま校」のイメージがある学校など「賢い子の母」というアイデンティティを「自分の価値」としている親御さんは一定数存在します。我が子がほかの子より偏差値的に低い学校に通っていると自身が「否定された気分」になるといいます。

難関校受験は子どものためでもあるのですが、その裏には自身のブランドの確立を図るという心理が見え隠れします。

2つ目は「投資に見合うリターンへの執着」です。

我が子の将来のために、大金を投入する以上「それ相応の学校へ行ってもらわないとコスパが合わない」という発想です。親御さん自身が世間的に見てイメージの良い、学校名にブランド力のあるところに合格するために、合格実績の良い塾に入れ、必要に応じて特訓授業、家庭教師、個別と「追加投資」したのだから、一定の偏差値以下の学校を受験するなんてあり得ないのです。

最後は「果たせなかった夢」あるいは「自分と同じ道」です。

前者は自分が進学したかったが行けなかった学校や大学の附属校に是非我が子に、という憧れです。後者は現在の自身を形成した一部である中高時代や大学生活を我が子にも体験してもらいたいという願望が込められています。共通して言えるのは「そうすれば幸せになれる」という図式です。同時に親御さんの「私も幸せ」という感情が「セット」になっています

3つとも「子どものことを思って」の考え方のように見えますが、実は親御さんの「立場」というものが、無意識のうちに強く組み込まれている中学受験、という構図が浮かび上がってきます。

ブランド親と丸投げ親の共通項

親御さんが社会的に「イメージが良い」学校に憧れ、「ブランド力」のある(と自分で思ってる)中高一貫校へ我が子を、という思いが強ければ強いほど、周りが見えなくなっているものです。その1つが「素顔の学校」はどうなのかという視点です。

男子「御三家」の筆頭格、42年東大合格者数1位の開成は「みんなが東大に合格する」というイメージが世間にはあるかもしれませんが、実際は現役合格が卒業生約400人の3割前後。浪人しても30人程度しか合格しません。他の国公立や医学部、早慶にも引っかからず「あいつ、どこへ行った?」という「消息不明」な子も1人や2人ではありません。

伝統があり、知名度の高いある女子校は「ブランド力」もあり、毎年志願者をコンスタントに集める人気校です。入学後、授業進度も早く、内容も濃いためデキる子はどんどん学力をつけて現役で難関大学に合格していきますが、落ちこぼれたら最後、フォローはあまりしてくれない、という「現実」があります。自力で這い上がるか、「身の丈」に応じた進学先を自分で見つけるしかありません。

そういった入学後のことをわかる範囲であったとしても調べずに、偏差値ランキングの上位にあって「ここ知ってる。超有名だよね」くらいの感覚で安易に志望校を決めるケースは、実は珍しくありません。「塾へ全て丸投げ」親とともに、とても安易に子どもの受験校を決める親御さんが「割と多い」のです。

この手の親御さんは十中八九、我が子の「現状把握、分析」ができていません。だから平然と「知らない学校へ行くくらいなら公立の方がマシ」と言い放ち、首都圏で300近い中高一貫の私立がありながら、我が子に合う学校を探そうとせず、自分のイメージにない学校には見向きもしないのです。

親御さんのイメージで「ここどう?」と、子どもに推薦するのは大いに結構ですが、子どもが乗り気ではなかったり、成績と難易度にかなりの開き(偏差値にして15以上)があるなら「撤退」です。

子どもが「どうしても」というのなら、成績との乖離があっても受験は「あり」ですが、親御さんだけの思いだけなら無理強いは禁物。受けたところで120%不合格、繰り上げ合格にも程遠い結果に終わります。

何があっても合格する「鉄板」組を除いて、模試の合格判定が五分五分かやや劣勢でもしぶとく合格する子に共通するのは「どうしてもこの学校」という本人の強い意志、熱望の思いです。「一念岩をも通す」といいますが、実力が少し足りないくらいなら「どうしても」の強弱が最終的に「勝負」を決めます

自力で「白星」をつかんだ自信は、人生の精神的支柱となる「自己肯定感」を大いに高めます。卒業後の学校の知名度、社会的イメージなんかより、自己肯定感が高さの方が生きていくうえで最強の「武器」になります。

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