伸びしろたっぷり 偏差値30からの脱出法
◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・「やっているのにできない」のワケ
・偏差値30台は「ちんぷんかんぷん」状態
・偏差値30台からの脱出は九九から始める
・国語の音読ができると劇的に変わること
・基礎力徹底の破壊力はすさまじい
★「やっているのにできない」のワケ
中学受験の場合、知力と体力は連動します。この場合の体力は健康状態はもちろん(体が弱いと知力があっても勉強が途切れがちになり思うように進みません)、質量を伴った勉強をコンスタントに続けられる「勉強体力」を意味します。
これを無視して成績が振るわない子に、できる生徒と同じ勉強をしても、時間だけが経過し「勉強体力」は一向に付きません。「やっているのにできない」と嘆く親御さんは多いですが、多くは「勉強の質量のミスマッチ」が原因です。
★偏差値30台は「ちんぷんかんぷん」状態
偏差値30台。この成績の子どもは授業中、かなりしんどいです。100人いたら85位から98位くらいのレベルです。30台後半の子は模擬試験なら算数で大問1の計算問題と簡単な一行問題が1つ2つ正解する程度。30台前半なら計算問題をやって終了。30,40分ひたすら暇をもてあましています。国語は漢字10問で正解率は5割程度。選択肢問題が「当たった!」というのが数問、記述問題は空欄のままでしょう。
何も勉強していない入塾テスト時やまだ要領がつかめない入塾当初のテストなら別ですが、大手進学塾の月例テスト(呼び方は塾それぞれで違う)でこの成績が続くようだと、早急に手を打たないと、高学年になって伸びる可能性はほぼありません。
塾へ行ってもただ座っているだけ。先生の言っていることはおもしろい脱線話以外、ほとんど外国語を聞いているような状態でしょう。偏差値30台=「ちんぷんかんぷん」というやつです。学習の積み重ねをしようにも自力ではどうにもならない状態で、「勉強しなさい」「宿題をやりなさい」と親御さんが怒鳴っても、それは「無理」というものです。「受験勉強以前」の状態なのに、進学塾へ通わせている状態なのです。
★偏差値30台からの脱出は九九から始める
子どもによって「勉強体力」は違います。偏差値30台の子が、60台の子と同じ質量の勉強をすることは不可能です。同じ時間、内容を30台の子がしても、急に60台にはならず、やろうと思っても、成績を伸ばすための材料欠乏状態ですから開始早々とん挫します。
では偏差値30台の子はずっとダメなままかというと、そんなことはありません。時間はかかりますが、オーソドックスに基本中の基本から手を付けていきます。4年生の算数なら計算問題。しかも九九や2ケタと1ケタの割り算など、2、3年生に戻って確認してみてください。場合によっては足し算、引き算でも構いません。10問程度から始めて、徐々に増量です。8割正解できる問題を並べ、学力の確認とともに「できる」という感覚“勝ちグセ”を植え付けていきます。
「できる」ようになると「楽しく」なります。こんな簡単な問題で…と思うかもしれませんが、「勉強体力」のない子に負荷をかけても挫折するだけです。軌道に乗るまで、抑え気味、やや物足りない程度が目安です。量ができるようになってからもりもりやればいいのです。
★国語の音読ができると劇的に変わること
国語は音読で実力が分かります。偏差値30台だと小学校の教科書見開きでもスラスラ読めないでしょう。読解問題に取り組む以前に音読という国語の基礎ができていないと始まりません。
音読がつかえることなくできるということは、漢字も文の内容も語句の意味もきちんと分かっているからなのです。音読をしっかりできるようになると、まず劇的に変わるのが読解の選択肢問題。根拠をもって正解に至ることができます。
成績が低迷している子の親御さんにこの提案をすると、渋ることが少なくありません。現実を直視できず「それよりも間違った問題ができるようにしてください」と言ってきます。しかし“はじめの一歩”が踏み出せていないわけですから、間違った問題の解き直しをやっても意味が分からないまま解答を写したり、先生や親御さんの説明をただうなずいているだけが関の山で、何も頭に入っていません。
★基礎力徹底の破壊力はすさまじい
偏差値40台の子もそうですが、基礎を徹底的に固めれば、偏差値はあれよあれよという間に伸びていきます。その“破壊力”たるやもの凄いです。応用や難易度の高い問題は、基礎が組み合わさってできているので、その「仕組み」さえ分かってしまえば怖くありません。
中途半端や生煮えの状態で応用や難易度の違う問題をかじるから、間違ったらその部分だけ修正しようとするから、いつまでたっても成績も偏差値も足踏み状態なのです。徹底的に基礎をやる。そういう覚悟も偏差値30台ならできます。そういう意味では「伸びしろたっぷり」楽しみな偏差値30台なのです。(受験デザイナー・池ノ内潤)