【中学受験質問箱】私立中高一貫校にも「いじめ」はありますか?
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・私立中高一貫校でもいじめは「あるにはある」
・伝統的に自由な校風の学校は「個性派」に寛容
・自分の「居場所」がある部活動の存在はいじめ排除に有効
・いじめを「多少のトラブル」で片づけてしまう学校は多い
・いじめへの対処法も志望校選択の1つの基準に
★私立中高一貫校でもいじめは「あるにはある」
公立中学に進まず、中学受験を選択した家庭の1つの理由として「いじめ」の問題が挙げられます。公立だからいじめが心配で、私立だから心配がない、という図式を描きがちですが、正直なところ私立の中高一貫校でもいじめは「あるところはあるし、ないところはない」というあいまいな答え方しかできません。
ただ、肌感覚で言えば、伝統的に自由な校風の学校はいじめ問題が少ないような気がします。もちろん、中学生ですから、多少の感情のぶつかり合いもありますが、それが長期に渡っての嫌がらせや無視などにはつながらず、「後を引かない」というのが特徴です。
★伝統的に自由な校風の学校は「個性派」に寛容
中学受験をする子どもは、公立へそのまま入学する子どもよりどちらかというと「個性派」ぞろいが多いのではないでしょうか。「みんなと同じ、横並び」が公立中学校で生きる1つの術だとすれば、「個性派」が集まる私立、特に伝統的に自由な校風の学校では、それぞれが「独自の世界」を持っている子が多く、他者のそれも認めているので、人それぞれ「違う」ことに寛容です。
決して無関心なのではなく、「私は私、あの人はあの人、されど仲良し」といった感じでしょうか。頭から他者の大切にしていることや価値観を否定したり、非難したりはしない雰囲気が学校全体に漂っています。
★自分の「居場所」がある部活動の存在はいじめ排除に有効
「個性派」が多く集まることを象徴しているのが、部活動や同好会の多種多様さに表れています。いじめのターゲットにされやすい子どもは「スポーツが得意ではない」「おとなしくて自己表現が苦手」などの特徴がみられますが、そういう子でも部活動のジャンルが多岐にわたるため、自分の「居場所」があるのです。
マンガやアニメ、クイズ研究会にコンピューター…文化部系の充実度は、公立の比ではありません。スポーツ系も大会での成績や勝負にこだわるという感じではなく、「下手でもいいから楽しくやろうよ」という雰囲気。いずれも誰でも受け入れてくれる「間口の広さ」を感じさせます。どの部活動に入ろうとも、周囲は「面白そうだね」といった感じで認めてくれますし、部内もそれぞれタイプは違えど、自分と考えが合わないからといって排除することはありません。
公立に行ったら浮いてしまいそうな生徒でも「居場所」がある、というのは魅力です。それぞれの個性を認め合えれば、いじめが起こりにくくなります。
★いじめを「多少のトラブル」で片づけてしまう学校は多い
一方、私立中高一貫校の中にはいじめ問題は”ないもの”というスタンスに徹しているところもあります。学校側はいじめ問題を「多少のトラブル」などという表現で言い換えてしまい、表面化することを徹底的に嫌います。ネガティブなイメージがつく噂話の流出を極端に恐れています。
一方的な暴力など手を出したのであれば、学校としても処分は下しやすいのですが、最近のいじめの”主流”は言葉での誹謗中傷やからかいなど、証拠が示しにくいものが占めています。被害者の親御さんが学校へ訴えても、当事者の親同士が顔を合わせて「手打ち」をしておしまいにするというのが関の山です。ひどい対応だと、当該生徒の話を聞いただけで「特に問題なし」という結論を下し、うやむやにしてしまう場合もよくあります。
★いじめへの対処法も志望校選択の1つの基準に
いじめに対する学校側の対応は「その時になってみないと分からない」という、何とも心もとないところが多いのが実際のところです。「加害生徒は理由に関係なく、退学や停学など厳しい処分をします」と胸を張る中学もありますが、対処の仕方が気になるようでしたら説明会の際に個別に”複数の先生”に尋ねてみることをお勧めします。
どの先生に聞いても対応が一致していれば、いざという時の対応に期待ができます。一致していなければ、日和見主義というか、その時になって「強く出た」方の勝ちになるでしょう。
偏差値や進学実績に目が行きがちですが、学校での日常生活をどう過ごすかが子どもにとって大切なのですから、いじめへの対処も志望校選択の際に判断基準の1つに加えてみてください。(受験デザイナー・池ノ内潤)