【不合格に不思議なし】詰め込み過ぎ”全敗”の悲劇

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いったい、いつ復習するの?
塾に家庭教師2人、寝ても覚めても勉強
・月20万円の投資 個別で追加で“空き時間ゼロ“に
入試の本質を見失う「親の狂気」
そして”全落ち”「あれだけやったのに、なぜ…」

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いったい、いつ復習するの?
「個別、土曜日の午前中の早い時間なら空いてますよね?理科の先生いらっしゃいますか」。ダイキ君のお母さんが通っている個別塾の先生に尋ねたのは、11月の末でした。

 「確かに空いていますが、お母さん大丈夫ですか?土曜の午前中もう1コマ入れて、午後は塾の特訓授業ですよね。日曜日も朝から晩まで塾があって、平日だってびっしりですよね。大きなお世話かもしれませんが、これ以上やると、いつ復習を…」。

個別塾の教室長も困惑するほどのタイトなスケジュール。でも、お母さんは、教室長の心配も耳に入りません。「いい先生いらっしゃいます?プロ講師の方か学生さんなら、国立か早慶以上の先生でお願いします」。一方的に要望を伝え、申込用紙に記入すると、颯爽と教室を後にしました。

お母さんなりの”考え”があって聞く耳持たず…

塾に家庭教師2人、寝ても覚めても勉強
 男子の上位校の一角、芝中学を狙っているダイキ君ですが、偏差値は40台前半。現状では“遥かなる芝”といったところで、合格可能性も20%以下、志望校別の順位も下から数えた方が早い、という状態が、5年生から続いていました。

 どうしても息子の願いを叶えさせてあげたいお母さんは動きます。6年生になると、通っている進学塾が週4回、これに4月から国語と算数の家庭教師が2人、週2回ずつ自宅へ来ます。

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 午後5時から2時間算数を勉強し、夕食などで1時間を費やした後、8時からは国語の先生が訪問。これも2時間やって、10時に終了。風呂に入った後に、漢字練習と一問一答の理社をこなして、ようやく就寝。朝起きれば計算練習が待っています。

家庭教師が2人、それも週2日で…

★月20万円の投資 個別で追加で“空き時間ゼロ“に
 そして夏休みからは通っていたスイミングスクールを退会し、通っている塾に併設されている個別塾へ。ここで理科と社会を2コマ計3時間近くに取り組むようになりました。冒頭の会話は、その約3か月後。塾の土曜特訓の前の午前中もついにぎっしり埋めてしまったのです。塾、家庭教師、個別…費用は月20万円近くに上りました。

 こうなると、個別塾の教室長さんの言う通り、復習の時間が全く確保できません。勉強において、復習がままならないというのは、口から食べ物をどんどん入れても消化できず、血となり肉とならずにただ排出されるのと同じ。一番してはならない学習の進め方です。

勉強の消化不良が一番もつたいない

★入試の本質を見失う「親の狂気」
 中学受験で問われる範囲は4教科とも膨大です。小学校で習う範囲内での出題という申し合わせはあるものの、それをはるかに超えた量と難レベルの問題が出題されます。勉強量もかかる時間も、受験をせず地元公立中学校へ進学する家庭から見れば「狂気」とも感じるボリュームです。

 受験はインプットされた知識や学びを、どうアウトプットするかという一点に尽きます。言い換えれば、塾や家庭教師と勉強して吸収したことを、自分の中で理解し、咀嚼して、それを入試当日に解答用紙の上へ表現できるかの勝負です。

 この一番大切なところを見ずに、塾で勉強し、家庭教師を付け、さらに個別塾を追加すれば合格するという短絡的な発想は、中学受験をする家庭の親御さんに少なからずいます。ただ、金に糸目をつけず、ということができなくて取捨選択しているだけで、金銭的余裕のある親御さんでは惜しみなく”投資”する傾向にあります。これこそまさに「親の狂気」です。

中学受験というレースは徐々にヒートアップする

★そして”全落ち”「あれだけやったのに、なぜ…」
 中学受験のオーソドックスな受験パターンとして、東京、神奈川在住なら1月に埼玉や千葉、あるいは関西や九州の学校の東京入試など「お試し受験」「前受け」をして、2月1日の「解禁日」を迎えます。しかし、ダイキくんのお母さんは「入りたい中学だけを受ける」という本心一本やり。「前受け」なしで、その日を迎えました。

 2月1日芝中第1回、2日本郷中第2回、3日海城中第2回、4日芝中第2回、5日本郷中第3回…

 ダイキくんの持ち偏差値を考えず「息子が行きたい学校」というより、「東京限定、偏差値60まで」というラインをお母さんが勝手に決めて「親が行かせたい学校」ばかりを選んだ結果が5連敗。「あれだけやったのに、なぜ…」と目の前の現実が受け入れられず、泣いてばかりのお母さん。最後まで「努力は報われる」と、信じて疑いませんでしたが、突き付けられた現実はあまりにも悲惨でした。

あれだけやったのに…なぜ

★疲れたのは受験生「どこでもいい」
 結局、今さら公立中学には行けないと、2月中旬に試験をやっている私立中学校へ進学。息子さんは疲れ果ててしまったのか、入学が決まっても感激はなく「どこでもいい」とポツリ。救いは進学先でテニス部に入り、新しい友達と中学生活を楽しんでいます。

 一度は静かになったお母さんですが、今度は高校入試がある本郷をターゲットに、編入を考えているようです(本郷は2021年から完全中高一貫へ移行し高校からの募集を停止)。お母さんの戦いは果てしなく続く気配です。

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