中学受験 10年で偏差値大幅UP校の「背景」
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・偏差値UPへの5つのキーワード
・是非はともかく…難関・広尾学園
・不透明だが…大宮開成の「進化」
・女子に引っ張られた芝浦、法政
偏差値UPへの5つのキーワード
「十年ひと昔」と言いますが、偏差値も10年前と今ではポイントのアップダウンがあります。
多くはプラスマイナス2程度で、上下を繰り返しながら変動は小規模、という推移を見せています。
その中でも10年で偏差値が5ポイント以上アップした学校もいくつか存在します。
難関校、中堅・一般校とも「妥当な偏差値」を出している四谷大塚の「合不合判定テスト」をもとに、Aライン=合格可能性80%偏差値(入試が複数回ある場合は第1志望が多く集まる第1回入試を対象)を10年前の2014年から追跡調査すると、5ポイント以上大幅にアップしている中学には、5つのキーワードがありました。
「校名変更」「共学化」「国際教育」「急上昇の大学合格実績」「人気大学附属校」の5つです。
是非はともかく…難関・広尾学園
この10年で偏差値の伸びが顕著なのが、広尾学園です。
人気の「医進・サイエンス」などの「特別進学クラス」「アドバンスクラス」ではなく、2月1日午前の第1回入試(本科入試)で2014年は男子の偏差値が「55」。23年は「61」と大台を超えました。女子はさらに高く「64」です。
言うまでもなく、看板の「医進・サイエンス」(2月3日午前)も、英語に力を入れている「ISG」(インターナショナルスタンダードグループ)も10年前の50台後半の偏差値から、軒並み65超に。「医サ」 「ISG」 の女子は「69」で、桜蔭「71」、女子学院「70」に肉薄しています。
大正時代に創立した伝統の女子校も03年ごろには生徒数が激減し、偏差値は30台で廃校の危機にありましたが、07年に「校名変更」と「共学化」に踏み切りました。
もともと帰国子女をいち早く受け入れる学校でしたが、徹底した学校改革で英語を武器に「国際教育」を強化し、国内だけでなく、海外大学進学の実績を積み重ねた結果、受験生の親御さんの支持を得ました。
最難関校の入試が行われた後の「午後入試」で受験生を集めたうえで合格者を絞ったり、1回の定員を少なくして複数回入試を行うことで合格ラインを上げる、という手法を駆使して、という「背景」は確かにあります。
しかし、その是非はともかく、姉妹校の広尾学園小石川が開校1年目、2年目で都内最多の出願者があったように、 「校名変更」「共学化」「国際教育」 で広尾学園は、中学受験で確固たる「ブランド」を築いたことは間違いありません。
広尾学園に方向性が似ている三田国際学園も2015年に「戸板(女子)」から、「校名変更」し「共学化」、「英語教育」を売りにすると、2月1日午前入試で年17年入試は偏差値「40」でしたが、23年には「55」(男子)にまでアップしています。
23年度に共学化、校名変更でリニューアルした「サレジアン国際世田谷」も旧星美学園時代は四谷大塚の偏差値表に校名が載ることはありませんでしたが、23年度には名を連ねています。
22年度入試で物議をかもすことになった、こちらも東京女子学園からの校名変更し、共学化、国際教育重視にかじを切った芝国際は方向性としては広尾学園と同路線です。
入試で見せた「手法」は賛否両論、否が圧倒的多めですが、偏差値表で「初登場偏差値55」というインパクトは強烈です。
炎上した数十通りある入試形態を整理して2年目入試に臨みますが、受験生がどのような動きを見せるか2年連続で注目です。
不透明だが…大宮開成の「進化」
「前受け」のイメージが強い埼玉の中学入試ですが、毎年大学合格実績が週刊誌に掲載されると「ここスゴいねぇ」と話題になる中高一貫校があります。大宮開成です。
10年前の偏差値は1月12日の1回目入試(コロナ前は10日)で「47」でしたが、16年に50に到達すると、徐々にポイントを上げ23年は男子「53」、女子「55」まで上がりました。
東大合格40年以上トップの開成とは全く関係のない大宮開成ですが、こちらは「GMARCH」の合格者数が全国トップ、特に学習院、立教、法政には滅法強く、毎年のように1位になり「目立った大学合格実績」を残しています。
華やかな合格実績の背景には、1学年の卒業生が約600人と多く、中高一貫生が15%程度で「実績」の多くが高入生によるものだったり、1人あたりの受験校数が多い傾向にあるなど「いろいろ」あります。
大学合格者も「のべ人数」は公表していますが、実際一人ひとりがどこへ進学したかの「実進学者」が未発表なので、学校の真の実力は不透明ではあります。
ただ、合格実績は年々「進化」しており、「GMARCH」へ行くなら大宮開成、というイメージから脱却しつつあります。
最近は早慶の合格者も急増中。20年と23年を比較すると、早稲田が「38」→「84」、慶應が「26」→「49」と急上昇。国公立大も東大1人合格をはじめ、北海道大11人、東北大9人など計130人の現役合格を数えました。
東京都品川区にある青稜も偏差値がジワジワ上がっている共学校です。コロナ禍でもオンライン授業などの取り組みがニュース番組などで複数回取り上げられ、世間に対しての「アピール」も奏功しています。
17年に2人、18年に1人、それぞれ現役で東大合格者が出ると、徐々に偏差値がアップ。2月1日午前入試は16年「45」→23年「51」(女子)と6ポイント上昇しています。22年度は3年ぶりに東大合格者を輩出しました。
大学合格実績は中高一貫校「6年間の総決算」として、中学受験を考える親御さんに訴える一番「分かりやすい数字」です。
東大合格者が出ると、翌年志願者数が増えるというのも「分かりやすい結果」だからです。大学合格実績と中学受験の偏差値は密接にリンクしています。
女子に引っ張られた芝浦、法政
大学附属校も偏差値が上昇傾向です。
大学進学を気にしなくても良いから、というだけでなく「共学化」も大きな影響を与えています。
ただ、国際系の学校が「女子校」からの転身だったのに対し、附属校は「男子校」から、というのが特徴的です。
21年度から男女共学になった芝浦工大附属は、男子校だった14年の偏差値は「45」。17年に板橋区から大学のキャンパスがある豊洲に移って以降は50台に届き、23年度は男子「54」となりました。
10年前には10ポイント近く差があった、同じ芝浦工大系列の芝浦工大柏(千葉)の第1回入試(1月23日)の男子「53」をわずかに上回りました。
21年度から共学になり、女子が入学する環境になって男子の難易度、人気がさらに上昇。「女子に引っ張られる」という興味深い流れになりました。
同様の流れは川崎市の法政二中でも見られます。
11年前の2012年は2月2日の第1回入試で偏差値「49」でしたが、共学化した16年に男子の偏差値は「53」となり、附属高ブームだった20年に「58」まで上昇。23年度は「56」ですが、実質倍率が高く厳しい入試の1つです。
女子の影響は受けていませんが、男子校の日大豊山の勢いも止まらず、2月1日の1回目入試で17年「35」から19年「38」になり、20年から「43」22年に「45」と驚きの上昇です。
どの中学でも「国際クラス」や「特進クラス」を中心に偏差値はうなぎのぼり。後半日程も募集人員が少なく、狭き門のため、どうしても「結果偏差値」はつり上がります。
その学校の「現在の実力」を見る際には、そういった「特別なクラス、入試」で見るのではなく、多くの子が「この学校へどうしても行きたい」と志を抱いて受験する1回目入試の難易度を見る必要があります。
中堅校・一般校も軒並み偏差値が上がっています。しかし、人気と評判による「バブル偏差値」が実態というのが本当のところ、という学校も少なくありません。
急上昇している偏差値に惑わされず、地に足を付けて志望校・受験校を選びます。
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