中学受験 怖いのはコロナ?緊張?
◆受験の窓口 今日のメニュー
・「前受け」回避 2月の短期決戦へ転換
・埼玉入試志願者は軒並み前年比減も…
・机の「コ」の字型のアクリル板
・危険な「いきなり第1志望」
・「ふたを開けてみないと…」だからこその前受け
・夢破れた時に何かのせいにはしたくない
★「前受け」回避 2月の短期決戦へ転換
21年度の中学入試は前半戦の真っ只中です。新型コロナウィルスの感染拡大によって1都3県に2度目の緊急事態宣言が発令されたのは、埼玉入試が始まる直前の8日。受験生、そして親御さんには予想していたとはいえ、衝撃が走りました。
そういう事態も想定していた、あるいは自主的に感染のリスクを少しでも低くするために、都内や神奈川在住の親御さんの中には埼玉、千葉の「前受け」受験の校数を当初の予定より減らしたり、極端な場合は2月に近隣の学校で短期決戦勝負という作戦に転換したケースも多く見られます。
★埼玉入試志願者は軒並み前年比減も…
埼玉入試は終盤を迎えていますが、各校の志願者数を見ると一部を除いて軒並み前年比減。多くの受験生が例年“開幕戦“として受験してきた栄東(第1回)は前年の95%程度でしたが、開智(先端特待)は8割超と大きく志願者を減らしました。
一方で各回の入試で軒並み志願者数が前年比10%以上増えた城北埼玉や2~3割と大幅増となった大妻嵐山のような中学校もあります。青山学院系属浦和ルーテル学院は、青学という“ブランド”も手伝って志願者がさらに増え、12日の第2回入試では男子は8.4倍、女子は4.9倍という激戦になりました。すべてではありませんが傾向として、偏差値帯が中堅から一般に位置する学校に受験生が集まっているようです。
★机の「コ」の字型のアクリル板
各入試会場もコロナ対策へ努力を惜しんでいません。中学入試のニュースを報道する各マスコミの映像や記事、写真を見ると、試験会場の各机は「コ」の字型のアクリル板が設置されていたのが何とも異様でしたが、「緊急事態」を象徴するカットでした。
中学受験の風物詩、校門前での各塾の激励シーンも今年は皆無です。日能研は当初から「やらない」宣言をしていましたが、最後の激励で結構勇気をもらう受験生もいたようなので、子どもによっては緊張してガチガチのまま試験に、ということもあったでしょう。
★危険な「いきなり第1志望」
コロナ禍によって受験校数が減るという予想は春先からあった見方で、いまさら驚くことはないのですが、極度に感染を恐れている層が多いことには驚かされます。確かに1度しかない中学受験の機会ですから、挑戦すらできなければ泣いても泣ききれません。「この日のために」数年間費やしてきたわけですから、万全な態勢で臨ませてあげたいという気持ちは親御さんなら当然です。
しかし、「前受け」なしでいきなり2月1日に第1志望や少々ハードルの高い学校を受けるのは、コロナの感染確率以上に危険とも考えられます。中学受験は12歳の子どもの受験です。きっちり持っている実力を存分に発揮するには“いきなり本番”では難しい子も相当数に上ると思われます。模試や塾のテストとは全く違った入試独特の雰囲気にのまれる受験生は毎年枚挙にいとまがありません。
今回も机をぐるっと取り囲んだアクリル板の中で挑む入試も、塾や小学校で経験済みの子も多いかもしれませんが、そこは入試本番だとまた違います。何度かやって慣れているのとそうでないのとでは、微妙な心理的負担が作用して結果をも左右する場合が出てくるでしょう。
★「ふたを開けてみないと分からない」からこその前受け
最初の入学試験で、たまたま苦手な問題が問1から出題された、計算問題に手間取って後半の大問ができなかった、などの要素が加われば、かなり焦ります。人によってはパニック状態です。冷静に「できるところから」とひと呼吸置いて切り替えられる子はそういません。
もちろん逆もあって、いきなり得意な分野の問題が出た、国語の読解の素材文がよく分かった、など「ラッキー」なスタートを切ることができる場合もよくあります。それは「ふたを開けてみないと分からない」というのが現実。そう考えると、やはり「前受け」は大切で、結果いかんにかかわらず、次へ向けての気づき、反省が合格するための貴重な経験となるのです。
子どもだけでなく、親御さんがコロナ感染、濃厚接触者になってしまい身動きが取れない最悪の事態になる可能性はゼロではなく、外に出れば可能性はあります。それでもこの冬のために今まで頑張ってきたことを考えると、最終段階できちんと布石を打った上でメインイベントを迎えてほしいというのが個人的な思いです。
考えたくはないですが、志望校への夢が破れた時に何かのせいにはしたくないですよね。悔いのない打てる手は打ったという中学入試にしてほしいと思います。(受験デザイナー・池ノ内潤)