中学受験 偏差値低迷よりマズい「他人事」
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・400万円投入も偏差値変わらず
・母親に怒られないから中学受験
・「モチベーション」 の力は偉大
・意志あるところに道は通じる
400万円投入も偏差値変わらず
ある男子の話です。
大手進学塾に個別指導、最後は家庭教師…4年間で投入した金額は約400万円。けれど偏差値は入塾した際に受けたテストの50から行ったり来たりしながらも、6年秋以降の模試の平均は最初と同じ50のままでした。
一度「瞬間最大風速」55をマークしたのを心のよりどころに進んできた中学受験。「この子はやればできる」と信じるお母さんは、男子校、共学の計4校に出願しました。
結果は偏差値49の実力相応校を3回受けてようやく合格。45の安全校は不合格。お母さんが熱望していた、偏差値57と53の2校も受かりませんでした。
同じ時期に入塾した友達は「あの中学に入りたい」という一心で勉強し、偏差値的にはやや厳しいとされながらも第1志望に合格。後から入塾した小学校の同じクラスの子も「中学に入ったら、人工芝のグラウンドでサッカーをやりたい」と周囲に言いつつ、大学附属校へと進学が決定しました。
そんな話を聞くと、比較してはならないと思いつつ「あれだけお金も手間もかけたのに…」とお母さんはやるせない気持ちになりました。
進学先の入学者説明会に出席しても、お母さんの心は晴れません。学校側の説明を聞きながら「あんなに勉強したのに、なぜ成績が上がらなかったのだろう?どうして合格できなかったのだろう?」という、答えが出ない問いかけが頭の中をぐるぐる回るだけです。
塾の言う通り宿題に取り組み、家庭教師の先生には弱点補強を頼み、息子も「わかった」と毎回言っていた。それなのになぜ…。さまざまな場面がフラッシュバックするうちに「もしかしたら」とお母さんは血の気が引いていく感覚に襲われました。
母親に怒られないから中学受験
「あの子は何も学んでいなかったのでは…手間も時間もお金もかけたのに、肝心の自分から進んで勉強をやるという姿勢に最後までならなかったのではないか」。
そういえば思い当たるシーンが次々と頭の中をよぎります。男の子は穏やかな性格の子で、感情の起伏もあまりない子です。勉強も嫌がらず、まじめに取り組んでいたように見えました。
しかし、成績が上向いて喜ぶこともなければ、できない問題があって点数が悪くても悔しがることもありませんでした。今思えば「あの子は勉強に対して無関心だったような気がしてなりません」とお母さんは言いました。
できてもできなくても「他人事」。「こんなことやりたくない!」と反抗もしない代わりに、張り切ってやっているシーンは一度もなかった息子でした。
まじめにやっていれば、きっといい結果になると信じたかったお母さんは、親ばかりが一生懸命になって「子どもの受検への姿勢」という一番肝心なところに注意が行っていなかったことに受験が終わってようやく気が付きました。
その後、学校の指定校推薦で偏差値50程度の私大に進んだその男子は中学受験を振り返ってこう話していました。
「塾へ行ったり、勉強している“ふり”をしていれば、母親は基本的に怒らなかった。それが僕にとっては一番で、とにかく母親に怒られたくなかった。中学受験は別にしたいとは最後まで思わなかった。小学校にいた嫌な奴と別の中学に行けるのなら、してもいいかなくらいだった。大学も手ごろなところが推薦てあったし、一般受験しなくて済むなら、というんで決めた」。
「モチベーション」 の力は偉大
中学受験はまだまだ精神的に未熟な子どもたちの受験です。
「なぜ、こんな勉強をしなければならないのか」ということをよく分からずに通塾し、何時間も机の前に座っている子が圧倒的多数です。大人が考えても漠然としがちな「目標」なんて、そう簡単に子どもが見つけられるものではありません。
その中で第1志望に合格する子は十人十色ながら、それぞれ受験勉強の支柱となった「モチベーション」があります。
「あの中学校の運動会がやりたい」「高校も大学受験もしなくていい附属校に入って部活を目いっぱいやりたい」「文化祭が楽しそう。絶対参加したい」「勉強が面白い。一番てっぺんを制覇してやる」「あの制服が着たい」――。何でもいいのですが、要は何のために中学受験をするのかが、はっきりしている子ほど受験勉強に真剣に向き合えます。
6年生秋になって、親御さんの目から見てエンジンがかかっていないように映っても、フラフラしているように感じても、ある時から目の色が変わって別人のようにやるのは、思いの強弱はあれ「どうしても合格したい理由」があるからです。
合格の可能性が80%なくても、偏差値が届いていなくても合格する子は、「どうしても」の気持ちが強く、その子なりに勉強と向き合ってきた子です。
気持ちの中に「どうしても」がない限り、親御さんが「全部落ちるよ」とか「行くとこなかったらどうするの」と脅しても、現実感が乏しい子どもにはピンときません。火がつきません。受験がどこまで行っても「他人事」の子は偏差値が低迷している子よりマズいのです。
意志あるところに道は通じる
さまざまなアンケートを見ると、中学受験を始めたきっかけは「子どもがしたいと言ったから」という理由が最多で、「親の考えで」というのは少数派です。
しかし実際は親の意向がかなり強く働いています。多くが「わが子のために」と思ってその道に誘導するのですが、一方で「子どもの意思がお留守」ということも中学受験「あるある」です。
逆に言えば、子どもの志望校への思いが強く、どうしても行きたいと願って勉強に取り組んできたのなら、どこの塾へ行こうが、多少苦手科目があろうが、何とか転がり込んでしまうのが中学受験です。
「意志あるところに道は通じる」といいますが、まさにその通りです。「志望校への思い」だけではどうにもなりませんが、「志望校への思い」が志望校合格の「最後のひと押し」になるのもまた事実です。
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