中学受験で苦戦する子 「イメージ」のわかない子
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・入試の鍵「絵」が浮かぶかどうか
・何気ない言葉からのイメージ
・「かみ砕いて」「粘り強く」
・他教科も「絵が浮かぶ」が分岐点
入試の鍵「絵」が浮かぶかどうか
まじめに通塾し、宿題もやって、家庭学習もしているのに、成績は偏差値30、40台で停滞したまま。勉強していないならまだしも、やることはやっているはずなのに、どうして…。そう嘆く親御さんは、少なくありません。
このケース、子どもに問いかけてみてください。「頭の中でどんな絵が浮かぶ?」と。絵は「ようす」「動画」「ものがたり」などと置き換えても構いません。
多くの場合、何も浮かんでこないか、親御さんが思っているのと全然違う絵がその答えになる傾向にあります。
受験勉強で苦戦している子の特徴の1つとして「イメージがわかない」というのが典型例として挙げられます。
絵が浮かんでくるかこないか、イメージがわくかわかないか…中学受験の勉強で成績を大きく左右します。
何気ない言葉からのイメージ
国語の読解問題、特に物語文では「絵が浮ぶ」かどうかが成績の分かれ目になります。
何気ない言葉とその時の場面から「何をどうイメージできるか」です。
次の文は阿部夏丸の「 泣けない魚たち」の一部です。過去に法政二中や専大松戸中など、多くの学校で出題された場面です。
ザリガニ釣りにいった2人の少年「僕」と「こうすけ」が釣りを終えて、言葉を交わす場面から、文章の最後の締めの空欄➀に入る言葉を選択肢から選んでみてください。
(アメリカザリガニがかつて食用にと考えた牛ガエルのエサとして輸入されたことについて、こうすけが話す)
「でも、こいつら、強いんだぜ。だれもカエルなんか食べないってんで、こいつらも川に捨てられたんだよ。見たこともない日本の川や池で。知らない仲間たちの中で、こいつらはふえ続けたんだ。今じゃあ、日本中にいるぜ」
「ザリガニって、強いんだ」
「うん、本当に強いよな。すてられても、泣かないもんな」そう言って、こうすけはしばらくの間、黙りこんだ。(中略)
( ① )。
ア 学校では無口なこうすけだけど、二人のときは、いろいろなことを教えてくれた。
イ 僕にはこうすけが少しばかり大人に見えて、そんな友達がいることを誇らしく思った。
ウ 僕が、こうすけに両親がいないと知ったのは、それからずいぶん後のことだった。
「かみ砕いて」「粘り強く」
いかがでしょうか。正解は「ウ」です。
親御さんの多くは文脈から、あるいは選択肢の中で物語として成立しやすい展開を「経験値」として持っていることから「両親がいない」というイメージがわきやすいと思います。
しかし、小学生にはこの「こうすけ」の言葉から、両親がいないと読み取るのは、そう簡単ではないのです。
前段階のアメリカザリガニが日本へどうして連れてこられたかの話に引きずられてしまいがちですが(特に男子生徒は)、「すてられても、泣かないもんな」と言って黙る、というのが決め手。
「こうすけ」には泣くくらい悲しい経験があり、時折泣いてしまうけれど、泣かないザリガニのように強く生ききなきゃ、という決意、あるいは強いザリガニへの尊敬の念が伝わってきます。
「ア」は少し短絡的ですが、字ずらだけ追ってこの場面の「絵」が浮かばない子は、簡単に選んでしまいがちです。
「イ」はイメージはわいていますが、「こうすけ」がわざわざザリガニに「泣かない」と擬人法を使っている意味が読み取れていません。
「ウ」は映像だったら「こうすけ」の顔のアップときりっとした目元が強調され、もう一度ザリガニを映すような「絵」になるかもしれません。
国語の読解で「絵」が浮かびにくい子は、塾のテキストで良いので多くの素材文に触れ「自分の頭にない世界」が世の中にはたくさんあることを認識することが有効な対策です。
子どもだけの力でイメージするのは難しい場合も多いので、そこは親御さんの出番です。
子どもがイメージできない世界を、人生の先輩でもある親御さんが「かみ砕いて」場面解説をします。
最初は子どもの反応が鈍いかもしれません。
でも、会話を重ねていくうちに、親子それぞれの「考えていること」を口にするたびに、徐々にイメージができるようになり、「絵」が浮かぶようになります。
時間はかかります。それでも「イメージ化」は、国語の読解問題ができるようになる鍵を握っています。「粘り強く」が重い扉を押し開けます。
他教科も「絵が浮かぶ」が分岐点
国語に限らず、他の教科でも「絵」が浮かぶかどうかは中学受験の「分岐点」になります。
算数でも数の性質にしても図形にしても「イメージ」がわかないと厳しいです。算数の先生が「手を動かしてみる」と強調するのも、頭で考えず、問題文を「イメージ化」するためです。
社会は地理では資料集、歴史では漫画などが有効というのも写真や図表、絵を見ることで印象が残り、問題を解いている際にその画像が頭に浮かぶからです。
理科の実験問題も実際に実験に取り組んだり、映像を何度も見ることで印象が強くなり、忘れにくくなります。
理社はNHKの動画教材やYouTubeに数多くの「関連動画」がアップされています。これを見るのもかなり効果があります。
ただ、国語同様「親御さんと一緒に」が基本。子ども任せにすると、いつのまにか方向がずれて関係のない動画へと進んでしまいます。
親御さんが注意しても、怒っても効果はありません。子どもならそれが普通、当たり前だからです。
子どもが悪いわけではありません。「誘ってくる」関連動画のサムネイルにどうしても流されてしまうからです。
「手のかかる子」ほど親御さんの伴走が必須なのが中学受験です。
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