中学受験 「大学合格実績」のナゾを見極める
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・「大学合格実績」は一歩引いて見る必要あり
・「大学合格実績」の人数カウントの仕組み
・奏功する中学側の“施策”
・実態が把握できる「大学進学実績」
・「進学実績」の公表を渋るようなら…
★「大学合格実績」は一歩引いて見る必要あり
中学受験を考える際に学校選びの指標として「大学合格実績」が挙げられます。中高一貫校を志向する親御さんの大半が、将来子どもが大学に進むということを前提に受験を考えます。当然志望校の大学合格実績は気になるところです。
どの中学校の学校案内にも、ホームページにも卒業生の進路状況を掲載しています。「この中学からも東大に合格している」「早慶の合格者数が多いな」「成績が真ん中より上ならGMARCHは何とかなりそう」などと、合格者数から将来の我が子の進学先を予測することもしばしばあると思います。
しかし、この「合格実績」は冷静に、一歩引いて分析する必要があります。
★「大学合格実績」の人数カウントの仕組み
多くの中学校が進路として掲載しているのは「大学合格実績」です。これは自分学校の生徒の”合格数”の合計です。
A君が早稲田の政経と法、教育の3学部に合格したとします。そうすると「大学合格実績」には早稲田3名合格と記載されます。合格したのはA君1人なのに、これだと早稲田は合格しなかったB君もC君も合格したように見えてしまいます。
センター試験利用でも個々の大学でも、一度に同じ大学の複数の学部に同時志願できるシステムのため、合格する子は本当に「いくつも」受かってしまいます。ある大学の10学部すべてに出願して、全部合格してしまえば合格実績としては10名。対外的に見れば1人で”10人”分の合格実績を積み上げたことになります。これが「合格実績」のからくりの一面です。
★奏功する中学側の“施策”
大学合格実績に親御さんが注目することを知っている中学側では、意図的に合格者数を増やす施策をしているところもあります。
“進路指導”の際に、優秀な生徒へ有名私大の複数の学部に志願することを促すこともしばしば。また、生徒数が多い学校も数を競ううえで有利になります。中学入試の際の偏差値に比べ大学合格者数の実績が良い中学は、第一にその学校の進路指導の頑張りがありますが、加えてさまざまな“施策”も奏功している場合があるので、“額面通り”に受け取ると実態を把握できないこともよくあります。
★実態が把握できる「大学進学実績」
一方で「大学合格実績」ではなく「大学進学実績」という形で進路 を公表している中学校もあります。この両方を併記している中学もあります。
「進学実績」は、どこの大学に何人進学したのか、ということになるので「1人1大学」しか“登場”しません。合格実績では早稲田20名とあっても、進学実績は2名とあれば、早稲田に複数の人数で延べ20学部に合格しても、実際に入学した生徒は2人ということになります。その学校本来の進学実績がこれで分かります。
例えば開成中学は2020年度、早稲田に現役浪人合わせて238名の合格者数を出していますが、実際に進学したのは現浪合わせて32名。合格者数の1割強です。
国公立大学は基本的に1人1大学なのでこれも実態を示しているのですが、私立大学については「進学実績」まで見ないと実像を把握できているとは言い難いのです。
★「進学実績」の公表を渋るようなら…
「進学実績」を公表している中学校は比較的偏差値の高い中学校が多い傾向です。合格者数もそうですが、進路実績にも自信があるので、実態に即した情報公開ができるのでしょう。
中学受験で志望校を決める指標に大学入試実績を考慮するなら、合格実績以上に進路実績を参考にすることをお勧めします。学校案内やホームページでつかみきれない場合は、学校説明会などで問い合わせてみてください(コロナでオンライン説明会となると難しいかもしれませんが…)。
「それは公表していません」とか出し渋るようだと、入学後の進路指導や大学受験の取り組みも、学校側の説明から「割引」して考える必要があるかもしれません。(受験デザイナー・池ノ内潤)