中学受験 「お試し」のレベルを超えた千葉入試
◆受験の窓口 今日のメニュー
・千葉中受の象徴 市川中学の「メッセ入試」
・頭の中が真っ白に…巨大スペース、大人数で一気に「緊張」
・普段からの「場慣れ」で本番は緊張知らず
・「幕張第2試合」昭和学院秀英の特別入が人気
・「ついでに」で意味のないプランを立ててはいないか
★千葉中受の象徴 市川中学の「メッセ入試」
埼玉入試に続いて1月20日に解禁となるのが千葉県の中学入試です。例年だと埼玉の栄東中が6000人規模の入試を“開幕戦”で行いますが、人数では及ばないものの、千葉の“開幕戦”は市川中学が行う幕張メッセでの第1回入試です。
規模にして2500人超といったところ。朝7時過ぎからJR京葉線海浜幕張駅から断続的に受験生と付き添いの親御さんが試験会場へと向かう一方で、近隣のホテルに前泊して試験に備えた家族もおり、会場へと通じる歩道橋はごった返します。
★頭の中が真っ白に…巨大スペース、大人数で一気に「緊張」
この「メッセ入試」、受験生の心理に結構影響を与えるようです。会場は普段イベントホールとして使っている巨大なスペースに長机と椅子が置かれ、100人単位のブロックがいくつも形成されます。
独特の雰囲気に試験前から参ってしまう子も少なくないようです。塾の小さな教室では考えられなかった人数に加え、みんな自分よりできるように見えて、こちこちに緊張してしまうのです。中には気分が悪くなってしまう子もいたり、塾や小学校の友達を見かけても緊張であいさつを交わすこともできない子もいるようです。
緊張はテストにも影響し、「始めてください」の合図の後、問題冊子を開いた瞬間「頭の中が真っ白になった」「しばらく固まったままだった」という状態になった受験生もいます。
★普段からの「場慣れ」で本番は緊張知らず
「緊張感」ならばほどほどあった方が良いのですが、「緊張」してしまうと、入試は厳しいです。市川中学の問題は難易度。分量とも時間に余裕のある試験ではありません。どういう状況で人は緊張するのか、それぞれですが、中学受験に関しては「場慣れ」でかなり防げると思っています。
大手進学塾に通わず、模擬試験は他塾の教室へ行くか中学校の校舎だったという受験生は、この市川中学の入試を「楽しかった」と振り返ります。
「緊張はしなかった。いつもいろいろな場所でテストを受けていたので、今日はこういうところかと思ったくらい。始め、の合図で問題用紙をみんなが一斉に開いた時に“バサバサバサッ”と大きな音がした時、何か気持ち良かった。テストに集中できた」
ここまでくれば大したものです。彼は市川を含む受験校5連勝で最難関校に入学。市川は特待合格でした。塾内テストを除き、試験といえば常に「アウェー」。これが入試本番で動じない気持ちの土台になったようです。
★「幕張第2試合」昭和学院秀英の特別入が人気
1月20日の“開幕戦”は、専大松戸などの第1回入試も行われますが、特筆すべきは市川の試験が終わった直後の同日午後に、幕張メッセから約1キロ程度の距離にある昭和学院秀英中学が第1回入試を行うことです。
もともと昭和秀英は12月1日に第1志望入試を行い、定員40人のタイトな選抜試験をした後、1月に2回目、2月に3回目の入試を行っていましたが、18年度から方針を転換。12月の試験を廃止し、1月の午後入試を定員30人の「特別入学試験」として設置しました。
この「幕張第2試合」はなかなかの人気で、20年は801名が受験し、137名が合格。5.85倍というかなりの激戦でした。仮に801名が全員市川中学を受けた後のダブルヘッダー受験だったとすると、その割合は3割にも上ります。
★「ついでに」で意味のないプランを立ててはいないか
21日には東邦大東邦、22日には再度昭和学院秀英と目と鼻の先にある渋谷教育学園幕張、23日には芝浦工大柏と、千葉入試は連日人気校が立て続けに試験を行います。
4連戦も当たり前、という受験生も多いのですが、中学受験は「数撃ちゃ当たる」ではなく、戦略を立ててどう受験校を「絞り込む」かで勝負が決まります。「市川のついでに昭和秀英も」という、近所に買い物にでも行くようなプランは、明確な受験戦略がないのなら、ダブルヘッダーで単に子どもを疲弊させるだけです。
子どもの意見を尊重しながら、親御さんがどういうスケジュールを組むのか。親御さんの役目は極めて重要です。(受験デザイナー・池ノ内潤)