中学受験の“バカ”とは?低偏差値から脱出
◆中学受験の窓口 今日のメニュー
・「パワハラワード」からのヒント
・算数の偏差値40以下は注意力の欠如から
・半分捨てたら偏差値が10アップした理由
・「基本を確実に押さえる」と起こる大きな変化
・「急がば回れ」勉強体力、正解習慣を付けて反撃に
★「パワハラワード」からのヒント
中学受験を題材にしたコミック「二月の勝者―絶対合格の教室―」の3巻には、塾講師として言ってはならない“禁句”が、教室長・黒木の口から飛び出します。
「そういうのをひっくるめて一言で言うと、“バカ”っていうですよ」
算数の偏差値が33から40という「できない子」4人の答案を分析して発した言葉です。この4人担当している新人講師の佐倉麻衣が気色ばむのも当然です。昭和なら塾講師が頻繁に浴びせかけていた言葉ですが、今では「パワハラワード」。しかし、その言葉の後に続く黒木の分析は「できない子」の特徴をとらえた、低偏差値から脱出する第一歩となるヒントがうかがえます。
★算数の偏差値40以下は注意力の欠如から
黒木か言う「バカ」とは「基礎の計算問題の重要さが、いまだにわかっていないような“できない”子」のことで、それゆえいわゆる「ケアレスミス」というものを繰り返す生徒のことです。人より算数の成績が悪いにもかかわらず、簡単な計算間違いはするわ、計算はできているのに答案への転記で別の数字を書いたりと、1問に対する注意力の欠如がはなはだしいのです。
そんな子が「できるも問題からやる」という、もう一段算数の力が上の子がやる作戦の1つをとっても無意味というのです。確かに1問答えるにも集中力がどうか、という子に大問1から最終問題までできるか、できないか吟味させること自体、実は難しいことです。限られた時間内にすべての問題に目を通すとなると、集中力が散漫になり、焦りから1問ずつの注力がおろそかになることでしょう。
★半分捨てたら偏差値が10アップした理由
そこで偏差値30台レベルの4人に対して黒木がとった戦術が、前年度の算数の模試の問題後半の半分はやらず、同じ50分の試験時間で基本問題が並ぶ大問1から大問4までをやるというものです。黒木の言葉を借りれば「はなから半分、盛大にドブに捨てる」というものです。
新人講師の佐倉は子ども達を馬鹿にしていると怒りに震えますが、結果4人3人が偏差値をアップさせ、1人は一気に10も上昇しました。時間を倍かければ、当たり前、という声もあるでしょうが、それ以上に「基本問題は焦らず着実にやれば点数がきちっととれること」「テストで正解して点数、偏差値が上がったという嬉しさ」を体感できたことに収穫があったのです。
★「基本を確実に押さえる」と起こる大きな変化
ただ、黒木自身も言っていますが「この方法、本番の入試ではもちろん使えません。基本を確実押さえてケアレスミスを防ぐことで獲れる偏差値は、頑張っても50まで」。うーん、基本が確実なら実際はもっといい数値になると思います。結構できる子でも基本の「抜け」はありますから、基本を確実に押さえる、というのは口で言うほど簡単ではありません。
さらに言うと基本が押さえられた時点で、偏差値が上昇する態勢が整ったということができます。子どもによっては7や8くらい、場合によっては(もともと潜在能力があった子なら)一気に60突破もあり得ます。それぐらい基本を確実に押さえていくというのは、勉強の肝なのです。
★「急がば回れ」勉強体力、正解習慣を付けて反撃に
勉強は「できた!」という達成感やゲームのように「クリアした!」という爽快感がないと、小学生にはただ苦痛なだけだと思います。この経験やカ数が多いほど、自分の実力より上の問題にチャレンジし、何とかしてやろうという気に初めてなります。
“半分以下捨て”作戦。伸び悩んでいるのなら十分使える作戦です。勉強につまずいた時の鉄則は「急がば回れ」。算数なら「勉強体力、正解習慣」を十分付けてから、後半の大問に取り組んだ方が吸収力は早いです。基本さえしっかりしていれば、ゲーム感覚で取り組めます。(受験デザイナー・池ノ内潤)