算数得点率9割!「異常」だった23年開成入試

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・得点率7割5分でも不合格!?
・簡単算数で分かる開成の欲しい子
・記述のみの国語 差は「細部」
・理科の勝負の分岐点は「好奇心」
・基本問題並んだ歴史で落とすと…

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得点率7割5分でも不合格!?

2月3日、男子中学の御三家の一角、開成の合格発表がありました。23年度は1193人が受験し、419人が合格。実質倍率は2.8倍でした。合格者数は過去5年で最高の数となりました。出願したものの、受験をしなかった人数がここ2年、192人、156人と3桁となっていましたが、今年は96人と大きく減少。コロナの影響も年々薄れてきているようです。

今年の開成入試はひと言でいえば「超カンタンな入試」となりました。一方で「できた!合格だ!」と思っていた受験生が、「えっ、どうして?」と結果を受け入れられないショッキングな入試だったともいえます。

合格者平均は251.5点。22年度の214.9点より36.6点も高く、受験者平均も221.5点でこれも前年度より32.4点も高くなりました。合格者平均、受験者平均とも過去5年で一番高かった2018年のそれぞれ241.2点、211.2点を10点以上も上回っています。

4教科310点満点ですから、合格者平均で得点率81.1%。合格者最低点はまだ出ていませんが、例年の得点状況からだいたい235点前後と推測できます。となると、なんと得点率75%前後でも「不合格」になる計算です。入試結果が開示されている学校で、4分の3できて不合格というのは、かなり「異常」です。

簡単算数で分かる開成の欲しい子

その「異常」入試の代表格が算数でした。85点満点で合格者平均が76.4点。得点率に換算すると89.8%で、ほぼ9割に達します。2018年の算数も中堅校レベルの問題が並び「超簡単」で話題となりましたが、その時の73.9点よりも高い結果となりました。

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おそらく合格者だけでなく、不合格者の中でさえ満点続出の入試だったと思います。受験者平均の61.7点(得点率72.6%)は、直近過去3年間の合格者平均を上回っています。

具体的に出題された問題を見ていきます。大問は5問で「速さ(旅人算)」「点の移動」「立体切断」「周期性」「整数の問題」の順番で出題されました。「立体の切断」を除いて、各大問とも小問の一番最初がきちんとできるかどうかが大切。ここでつまづくと、後の解答に「ズレ」が生じ、全問不正解にもつながります。

最後の「整数の問題」は、公立中高一貫校入試で出題される「適性検査」型の問題。慣れていないと、やや戸惑うかもしれませんが、短期をおこさず問題をたどっていけば、解答に「誘導」されます。急ぎつつも「冷静に」追っていくことが正解につながります。

開成入試は「算数勝負」といわれます。一方で何年かに1回、「信じられないほど易しい基本問題」ばかりが出題されます。ならば合格者平均と受験者平均の差がそれほどない試験になりそうですが、今回は14.7点も差があります。これは過去5年で最大の差です。開成レベルを受験する子なら、苦戦する問題はないはずで、この15点近い差は問題を解く「正確さ」の差といえます。

今回の算数入試を通して開成が欲している生徒は、難問を素早く解ける「算数小僧」ではなく、基本問題を横着せずに(頭の中で安易に暗算したり、書き出さずに分かったつもりになっている、など)、必要な手順を踏みながら、「正確に解くことができる」運用能力のある子だったことが垣間見えます。

記述のみの国語 差は「細部」

算数と違い、例年通りだったのが国語でした。85点満点で合格者平均55.6点(得点率65.4%)。難しかった22年度の平均よりちょうど10年アップしました。受験者平均は49.0点でした。大問は2問構成。漢字の書き取り4問以外はオール記述です。

大問1の説明的文章は、建築家の隈研吾のエッセー「ひとの住処(すみか)」文字数は約4200字。記述で3問解きます。バブル期の大都会での建築とその後高知のある町での仕事での経験の違いを例に、独自の視点の建築論を展開する文章は、受験生自身が生まれていない時代背景もあってピンときません。しかし「対比」関係がはっきりしているので、そこに着眼すれば設問は答えられます。解答につながらない部分を読み流し、「核心」部分の対比をとらえるのが鍵です。

大問2の物語文は女子高生の日常と複雑な気持ちを描いた、柚木麻子の「終点のあの子」が出典。これも主人公と友人の性格、行動の「対比」を注意して読んでいけば、解答へ最短距離で到着します。5300字程度の文章は、登場人物も多いのですが、その辺は全く気にせず、2人の描写のみを丁寧に追った「読み」をしていけば、50分の試験時間の中で読み切れ、記述問題4問を考える時間もあります。

合格者の答案と残念組の答案の差は「記述の細部」にあるのが開成国語の傾向です。開成を受験する子なら、国語の記述演習はかなりの「量」を積んできているはずです。書くことに抵抗はなく、内容も読み取れます。しかし、塾の先生なり、家庭教師なりに添削してもらった際、指摘を修正して次につなげてきたかどうかの差が入試本番で如実に表れます。

70字前後の解答を要求される開成の記述は、長くなる説明を「要するにひと言でいうと」という言い換えの力や語彙力、主語、述語、助詞を正確に使った「破綻していない」文章構成が肝。これを心がけるよう先生からは指導されてきたと思いますが、復習を入念にすることで「型」をマスターした子が、より高い得点を重ねて合格へ近づきます。

解答欄をはみ出さない、字が文末に行くにしたがって小さくならないなど、与えられた解答欄の枠に無理なく収まるサイズにまとめる、理由を聞かれているのなら「~だから」、説明しなさいなら「~ということ」なども「型」のうち。得点差につながります。

小問単位では1点か2点の差かもしれません。しかし、それが7問にもなると7~14点も開きます。1問ずつ「丁寧」に、「気を遣う」答案を作成した順から合格していきます。

理科の勝負の分岐点は「好奇心」

理科は40分で解答数が40問。70点満点で合格者平均が61.5点(得点率87.9%)と算数に匹敵するほど高く、ミスによる失点が響く入試になりました。受験者平均は56.9点で、合格者平均と共に過去5年で比べると2番目の高さでした。

4分野から1題ずつの出題で、大問1から順に「地層と地震」(地学)、「もの(水)の温まり方」(化学)、「振り子」(物理)、「血液循環」(生物)というラインナップ。問1の最初の問題で地層がどのように見えるかを図で書かせたり、大問2では「沸騰石」のしくみ、使い方など踏み込んだ内容が出題されました。

割と基本問題が並ぶ中で、差が付いたとすれば大問3と大問4の計算問題。時間も厳しいことから、計算ミスが続出したかもしれません。ここを落とさなければ、理科でアドバンテージを得たことになります。

日ごろから「一歩踏み込む」勉強ができているかどうかが、理科での勝負の分岐点になりました。設問は選択肢で解答が多かったため、高得点になりましたが、出題自体は易しいというより、良問揃いでした。理科のさまざまな現象や実験などで「どうしてそうなるのか」「どうしてそれをやらなければいけないのか、どうしてやってはいけないのか」などを問うています。

1問1分というタイトな試験では、スピード感と共にここに至るまでの普段の理科の勉強で、常に疑問や好奇心を持ちながら勉強してきたかどうか、一問一答式の勉強ばかりしてこなかったかどうか、というところが見られたというのが理科の出題のコンセプトでした。

基本問題並んだ歴史で落とすと…

社会は70点満点で、合格者平均は57.9点(得点率82.7点)で直近過去5年よりも一番高くなりました。受験者平均とは4点しか違わず、総じて「できた」という感覚を受験生は持ちました。

大問2題構成で、1問目の歴史は「時代」をテーマにした会話を読み進めていく中に問題が仕掛けられているもので解答数は計31。「冠位十二階」「満州国」「石見銀山」などどれも基本的問題で歴史で大量失点するとかなり「痛い」です。

というのも大問2(解答数23)のロシアとウクライナの戦争、昨年7月の参議院選挙、同9月の西九州新幹線開業をテーマにした時事・公民・地理融合問題が「やや難」が含まれており(鉄道好きの子にとっては楽勝かも)、ここでの失点が見込まれるからです。ウクライナの場所は多くの受験生がチェック済みですが、北欧のフィンランドやスウェーデンまでは「盲点」。円とドルの換算や石油価格の計算問題までバラエティに富んだ問題が並びました。

毎年のことですが、開成は40分の試験時間で1問40秒程度しかかけられません。しかも設問条件が1問ずつバラバラに並び「起伏が激しい」です。急ぎながらも、問題の解答条件をしっかり把握して答える「正確さ」が社会でも問われる形となりました。

算数重視といわれる開成入試で、理社は軽く見られがちですが、合格する子はこの2科目で「落とさない」のが特徴です。「努力は裏切らない」理社をきっちり固めるのが、開成合格への近道です。

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