中学受験 偏差値低迷の背景に「待てない親」
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・待ちきれない親御さん
・「どうして」と言ってしまう背景
・通塾すればすべて解決なのか?
・「温まる」までの時間と継続
待ちきれない親御さん
成績、偏差値が低迷している子の場合、一朝一夕に「急上昇」というわけにはいきません。一定の(割と長い)時間がかかります。
しかし、多くの親御さんは待ちきれません。理屈はそうかもしれないと分かってはいるのですが、どうしても「早く結果が欲しい」のです。
精神的に追い詰められていると、早く楽になりたいという気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、偏差値が上がらないと焦りが募り、転塾を繰り返したり、個別塾に通わせたり、効果が期待できない教材に手を出してみたり…と、どんどん本筋から外れていきます。
最終的には望んでいなかった結果になることが多く、「あんなに時間とお金をかけたのになぜ…」と呆然とするばかりです。
「どうして…」と言ってしまう背景
「待てない」親御さんのタイプは、2つに大別できます。
1つは「勉強で苦労しなかった」親御さんです。小中高、大学と順を踏んで学習してきた結果、大きなつまずきもなく、順調に進学してきたタイプです。
もともと「賢い」というのもありますが、小学校低学年からきっちり勉強を積み重ね、のみ込みも早いので「分からない」という感覚があまりないまま学校生活を送ってきたタイプです。
なので、勉強をしても結果を出すまでに時間がかかることが、体感的にピンとこないのです。「どうしてこんなことが分からないの!」のセリフは、そういう感覚から出てきます。
子どもは、大人が「えっ」て絶句するようなことが実は理解できていなかったりします。
キロやメートルの換算だったり、お金の感覚だったり、人間の当たり前の感情だったり、地方によって違う気候だったり、「普通分かるでしょ」が通じない、全く知らなかったりします。
子どもによって「どうしてわからないの!」の質も種類もそれぞれ。手を変え品を変えて教えれば「ああ、そういうことか」になる場合もあります。
しかし、本当に感覚として持ち合わせがなく想像ができずに「分からない」という子、そもそも「分かろう」という気持ちがなく、別のことを考えていたり(何も考えていなかったり)する子は「暖簾に腕押し」。そのままにしておけば、ある一定の、個人で違う「時期」が来るまで大金を投入しても、東大の家庭教師を付けても「分からない」状態が続きます。
「どうして」と言葉を発する前に、親御さんは子どもの「分からない」という状態を冷静に受け止めます。親御さんから子どもに歩み寄って「分からない」の正体を子どもと一緒に探ります。
言葉の意味が分からないのか、どこから手を付けて良いのか分からないのか、そもそも聞かれていること自体チンプンカンプンなのか…。親御さんが子どもと同じ目線に、いやそれ以上に深く降りて、一緒に「どうして」を考えます。骨が折れます。一朝一夕ではおそらく解決しないことの方が多いかもしれません。
イライラと怒りの感情に任せて怒鳴っても、子どもには何も響きません。それが日常だと「分からないこと」を話さなくなり、隠し通します。その場さえしのげればと「分かったふり」をしてうなずき、「どうしたら怒られずに済むか」だけに関心が行き、勉強どころではなくなります。
通塾すればすべて解決なのか?
もう1つのタイプは、失礼な言い方になりますが、学校に通っている時、あまり真剣に勉強してこなかった親御さんも「待てない」タイプが多いです。
学生時代に勉強と格闘し、もがいて何とか克服したという経験がある人は「勉強は、ある程度のレベルに達するまでに時間がかかる」ということをよく分かっています。
そういう経験が浅いと、子どもの努力は二の次で「塾に通えば勉強ができるようになる」「塾が子どもに勉強をするように誘導してくれる」などと安易に考え、歔欷単な話、入塾した時点で志望校合格を果たしたかのような気分になってしまうことも多々あります。
そのため、ちょっと勉強をして成績が伸びないと「お金払ってるんだから何とかしてよ」「塾が合っていないのかしら」「もっといい方法があるはず」などと塾に不満を抱き、「魅力的な言葉」で誘う他塾や家庭教師派遣業者、個別指導塾へ気持ちが傾くこともしばしばです。
しかし、転塾やダブルスクールはほどほどにしないと、勉強の「核」が確立していないため、どれも中途半端で断片的な知識のまま受験本番を迎えることになります。
入試を突破できる力を付けるのに、特効薬や魔法はありません。子ども自身に「熱量」が少しでもないと、あらゆるものに熱が伝わらず冷え切ったまま。何時間塾に行ってようと、夜遅くまで勉強している「ふり」をしていても、永久に成績は上がりません。
「温まる」までの時間と継続
受験勉強で安定して一定の成果が出るまで、その子に合った手段を用いても、短くて3カ月、半年ぐらいかかります。1年近くかかる子もいます。子ども自身から勉強の「熱」を出せるようになるまで「時間」と「継続」が必要だからです。
6年生夏から取り組んだことが、入試直前になってようやく花開いて、志望校に滑り込み合格になるのは、夏に頑張ったからです。秋にはまだ定着せず、冬に間に合うのです。 「入試当日、試験中も実力は伸びる」とはそういうことなのです。
焦る親御さんには「そんな悠長な…」という話ですが、場が「温まる」まで待ちます。牛の歩みのようにじれったく感じても、子どもがコツコツ頑張っているのなら「我慢」です。
短気を起こさず、信じて待てるかどうか。成績と偏差値低迷から脱出するには、親御さんの度量が試されます。
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