2024年9月1日 / 最終更新日時 : 2024年9月2日池ノ内　潤中学受験　偏差値&成績

中学受験　伝わらない｢奇跡の逆転合格｣の真実

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・｢レア｣だから目立つ逆転合格
・奇跡の合格は｢基礎｣があってこそ
・ ｢たまたま｣が切り取られて宣伝に
・ ｢小さな逆転合格｣へ足元を見直す

「レア｣だから目立つ逆転合格

「3カ月で偏差値が20上がって第1志望に逆転合格」――。

受験関連の塾や家庭教師の合格体験記などで、よく目に飛び込んでくる「奇跡」の成績アップの見出しです。

実際、本当にあった話なのでしょう。中学受験ではそういうケースも確かに存在します。

存在しますが、誰もかしこもというわけではなく「レアケース」です。

レアケースだからこそ、ホームページやチラシの宣伝媒体の大見出しになるのです。

塾や家庭教師派遣会社は「商売」ですから、消費者(受験生の親御さん)へのインパクトは必須です。

見出しのインパクトに目を奪われてしまいますが、「奇跡の合格」を成し遂げた子の「知られざる真実」は大きく端折られて詳細が伝わることはほとんどありません。

さまざまなケースがある「3カ月で偏差値が20上がって第1志望に逆転合格」ですが、確実に言えるのが、その子に逆転合格となる「学力の土台＝基礎力」があらかじめ備わっていたということです。

どんなに優秀な、キャリアのある先生でも、「学力の土台」がある程度できていない子を短期間で「逆転合格」まで引っ張り上げることはできません。

土台はあったけれども、それが「つながらない」状態でバラバラに存在し、「得点に至るまで整えられていない」状態だったのを、力量のある先生が「テコ入れ」することで、バラバラがまとまって「ひとかたまり」になり、合格という「花が咲いた」のが逆転合格の真の姿です。

ある程度の基礎力もなく、自分でコツコツ積み上げたものもなしの状態で、塾の先生が引っ張り上げてくれたとか、素晴らしい家庭教師の先生の授業で魔法にかかったようにできるようになった、などということはあり得ません。

「そんなこと言われなくたって…」と鼻で笑う親御さんも多いですが、当事者になると「藁をもつかむ」思いで「何とかなるのでは」と塾に、家庭教師派遣会社に駆け込んでしまいます。

駆け込む前に、親御さんの冷静な子どもの現状分析が必要です。

「学校別模試で偏差値40、E判定から最難関中学に逆転合格しました!」――。これも「受験あるある」です。

この受験生の場合、合格までの過程の一部分が「切り取られて」宣伝文句に使われた、というのが実際のところです。

普段は常に偏差値65超で成績は安定している子をが学校別模試を受けたところ、たまたま算数で壊滅的な点数を取り、理社ではいつも通りも、国語でも手こずって…というだけの話がクローズアップされているのです。

通常の模試はオーソドックスな問題をベースに、偏差値の開きを「演出」するため、多少ひねりを加えたり、別角度から見た「扱いにくい」問題をちりばめるのに対し、学校別模試はしばしば「ひねり」や「別角度」を狙いすぎて、難問・奇問が多めになるケースがあります。

普段はできる子でも問題を解くのにどの「引き出し」を使ってよいのか判断できず、力が発揮できないこともあります。

長い中学受験の勉強の中では「そんなこともあったね」ということが1度や2度必ずあり、本来なら強調すべきものではありませんが、教育産業から見れば強調すべき、素晴らしい「宣伝材料」です。

成績不振が続いている生徒の親御さんが「我が子ももしかしたら…」という夢を抱かせ、受講者を増やすために利用するには「おいしい」素材なのです。

そのあたりの「背景」は一般的には想像できない話で、親御さんが「逆転合格」を信じてしまうのも致し方ないことなのです。

偏差値20アップは極端でも、合格可能性30％、40％からの「小さな逆転合格」は中学受験でザラにあります。

模試での判定で合格可能性50％や65％と30、40％の差は20点もありません。

つまり各教科であと5点ずつ得点すれば、合格可能性30％は65％まで跳ね上がり「合格圏内」に突入です。さらにプラス10点で「合格確実圏」です。

5点ずつなら模試の答案分析によって、得点を積み重ねられる部分が必ずと言っていいほど見つかります。

正答率50％以上の問題の取りこぼし、解答条件の見落とし(誤ったものを選ぶ問題で正しいものを選んでいた、など)、計算ミス、漢字の誤記など、拾い集めれば「得点を詰め重ねられる問題」は結構あるものです。

安易に家庭教師や個別塾に頼るのではなく、家庭学習で「足元を見直す」ことで合格にグッと近づくことは十分可能です。