中学受験 「学習性無力感」からの脱出法

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・「努力してもムダ」の恐ろしさ
・基礎力増強の大きな意味
・ハードルを下げる=「甘やかし」?
・成績の差は地頭の差ではない

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「努力してもムダ」の恐ろしさ

成績が中下位の子どもは、テストや模試で「×」が並んだ解答用紙を目にするたびに心が折れていきます。

「頑張ったのに点が取れない」という経験が繰り返されると、子どもは心理学でいう「学習性無力感」に陥ります。

これは、米国の心理学者マーティン・セリグマン氏が動物実験をもとに提唱した理論で、「逃れられない失敗が続くと、何をしても変わらないと学習し、行動が止まってしまう」という心理メカニズムです。

受験生の場合、「問題を解く前から手が止まる(思考力停止)」「適当な答えを書いてその場を繕う」「間違いを極端に恐れる」などの形で表れます。

塾では授業中にただ座っているだけになり、家庭学習でも「わからない・できない」の連鎖によってますます置いていかれます。

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この状態が長引くと、学習へのエネルギーが枯渇し、どんな対策をしても成果につながりにくい状況になることさえあります。

ただ、無力感は「固定された能力」ではなく、改善可能な心理状態です。早い段階で手を打つことが脱出への道につながります

基礎力増強の大きな意味

無力感を抱えている子に必要なのは、長時間の学習でも、大量の課題でもありません。

「できることの確認」と「もう少しでできる、をできるに変える」ことに徹することです。

子どもの中には、「できる」と思っていた内容が実は「なんとなく正解しただけ」のケースや、その場の勘で当たっただけのものも多数あります。

これを1つずつ「確実にできる」に転換し、「できる」の量を増やすことが基礎力強化の第一歩です。

基礎とは単に「簡単な問題」という意味ではありません。

問題を解くときの「気づき」が基礎の中に含まれています。受験の標準問題や発展問題を解くための「土台としての考え方」が基礎にあります

例えば、今まで解けなかった算数の問題に対して「あれ?ここは割合の考え方だ」と気づけるようになる――これは基礎力が生み出す大きな変化です。

成績上位層の子どもが安定した結果を出し続けるのは、基礎をおろそかにせず、さまざまな基礎を組み合わせて問題を解き進められる力と方法を知っているからにほかなりません。

ハードルを下げる=「甘やかし」?

無力感を抱えている子には、その子の状態に応じた「勉強のリハビリ期間」を設けます

レベルが低くても、時間が5分程度と短くても、問題が1〜2問だけでも構いません。

「こんなにできることがあったんだ」という感覚こそが、成績中下位層の子どもが再スタートを切るときの大切な燃料になります。

「それでは偏差値の高い子に追いつかない」「受験に間に合わない」と焦り、高いハードルを課すのは逆効果です。

できない経験が続くことで無力感はさらに強まり、手が動かなくなります。

多くの親御さんが誤解しがちですが、学習のハードルを下げることは決して甘やかしではありません。むしろ、中学受験の土俵に上がるための「戦略的リハビリ」と考えるのが得策です。

スポーツ選手がケガをしたとき、練習を再開してもいきなり全力で走ったり投げたりはしません。

それと同じで、学習面で心理的に傷ついている子どもに過度な負荷をかけても良いことはなにもありません。

「昨日よりできた問題が1つ増えた」「今日は10分集中できた」という小さな前進を認めることが、自信と意欲を再び芽生えさせるステップになります。

小さく見える芽でも、「育て方」次第で必ず大きく育ちます

成績の差は地頭の差ではない

算数の計算、国語の漢字や語彙、社会や理科の用語知識――これらはいずれも「点」にすぎません。

しかし、文章題で正確な計算が必要、読解のキーワードとして捉える漢字や語彙、用語の背景にある意味や影響を問われるといった「線」へと発展したとき、基礎力である「点」を数多く持っていないと太刀打ちできません。

そして、この線が積み重なることで、その教科全体の「面」へと広がり、結果(成績)として表れます。

「点」がまばらで線にならない子と、点同士がつながり大きな面を形作っている子。偏差値の差は、地頭の差ではなく「基礎の積み重ねの差」だと言えます

点の数を増やし、それを線としてつなぎ、次第に面へと広げていく――このプロセスには時間がかかりますが、実はこれが「勉強ができる=楽しい」に至る最短ルートなのです。

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