「やったぜ早稲田」と「がっかり早稲田」

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唯一2度チャンスがある早稲田中
1回目入試で85%以上が入学
第2回入試の入学は4割
「やったぜ」「がっかり」の6年後
「先輩」の存在が中高一貫校

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★唯一2度チャンスがある早稲田中
 大学附属、あるいは大学系属の中高一貫校の人気は根強いものがあります。近年は大学入試改革に振り回され、特にその人気が過熱しました。大山鳴動した割にはネズミが一匹もでなかったような、お粗末な入試改革騒動でしたが、今後も不透明な大学入試への懸念から「附属人気」は衰えず推移していくことでしょう。

 中でも私立の雄、早稲田と慶應義塾への進学を熱望する親御さん、受験生は多く、大手進学塾も御三家に続く勢いで熱心な受験指導と志望校対策でニーズに応えようとしています。東京メトロの早稲田駅から徒歩30秒といわれる、早稲田中学は早慶附属・系属の中で唯一2度受験のチャンスがあることで、特に人気の的になっています。

★1回目入試で85%以上が入学
早稲田の入試は2月1日と3日。1日の志願者は例年800人前後で実質倍率は3倍程度、合格者の約85%以上が入学をします。東京、神奈川の入試解禁日であり、ほぼ早稲田第1志望が受験するため、「歩留まり」が高くなっています。

 転じて3日の第2回の入試はどうでしょうか。志願者数はこの5年間でみると、21年度の1278人から18年度の1419人の間で、実際の受験者数は約850人から1000人弱。志願者の約7割が実際に受験します。残りの3割は1日とダブル出願していた受験生が、1日の入試で合格し、受験する必要がなくなったので欠席、あるいは「憧れの記念受験」をして次は現実路線の中学校を受けるので辞退というパターンが大半とみられます。

 2回目の試験の実質倍率は4倍前後と、1回目よりは厳しくなっています。2回目は1日に開成や麻布、2日に神奈川の聖光学院や栄光学園を受験したした男子の併願校として性質が強く、1回目の入試で不合格だった子も再チャレンジするため、1日の入試より志願者数が多いのです。

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★第2回入試の入学は4割
 第1回入試の合格者の85%以上が入学をする「歩留まりの良さ」で分かる通り、1日午前入試は第Ⅰ志望合格、「やったぜ早稲田」の男子受験生です。早稲田合格発表前に行われる、1日午後、2日午前に行われる他校の受験はしても、合格決定後は「打ち止め」。めでたく中学受験終了です。

 第2回での合格者には受験生それぞれのドラマがあります。たとえば21年度の合格者数は256人ですが、入学をしたのは104人。割合からすると約41%になります。1回目で合格を勝ち取れなかった早稲田熱望受験生がリベンジを果たした、こちらも「やったぜ早稲田」のケースもあれば、1日、2日の第1志望校に合格できず、抑えで受けた早稲田に進学することになった「がっかり早稲田」の生徒もいます。

 2回の入試に挑んで残念だった受験生からしてみれば「がっかり早稲田」という言葉は腹立たしいかもしれませんし、入学辞退をした150人以上の枠を譲ってくれ、という気分になりますが、この「残酷さ」が受験というものです。

★「やったぜ」「がっかり」の6年後
 早稲田中学・高校が同じ都内にある早大学院、早稲田実業学校と大きく違うのは「ほぼ全員早大進学」ではないことです。早稲田高校から早大に進学するのは卒業生の約半数。後の半数の多くは東大など国立大学や医学部に進みます。つまり進学校としての顔も併せ持っているのです。

 中学受験の際、「やったぜ早稲田」の合格組は必ずしも早稲田大学志望ではなく、「東大も狙えるし、早稲田という“保険”もある」という志望動機の子が多い傾向です。実際は他大学受験となると、早大の推薦権は失うことになるのですが、魅力的な選択肢であることには変わりありません。

 一方の「がっかり早稲田」の生徒は入学後、大学受験で捲土重来を期す子もいれば、学校の雰囲気にすっかりなじんで早大推薦入学に進路を決める子も多いといいます。「住めば都」といったところです。

★「先輩」の存在が中高一貫校
 男子校でも女子校でも中高一貫校の進学校は、「先輩」の存在が進路に大きく影響するといいます。部活動やさまざまな交流によって接した先輩を見て、自分の先行きを中1から漠然と考えるようです。入学時と考え方がガラリと変わる子もいれば、どこの大学に入りたいかよりも、「大学で何をするか」で進学先を決める理想的な展開になる子もいます。

 早稲田だけでなく、そういう「サンプル」を5年間身近で体感できるというのが中高一貫校の魅力。公立にはない環境を勉強とお金で手に入れるというのが中学受験です。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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