中学受験の第一歩塾選び(1)合格実績に目を奪われるな
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・早まる傾向の入塾時期「一体いつから始めれば…」
・「合格者実績」の数字の魔力
・第1志望合格は3割もいない
・難関校、上位校の合格者数は多いけど…
・合格実績抜群の塾に入っただけではどうにもならない理由
★早まる傾向の入塾時期「一体いつから始めれば…」
6年生は入試本番に向けて徐々に緊張感が高まってくる時期ですが、3歳年下の小学3年生で中学受験を考えている家庭では、スタート準備の時期といえます。
最近は一部の進学塾の一部の校舎で新4年生からだと満席で入塾できないとか、塾側が「中学受験は3年生から」という宣伝で、入塾時期が早まる傾向が顕著です。3年生、いやもっと低い年齢の時から入塾しているケースも目立ち「中学受験の勉強はいつから始めれば…」と戸惑う親御さんが多いと思います。
★「合格者実績」の数字の魔力
きょうだいがいて既に上の子が受験を終えていれば、親御さんそれぞれで経験から得た「財産」を踏まえて、下の子のためにその家庭独自の塾選びの基準があるでしょう。しかし、「初めての受験」ともなれば、分からないことだらけ。経験者に聞いても、参考にはなるが答えにはならないし、ネットを検索しても考え方は十人十色。塾の説明会、パンフレットを見ても、どこも素晴らしく映り、決めかねてしまいます。
そんな迷える親御さんの多くの親御さんが注目するのが、各進学塾の「合格実績」です。開成●名、桜蔭■名、麻布▲名、女子学院★名…など、目立つデザインで前年度の合格者数を示し、親御さんたちの目を引きます。この「数字の魔力」は恐ろしいもので、数が100名、200名と3ケタになろうものなら「ウチの子もこの塾に入れば、この学校に…」という思いが湧き上がってくるのです。
★第1志望合格は3割もいない
中学受験を考えている多くの親御さんは少なからず我が子に対して「期待」をしています。「塾で頑張ってくれればウチの子も」と、合格実績の数字と照らし合わせて「夢」を見ます。3年後、夢を叶える子どもたちもいます。確実にいます。しかし、中学受験で第1志望に合格できるのは、3割いません。27,28%程度の線です。
例えば大手進学塾で最難関校に合格できるのは上位5%強。ある学校に200人合格したとすれば、その倍以上の子が挑戦して不合格を突きつけられているとみられます。ある大手進学塾の講師は「第1志望合格も厳しいが、第3志望まで合格する子は半分いない。合格する子は全勝も珍しくないけど、実力相応の受験日程を組まないと連戦連敗になる」と話します。当初抱いた夢は、終わってみるとただの妄想だった、という恐れもあるのです。
★難関校、上位校の合格者数は多いけど…
難関校、上位校にしても合格者数は多いけれど、実際に進学した数は2、3割程度、もしかしたら1割そこそこという場合もあります。合格者の大半が御三家など最難関校の併願、すべり止めで受験し、合格はもらったものの進学しないからです。
前述した通り、受かる子は連戦連勝、厳しい子は1つ合格するのもやっと、という現状があります。同じ塾に通い、同じ教材を使っているのにどうして…、となりますが、そこには子どもの学力と塾の提供している学習レベルがマッチしているかどうか、というものもあります。
★合格実績抜群の塾に入っただけではどうにもならない理由
いくらサピックスが中学受験で断トツの難関校合格実績を誇っているからといって、塾内で成績が下位に低迷していたら、塾が提供する学習内容が「ミスマッチ」になることが多いでしょう。6年生になって最難関、難関向けの授業に対し、4,5年生の基礎もおぼつかない子どもが受講していたとしたら、なにも頭に入らない(頭に入れるのが無理)ですし、長時間分からないことだらけの話を聞かされて座っているのは苦痛以外の何物でもありません。
中学受験で合格実績のある、いわゆる「ブランド力」がある塾に入れれば、何とかなると思っている親御さんは本当に多いです。実際、何とかなっている子もいますが、親御さんの手厚いフォロー、個別や家庭教師の併用、先生に質問しやすい環境の構築など、多くが「それなりの努力」をして必死に塾の授業についていった子ばかりです。
合格実績は塾を選ぶ際の重要な指標の1つですが、あくまで参考程度に。それだけで飛びつくと後悔することもあります。(受験デザイナー・池ノ内潤)