中学受験 算数は「ワンポイント」「待ち」の姿勢で
◆受験の窓口 今日のメニュー
・親御さんの「昔取った杵柄」と中学受験
・我が子だからこそ「距離感」を大切にする
・「ワンポイント」アドバイスのみ 後は待つ
・「イミフ」の子どもを興奮状態にする
・子どもを潰す「何で分からないの!」
★親御さんの「昔取った杵柄」と中学受験
子どもが「分からない、教えて」と親御さんのもとへやってくるのは、多くが算数の問題です。「えーっ、お母さん分かんないよ。先生に聞いてきな」という親御さんもたくさんいるかもしれませんが、最近は自身も中学受験を経験している場合も珍しくなく、「どれどれ…。いいか、この問題はなぁ」と塾の先生も驚くくらい、鮮やかに解いて「どうだ、分かった?」というシーンが各家庭で見られます。
ホームティーチャーがいてうらやましい、という気もしますが、これも一概に良いとは言えません。親御さんの「昔取った杵柄」が裏目に出ることもあります。
★我が子だからこそ「距離感」を大切にする
算数で子どもが「分からない」と持ってきた場合、“杵柄”がある親御さんほど、冷静、客観的に子どもの状態を観察する必要があります。我が子ゆえに、かわいいがゆえに、つい手取り足取りの懇切丁寧な解説になりがちですが、これはNG。親御さんの解説なしでは、解答までの道筋が再現できないのでは、テストで、入試で得点できないからです。
我が子だからこそ、かわいいからこそ、子どもとの「距離感」を大切にしたいところです。あまり近すぎず、かといって突き放しもせず、どこで止まっているのかを見極めて、適切な「ワンポイントアドバイス」を投げてあげます。
★「ワンポイント」アドバイスのみ 後はひたすら待つ
子どもが「分からない」と言って持ってきた問題に目を通し、何を問われているかを把握した後、子どもに尋ねます。「どこまでなら分かる?」と。あるいはノートを見せてもらい、子どもがどのように考えているかの道筋を追います。
子どもがつまずいている問題点を整理し、解決につながる「ワンポイント」だけを親御さんは次に示してあげます。例えば多角形の面積を求める図形の問題なら、「図の中に線を引いて三角形をつくってごらん」とか、割り算の文章題なら「問題の書いていてある順番通りに図にしてごらん」など、解法の糸口になるようなアドバイスを1つだけします。それ以上はせず、ひたすら待ちます。短気を起こさず、ここが正念場。最終的には自分考えて答えを出さないと、前に進めないことを子どもに認識してもらわないと、中学受験は乗り切れません。
★「イミフ」の子どもを興奮状態にする
「どこが分からないか分からない」という状態で持ってくる子もいます。あるいはほとんど考えもせずに「分からん!」と丸投げする子もいます。「何でそんなことが分からないの!ちゃんと考えなさい!」――。親御さんならキレるのも無理はありません。しかし、我が子の受験勉強の基本スタンスは冷静さと客観性です。こらえて最善の策を打ちます。
なぜその問題に子どもが「イミフ」(意味不明)と言って考えようとしないのかを洗い出します。恐らく何を聞かれているかが読み取れない、算数以前に国語力の問題だったりします。割り算でいうと「割る数」と「割られる数」が読み取れていないなどというのが典型例の1つでしょうか。こういう問題を解く以前の「分からない」は、教えても構いませんが、やる以上「ふーん、そうなんだ」と興味なさそうな中途半端な状態で終わらせず、「分かった!そういうことか!」と完全に理解できて嬉しい、という興奮状態まで徹底的に教えます。自力で「分かった」の1問は教えられた10問以上に価値があるのです。
算数の解法以前の入り口の段階だけは、どんな問題でも分かるように、環境整備だけはきちんとしてあげましょう。「イミフ」と言っている子に「考えろ」は拷問です。
★子どもを潰す「何でそんなことが分からないの!」
何度も言いますが「なんでこんなことが…」となりそうになっても、親子であることを忘れ「顧客」だと思って丁寧に対応してください。子どもは「何でそんなことが分からないの!」のひと言で潰れます。
やる気を失くすというのもありますが、その言葉を投げつけられることを恐れ、分からないところがあっても、質問したいと思っていても、そのままにしてしまいます。最悪です。「分からないことは悪いことじゃない」。伴走する親御さんは、その言葉を常に口にして伝えてほしいと思います。(受験デザイナー・池ノ内潤)