中学受験 「全落ち」を招くサンクコスト効果

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・270万円が「相場」の課金ゲーム
・第1志望合格は4人に1人の時代
・当事者は冷静になれない
・中学受験にコスパ、タイパはNG
270万円が「相場」の課金ゲーム
「中学受験は課金ゲーム」。
コミック「二月の勝者―絶対合格の教室―」ですっかり定着した受験の「名言」です。
通っている塾によって違いますが、6年生の1年間だけで通塾に必要な額はざっと140万円。
4、5年生の分を合わせるとその約2倍弱、270万円くらいが「相場」です。
これに個別や家庭教師を付けると、それこそかかるお金は「青天井」になります。
「子どもの将来への投資」「子どもの夢やしたいことをかなえるため」などと考えて、多くの親御さんがこれくらいの「課金」を普通にしているのが中学受験です。
「こんなにかかるとは思わなかった」という感想を受験を終えた親御さんからの言葉をよく耳にします。
中学受験は学年が上がるたびに、日を追うごとに「値が張る」ということを頭に入れておくことが肝要です。
第1志望合格は4人に1人の時代
中学受験は課金したからといって「確実なリターン」が保証されない、リアル「ゲーム」のようなものです。
「第1志望の合格率は3割」といわれていたのはひと昔前。
最近は各校とも実質倍率が上がっており、25%程度というのが実状です。
受験本番前になって「やっぱり無理」と掲げてきた第一志望の旗を降ろし、別の学校を「第1志望」とする子も含めれば、もっといるかもしれません。
第2、第3志望合格なら、課金ゲームもまだ報われます。
しかし、中学受験での「全落ち」は親御さんのダメージもさることながら、子どもにとって「傷」しか残りません。
傷はなかなか癒えるものではなく、多くの場合長く引きずります。
高校、大学受験とことあるごとにフラッシュバックし、「まだダメだったら…」と入試直前に前に進めなくなる子も多数散在します。
「全落ち」の背景にあるものは「子どもの実力不足」はさることながら、親御さんが「理想の中学受験」を追いかけた結果によって引き起こされることも少なくありません。
当事者は冷静になれない
「この偏差値以下の学校なら意味がない」「どうしても御三家」など、子どもの「身の丈」以上の高い偏差値の学校をばかり受験する。
知名度の高い難関校、人気校に「第1志望だから」と見込み薄にもかかわらず何度もトライする
勝ち目がないと頭の中ではわかっていても「納得のいく中学受験」の目的完遂のため、「こんなに時間とお金をかけたのに、今さら引くわけにはいかない」という思いが強くなり「悲劇」へとつながります。
投資に見合ったものを獲得するまでやめるにやめられず、さらに深みにはまる、心理学でいう「サンクコスト効果」です。
「そんな人いるの?」。受験に関係のない立場の人から見れば信じられないかもしれません。
が、「当事者になると冷静ではなくなる」のが中学受験です。
たとえは良くないのですが、ギャンブルで負けがこむほど「次こそは」と引けなくなり、沼にハマっていくのと同じです。
親御さんも子どもも「これだけ頑張っているのだから必ず報われる」と思いたい気持ちは痛いほどよく分かります。
しかし、中学受験で「神風」は吹きません。
同じ学校を複数回受験の末、合格する子はボーダーラインにはいる子です。
箸にも棒にも掛からぬ子は何度やってもダメです。

中学受験にコスパ、タイパはNG
親御さんが善後策を講じて、第1志望がダメでもここなら、という学校を組み込むなら「全落ち」は避けられます。
しかし、「ここなら」のレベルが無謀な第1志望と難易度的にあまり変わりない選択をするケースが多々見られます。
「押さえ」にになっていないのです。
これも冷静に考えれば「合格の可能性が高い」学校を選ぶのですが、サンクコスト効果にとりつかれてしまうと「塾にあれだけつぎ込んでこのレベルの学校に受かってもらわないと困る」という「大人の都合」の考えになり、無茶な受験ラインナップになります。
中学受験に「コスパ」とか「タイパ」の論理は当てはまりません。
大半がコスパもタイパも「最悪」なのが中学受験です。
それが納得いかないのなら、参戦しない方が身のためです。

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