【不合格体験記】私は分からないから…大手塾へ丸投げ家庭の末路

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前夜にいきなり母は言った「明日はテストだから」
新小5で入塾 母は思った「ここに預ければ」
・成績伸びずも最後は「先生が何とかしてくれる」?
・気づいた時には大勢は決していた
想像以上に多い「丸投げ」親
勉強は塾丸投げでも「観察」は必須

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★前夜にいきなり母は言った「明日はテストだから」
 ユウトくんは名前も聞いたこともなければ、文化祭にも一度も行ったことのない中学校に合格し、春から新しい生活を始めることになりました。「別に行きたくもないけれど、お母さんが行けっていうから。遠いし、知らない人ばかりだし、本当はイヤ。小学校の友達が行く公立中学校に行きたいんだけどなぁ」。ユウトくんは力なく笑うしかありませんでした。

 受験成績は1勝6敗。最後の方は夜になってお母さんから「明日はテストだから」とだけ言われて、どこに行くかもわからずに、朝になると母親に連れられ電車に乗ってどこかの中学校へ。試験会場の入り口で「これを見ながら家に帰りなさい」とメモと1000円札を1、2枚渡されました。ユウトくんと別れると、お母さんは仕事場へと急いで行きました。

 これが母一人子一人のユウトくんお母さんの中学受験当日の“風景”でした。

知らない中学校へ…気が進まない

★新小5で入塾 母は思った「ここに預ければ」
 ユウトくんは小学校4年の2月、進学塾でいうところの新5年生の授業が開講されるタイミングでの入塾です。お母さんは女手一つでユウトくんを育て、土日も仕事の日もあり、休みは不定期。収入は同年代の男性と同程度あり、生活は苦しくありませんが、ユウトくんの勉強に付き合ってあげるほどの時間はありませんでした。

 お母さんはユウトくんに私立中学に進学して、将来の可能性を広げてほしいと考えていました。小学校のクラスでは勉強はできる方のユウトくんですが、入塾試験はなんとかクリア。周囲は進学塾へ通って私立中高一貫校を目指す子も多く、お母さんは塾の素晴らしい進学実績から「ここに預ければ」という気になり、入塾することになりました。

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「ここに預ければ」という塾への期待

★成績伸びずも最後は「先生が何とかしてくれる」?
 塾は週3日、6年生になると通塾日がさらに増えました。友達もたくさんでき「先生も面白くて、塾は楽しい」とユウトくん。いつも長い時間塾で“頑張っている”ようで、お母さんとしても安心していました。ただ、時折目にする各種の試験結果は、あまり芳しいものではなく、それが心配の種でしたが、「最後は先生たちがしっかり仕上げてくれる」と信じていました。

 しかし、成績は一進一退。偏差値は50に届きません。「いつかは…」と思っているうちに、6年生の夏休みが終わり、秋が過ぎて、12月の声を聞くころに、塾での志望校を決める面談が行われました。

気がつけぱ6年生の12月に

★気づいた時には大勢は決していた
 それまで保護者会と名の付く集まりは参加したことがなく、「塾が楽しい」というユウトくんの様子を見て何かを相談することもありませんでした。受験する学校も先生が提案してくれてそこを受けると…。

 多くの親御さんは分かると思いますが、「塾が楽しい」としても、勉強ができるようになっているわけではないし、志望校は各家庭で決めるもので先生がお勧めプランを用意してくれるわけではありません。

 初めて「中学受験」何たるかを知ったお母さんですが、既に大勢は決しています。偏差値に合うところを「みつくろつて」受験し、落ちれば明日でも明後日でも試験を受けさせてくれる学校にネットでエントリーしてという、プランも戦略も全くない「出たとこ勝負」の受験を繰り返し、合格した学校は子どももお母さんも初めて聞くような中学校でした。

気づいた時にはもう遅かった

★想像以上に多い「丸投げ」親
 信じられないかもしれませんが、塾に「丸投げ」の親御さんは皆さんが思っている以上に多いです。「実績のいい塾に入れておけば大丈夫」「塾で勉強していれば、先生が合格へと導いてくれる」「そのために高いお金を払っているんだから」――。概ね理屈はそういうところです。

 が、実績のいい塾に入れようと、塾に休まず行こうと、大金を払おうと、それだけでは志望校や親御さん意中の学校に届かないことがほとんどでしょう。くどくど言わなくても分かると思いますが、塾での授業とともに、家庭学習や親御さんのアシストのもとにさまざまな角度から中学受験というものを勉強、研究していかなければ、なかなか思うような結果は出ません。

塾への「丸投げ」は危険

★勉強は塾丸投げでも「観察」は必須
 シングルの家庭で、勉強をみるところまで手が回らない、というのなら仕方がありません。その点は塾に「丸投げ」でも構いませんが、せめて子どもの「学習観察」だけは常に忘れないでください。今受験勉強の進捗状況はどうなのか、遅れをとっている科目、単元はないかなど、問題の芽は小さいうちに摘んでおきます。

 そして塾、先生との連携は必須です。塾は何も言ってこない、相談してこない生徒にはたとえ問題があったとしても、向こうからアプローチしてくることはほとんどありません。逆にアプローチしてくる家庭のことは気にかけてくれます。子どもへの伴走が上手な親御さんとその家庭は、受験が成功する可能性がかなり大きいといえます。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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