「二月の勝者」にみる偏差値がUPするきっかけ

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勉強の重い車輪に必要な潤滑油
・なぜ「半分」でいいのか?
・ 苦手克服より「できることから」
・「半分作戦」はきっかけ
親の作戦立案能力がものを言う

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勉強の重い車輪に必要な潤滑油

 11月6日放送の日本テレビ系ドラマ「二月の勝者―絶対合格の教室」の第4話は、中学受験の関心事で上位にランクされる「偏差値の上げ方」のヒントが随所に散りばめられていました。特に下位に低迷している子どもに「有効」な手段として黒木先生が実行したのは、算数の模擬試験(正確には模試の過去問)の半分を捨てて、同じ時間設定で上半分を解くという「作戦」です。

 結果から言えば、点数、偏差とも概ね上昇。偏差値は5ポイントも上がった生徒がいました。黒木先生曰く、受験生にとって何よりのご褒美は「点数がとれた、偏差値が上がったという事実」。まさにその通りで、その事実こそが「勉強をする」という重い車輪が回転するのに必要な潤滑油になります。

なぜ「半分」でいいのか?

 黒木先生は下位クラスの子が、なぜ模試で点数が取れず、偏差値が伸びないのか、どうすれば伸びるのかを次のように説明しました。「自分のできる問題を見極めようとするだけで、時間だけが経ち、彼らには焦りのもとになる。焦るからケアレスミスが起こる。それなら最初から半分しかやらなくていいと、バッサリと取り除いてやって、同時に焦りも取り除いてやった。その結果、ミスが減った」

 親御さんの中にはテストは「できる問題からやりなさい」と子どもに指示します。しかし、問題冊子の中からできる問題を短い時間で見極めて、やる順番をある程度組んだうえで取り掛かる、というのは高度な技術です。試験開始直後、これができる受験生は上位10%くらいの子からでしょう。50台後半の子でも問題を頭から解き進め、少しでも早く解かなきゃという焦りからミスを繰り返します。

 模試のタイプにもよりますが、算数は計算問題や一行問題など、取り組みやすい問題から並べられて徐々に難度の高いものへと進みます。偏差値が高くない子でも「手が出る」問題です。通常の倍の時間をかけて「手が出る」問題をじっくり正確に解いて正解する→得点、偏差値ともにアップすると、黒木先生が指摘した「受験生にとって何よりのご褒美」を手にすることができます。

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苦手克服より「できることから」

 受験勉強がゲーム化すると得点も偏差値も伸びます。ゲーム化するまでの道のりが長くて平坦ではないので多くの受験生が気持ちが折れて進めなくなるのですが、アプローチの仕方を変えるとゲームに積極参戦できるようになります。「苦手、できないの克服」より先に「今できることを極める」のです。

 算数なら模試の冒頭に出てくるような、ミスをしなければ得点できるものを完璧にします。国語なら漢字や語句などの知識問題で満点をとり、読解の選択肢問題を時間をかけて吟味、理社は一問一答式のものを優先してこれを漢字で正確に解答する、という具合です。現時点で「難しい」と思う問題は追わず、できることに時間と注意深さを集中させ、ミスをなくして、現状で可能最大限の得点をとります。

 それでも偏差値はせいぜい50前後です。しかし、40前後の生徒が「もう少しで50突破」「夢の50超え」となれば、モチベーションはアップ。前よりも中学受験というゲームに参戦する気になります。これが黒木の言う「自信と得点欲を実感する」ということです。数値が上がれば子どもは自分からやる気になります。ドラマの中でいつも宿題の答えを解答冊子から写すだけだった子が、自力で宿題をやり出すようになったのは、点数が取れたという「自信」ともっと点を取りたい、偏差値を上げたいという「欲」が出てきたのです。この「自信」と「欲」こそ受験勉強の潤滑油です。

「半分作戦」はきっかけ

 ただ、これで成績が入試本番まで保証されたわけではありません。「半分作戦」が有効なのは「初期段階」だけです。本番入試ではそう簡単にいきません。中堅校、一般校では簡単から難度の高い問題へという流れで構成されていますが、人気のある難関校、上位校の問題構成は学校オリジナル。超が付くほど面倒な計算問題が一番最初にあったり、最後の大問が難しそうに見えて誘導通り進めばラクに答えが出たりと、学校ごとの考え方が反映されています。

 「(入試問題がどれも)同じ配点ではないかもしれないし、最初が一番簡単で、最後が一番簡単とも限らない」と黒木先生も解説していました。いずれはさまざまな問題、単元に正面からぶち当たらなければ、偏差値55以上のキープ、60突破というステップは踏むことができません。「半分作戦」はきっかけであって、それをてこに子どもたちは進化していかなければ、時間が経つにつれてほかの子に抜かされます。

親の作戦立案能力がものを言う

 しかし、「きっかけ」がなければ成績アップへの潤滑油がないまま車輪を回さなければならず、それはあまりにも厳しいです。黒木先生のような作戦を考えてくれる塾なら下位に低迷している子でも浮上の目はありますが、大手進学塾では既定のカリキュラムの消化が大前提。個々の成績アップ、特に成績下位の子の作戦は親御さんが「直談判」しないとなかなか考えてくれません。

 「半分作戦」は完成形を見るまでには時間がかかります。自力である程度までは進めても、いくつかの壁もぶち破る必要があるからです。壁を壊すための有効なアシストができるためには、塾が頼れないのなら、親御さんが壁を壊す具体的な「作戦」を立案しなければなりません。個別や家庭教師の先生がその点を理解して、引っ張ってくれると安心ですが、経済的問題など余力がない場合は親御さん自身の「出番」となります。

 授業料を払って、塾に通わせているだけで成績は上がりません。親御さんの洞察力、作戦立案能力は子どもの中学受験の結果を左右します。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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