コロナと中学入試問題の地歴・公民

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政治家の名前と顔は一致しますか?
コロナで注目「県境」
やっぱり出た「疫病史」
人気だった「北里柴三郎」
公文書問題 地味だけど再燃すれば…

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政治家の名前と顔は一致しますか?
 コロナとともに21年の大きなニュースは久しぶりの首相の交代でした。最難関校・開成では菅義偉新首相と安倍晋三前首相の両方を漢字で答えさせる、極めてオーソドックスな出題に加え、バイデン米新大統領やドイツのメルケル首相など、コロナ禍でクローズアップされた世界の指導者も答えさせていました。開成に加え、暁星では安倍氏が首相在任期間で大叔父にあたる佐藤栄作元首相を超えたという問題も出題していました。

 連日のコロナ報道でいつも以上に注目されたのが都道府県知事。早稲田は東京と周辺3県の知事ではない人物を写真から選択させていました。4人の中に大阪府の吉村洋文知事を混ぜていました。テレビでよく見る顔だけど、果たしてどこの知事さんか知ってる?という問いかけでした。

歴代首相で覚えたいのは約20人 顔と名前が一致するように

★コロナで注目「県境」
 地理分野の問題も実はコロナ絡みが目立ちました。コロナによって「移動の自由」が制限されたことから、地理の先生が出題で注目したのが「県境」でした。

◆「新幹線で県境を通過した際に、県境がトンネルである例として、適切でないものを選びなさい。① 山口県と福岡県② 滋賀県と京都府③ 群馬県と長野県④ 静岡県と愛知県」(立教新座)→正解は④

◆「他府県と陸続きではない北海道と沖縄県を除く45都府県のうち、山地を都府県境とする部分が存在しないものが1つあります。その都府県名および、おもに何を都府県境としているか(固有名詞)を答えなさい」(渋谷教育学園幕張)→正解は千葉県 県境は利根川や江戸川

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◆「2020年12月1日、東京都町田市と神奈川県相模原市の間で土地が交換され、両市および東京都と神奈川県の境界が変更されました。その目的は、以前と同じように境川を都と県の境界とすることです。次の地図(省略)は、今回境界線が変更された一部について、変更前のようすを示したものですが、境川と都と県の境界が一致しなくなった理由として考えられることを説明しなさい」(吉祥女子中)→正解は「まがりくねっていた川の流路をまっすぐにしたため」。

 この種の問題は過去の中学入試であまりお目にかからなかった問題ですが、コロナ禍から出た新種として、今後出題が多くなる気配がします。

しまなみ海道の広島と愛媛の県境表示

やっぱり出た「疫病史」
 中学入試の社会科で、約4割の出題のウェイトを占めるのが歴史です。古代から戦後昭和史、最近は平成の事柄まで満遍なく出題されるオーソドックスな形式も多いのですが、21年度入試で目立ったのが「疫病の歴史」を題材にした出題でした。

 今回のコロナと比較されることが多い、100年前のインフルエンザの世界的流行が一番人気でこの時のインフルエンザが「スペイン風邪」と呼ばれていたという知識問題(攻玉社など)から、当時のポスターの写真が示され、ポスターに記されていた文字「マスク」を答えさせる慶應義塾中等部のような、面白い問題もありました。

慶應中等部で出題されたポスターの原版下段の「マスク」(右から読む)を答えさせた

人気だった「北里柴三郎」
 スペイン風邪とともに注目されたのが、かつて罹患すれば命取りなるといわれた「天然痘」に関する問題です。鎌倉学園は奈良時代に天然痘が流行したことをてこにして、大仏や聖武天皇に関する出題を展開しました。この天然痘の予防接種を広めようとした人物として、江戸時代後期に活躍した、オランダ医学を学んだ緒方洪庵を出題したのが明大中野でした。

 そして21年度入試で急に出題が増えたのが、明治から大正にかけて活躍し「日本細菌学の父」と呼ばれた北里柴三郎。人物名を漢字で答える問題が各校で出題され、21年度は聖武天皇、豊臣秀吉ら「定番」の人物と肩を並べるくらいでした。早稲田ではさらに一歩踏み込んで、彼が発見した細菌(ペスト菌)を選ばせる、やや難度の高い問題も出ました。

 2024年に登場予定の新札の肖像は1000円札が北里柴三郎です。5000円札の津田梅子、NHK大河ドラマにも描かれる1万円札の渋沢栄一と並んでしばらく「頻出問題」になるでしょう。

しばらくは「頻出」するとみられる北里柴三郎

★公文書問題 地味だけど再燃すれば…
 歴史と時事問題を絡めたものとしては、昨今問題になっている公文書の保管問題やフェイクニュースも地味ではありましたが出題されています。

 太平洋戦争の終戦直後に政府や役所が公文書を焼却してしまったエピソードを引き合いに、どうしてそうしたのかの理由を、誤っているものを選ばせるという形で明大明治は出題。日本史でのフェイクニュース、いわゆる「デマ」といわれるものの正誤を作問した雙葉は、大正時代の関東大震災の時の状況を受験生が知っているかどうかを解答のカギにしていました。

 今後出題されるかどうかは未知数ですが、公文書破棄の新たな問題が発覚したり、フェイクニュースがさらに社会問題化すれば一気に頻出問題になる可能性は十分あります。(受験デザイナー・池ノ内潤)

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