今後の主役?オンライン家庭教師のいま

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中学受験の窓口 今回のメニュー
Zoomを使った授業は目新しく映った
感染回避と時間節約
“ピンキリ”だが素晴らしい出会いもある
意外とカスタマイズ自由なオンライン授業
Zoomは生徒との接し方の「強弱」が難しい
教えるのにもどかしを感じる
勉強以外のことはストレスフリーにしたいが…
親御さんの的確なサポートと判断力がカギ

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Zoomを使った授業は目新しく映った
 新型コロナウイルスの感染拡大で、教育の世界がいち早く取り入れたのがオンライン授業です。もっとも“いち早く”導入したのは、一部の大手進学塾や私立中高一貫校が多く、公立勢は後手に回った感が否めません。

 映像授業は浸透して久しいですが、パソコンやスマホを使って、セミナーやミーティングをオンラインで行うために開発されたアプリである「Zoom(ズーム)」を使っての双方向授業が目新しく映ったようです。それがマスコミなどを通じて流れたことから「一歩先を行っている」と評判になりました。

 そうした背景もあり、急ごしらえで夏前から本格的にZoomを使った家庭教師“派遣”をウリにする業者もかなり出てきました。今後の成長分野ではありますが、まだまだ改善の余地が多分にあるオンライン家庭教師。現状でメリットとデメリットを分析してみました。

Zoomによる授業は新時代の幕開けか

感染回避と時間節約
 Zoom家庭教師のメリットは、主に4点あげられます。

 まず、コロナ感染の危険性がある中で、それが回避できるということです。理想は対面授業、横にいて手取り足取り教えてくれることですが、リスクを冒すことに敏感な親御さんにとっては、まさに“渡りに船”というシステムです。

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 次に時間の節約。通塾するには、それなりの準備をしなくてはなりません。電車やバスを使うなら、間に合うように家を出なければなりません。Zoom家庭教師ならば、塾へ通うより手間が省け、忘れ物をしても「先生、ちょっと待って」ですぐに取りに行けます。

 行き帰りの時間の分、素早く次の行動に移すことができ、Zoomを切って、勉強した“余熱”のまま復習に突入することも可能です。年間で積み重ねたら、かなりの時間の節約につながるはずです。

中学受験は時間との勝負

家庭教師は“ピンキリ”だが素晴らしい出会いもある
 3点目は「出会い」です。Zoomならば、住んでいる地域に限定されず、まず会うことがなかった所にいる先生と出会い、その先生が素晴らしければ、成績、偏差値アップで「未来への扉」が開くこともあります

 もちろんその逆もあります。ひと口に家庭教師と言っても教えるスキルは“ピンキリ”。市場は「玉石混交」です。このコロナ禍で、中学校や高校の非常勤講師の立場の人がZoom家庭教師の世界に参入しているようです。“あたり”の先生も結構いますが、微妙な先生も多いのは事実です。

家庭教師は玉石混交

意外とカスタマイズ自由なオンライン授業
 最後に個々にカスタマイズできる授業ができることが挙げられます。

 受験生の中には「塾が苦手」という子も少なからずいます。元気な子に押され気味の集団授業の雰囲気が嫌いという男子、人間関係に悩む女子など、理由はさまざまです。

 しかし、オンラインだと映像授業で各単元を一通り学び、Zoom家庭教師で質問や苦手を克服していくというやり方ができます。元々、家庭教師や個別を選択する生徒は、集団授業で習ったことを先生へ直に聞きに行くことが苦手な子も多かったので、実は以前からニーズがあったやり方だったのが、コロナによって図らずも表に出てきたと言ってもいいかもしれません。

個々に合わせてできるのが利点

Zoomは生徒との接し方の「強弱」が難しい
 次にデメリットです。3点あります

 まずは生徒との距離の取り方がとても難しい、ということが挙げられます。“できる”先生は生徒に接する際、「強弱のつけ方」が上手です。生徒が問題を解いている時、手順や横顔の表情、筆の進み具合など、さまざまな情報を読み取り指導につなげます。声がけせずに少し距離を置いて観察します。

 しかし、Zoomは基本的にカメラ1カ所なので、多角的に見ることができません。ノートに書いてあるものからもある程度判断はできますが、より細やかな指導をしようと思えば、生徒の細かいところも見たいところ。

生徒との接し方の強弱が難しい

★教えるのにもどかしを感じる
 次にZoomは授業をするのに不便である、ということです。zoomにも教室の黒板のように、ホワイトボード機能があって、文字を書いたり図を描いたりして、先生が生徒に説明することは可能です。

 しかし、まだ使いづらさは残っており、きれいに描きづらく、あらかじめ描いていた図などの上に書き加えて拡大しても、後から描いた線などは一緒に拡大されないのです。教える方としてはとてももどかしいです。

どうしても不便さは残る…

勉強以外のことはストレスフリーにしたいが…
 最後に操作がまだ簡単ではないこと、です。Zoomは大人用に開発されたもので、小学生が自由自在に操れる思想は想定外だったでしょう。タブレットを駆使してノートにやった宿題を写真撮影して先生に見てもらうとか、次に質問したい問題を、これも写真にして先生にあらかじめ送信しておくとか、準備に時間がかかります。

 なので親がかりになる場合も多いです。低学年の子は、画面に映らないところに親御さんがいて何かの時はアシスタントとしてパソコンやタブレットを操作したり、先生宛の送信物は母親が代行していたりもします。

 授業を受ける前に、勉強する前に、子どもにZoomのレクチャーをしっかりしなければならない、と痛感している先生は多いことでしょう。勉強以外のことで子どもたちにストレスを感じてほしくないのですが、現状では改善の余地が多々あります

子どもに操作で負荷をかけたくないが…

親御さんの的確なサポートと判断力がカギ
 コロナ禍が今後どのような展開になるかは全く分かりませんが、オンライン授業が中学受験で1つの勉強の仕方として存在感を示したことは間違いありません。

 一方で従来の対面型の良さも今回再認識された気がします。いずれを選択、あるいはミックスするとしても大切なのは、親御さんの的確なサポートと判断力。我が子は今の時点でオンラインに向いているのかどうか、対面の方が良いのかも、などしっかり子どもを観察してください。中学受験は、勉強の時間と量をいくら積んでも身になっていなければ、報われないただの苦行になってしまうからです。(受験デザイナー 池ノ内潤)

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