「ドラゴン桜」のように奇跡は起きるのか

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中学受験の窓口 今日のメニュー 
・「ドラゴン桜」に刺激された生徒は多い 
・まさに「リアル東大専科」 
・だから6年生でも偏差値30台 
・「ドラゴン桜」への第一歩でやるべきこと 
・偏差値30台が勉強を続け目覚めると… 

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★「ドラゴン桜」に刺激された生徒は多い 
4月からスタートしたTBS系ドラマ「ドラゴン桜」が終了しました。16年ぶりの再登場は、前作と大きく味付けを変えながらも、偏差値30そこそこの高校からわずか1年の勉強で東大合格を果たすという基本線はそのままにストーリーは進み、最後はかつての龍山高校「特進クラス」の懐かしい顔も勢ぞろい。痛快大逆転で幕を閉じました。 

 テレビドラマになる前、コミックの段階からこの作品に刺激を受け「東大に挑戦し合格した」「バカ高校から難関大学にうかった」など、多くの受験生を感化した作品として知られています。同時に「あの偏差値で東大には合格しない」という声もあり、あくまでエンタテインメントの世界、と突き放す人は少なくありません。 

 中学受験において「ドラゴン桜」で起こした奇跡は実現可能なのでしょうか。同じ1年という条件、つまり6年生(進学塾の新学期が始まる5年生2月から)で考えてみます。 

★まさに「リアル東大専科」 
 6年生のスタート時点で、偏差値30台というレベルは2つのケースが考えられます。1つは遅まきながら6年生で中学受験参戦という場合。レアケースかもしれませんが、昨年からのコロナ禍によって、公立中学校の一連の学習への対応に不安を感じた親御さんが、急きょという流れも見られます。 

 小学校での学習レベルでそれ以上のことをしていなければ、最初はこのレベルの成績でも全く不思議ではありません。そこで話はおしまいというわけではなく、かなりハードスケジュールになりますが(1日平均平日でも5時間くらい勉強すれば)、入試までに形にはなります。ガリガリやって、塾の先生を大いに利用し、桜木先生のような(あそこまで強烈なキャラじゃなくても)“当たり”の家庭教師のサポートなどがあれば、3カ月から半年で偏差値50台から60に手が届くぐらいまで到達できることもあります。もともとの「素材」が良ければ、御三家まで合格する子もいます。まさに「リアル東大専科」です。 

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 ただ、急造であることは否めず、土台は不安定です。そこは時間をかけて実力を養成してきた生徒とは差があります。ですが、受験は「勢い」も大切です。走り出したら、四の五の言わず、駆け抜けます。 

★だから6年生でも偏差値30台 
 もう1つは4,5年生、あるいはそれより前から中学受験の勉強を始めていたとして、このレベルの偏差値の場合です。このケースは残り1年「やれることを少しでも積み重ねて身の丈に合った受験」という方向性で進むのが効果的です。 

 勉強する時間がある程度ありながら成績が上がらないということは、子どものモチベーション自体が上がっておらず、おそらく勉強する意味もピンとこないまま「やらされている」という感覚から抜けないままここまで来たと思います。興味がないので深く考えもせず、教えてもらって分かった!となっても、その感覚をこれからも維持しようとすることに関心がなく、終われば忘れてしまうの繰り返しをしてきたのだと推測できます。 

「ドラゴン桜」への第一歩でやるべきこと 
 この状態だと、今後余程の「ショック」、何かのきっかけで勉強に対する気持ちが変わった、先生が代わったことでモヤモヤしていたものが吹っ切れた、とかの劇的な環境の変化がない限り「偏差値20アップ」とか「難関校逆転合格」とかは、それこそマンガの世界です。しかし、得意分野を徹底的に伸ばす、計算、一行問題だけでも完璧にする、理社の知識系だけは負けない、など「絞った勉強」をすることで偏差値10くらいはアップします。模擬試験で言えば、点数にして60点から70点アップです。 

 「できないところがありすぎて、何から手をつけていいのか分からない」という時は、取り組みやすいものからやることで道が少しずつ開けてきます。全体を見渡して、あれもこれもとなるから、結局何もきちんとマスターしたものがないままで時が好きでしまうのです。この夏からでも良いので「絞った勉強」で突破口をこじ開けてください。「ドラゴン桜」並みの逆転合格の一歩はここからです。 

★偏差値30台が勉強を続け目覚めると… 
 夏場に来て偏差値30台だと、生徒も親御さんもあきらめムードが漂います。ただ惰性で塾通いをけ、なんとなく受験して、受かった中学になんとなく進学するパターンが残念ながら毎年数多く見られます。 

 けれど中学受験なんて、ただの「途中経過」です。人生という長いスパンで考えれば、まだまだスタートしたばかり。野球で言えば1回の裏表が終わった程度、マラソンで言えば競技場のトラックから外のコースに出たぐらいの地点です。この後、どうにでもなります。 

 東大専科の練習生、丸刈り頭の岩井、小橋の2人が勉強に目覚め、短期間で共通テストの成績を飛躍的に伸ばしたのはいい例です。勉強をすることに目覚め、壁にぶち当たりながらも勉強することの意味をつかんだ子は、中学、高校で必ず伸びます。中学受験で言えば、入学した中学校のレベルにかかわらず、スタートダッシュができれば、勉強が軌道に乗ります。そうなると6年後が大いに楽しみになってきます。 

 「やれることを少しでも積み重ねる」。偏差値30台だからこそ、この姿勢が未来を明るくします。入った中学がどこであれ、6年後積み重ねたことが開花するのです。(受験デザイナー・池ノ内潤) 

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